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本書は、DNA分析を駆使する自然人類学の研究により、江戸時代の切支丹屋敷跡から出土した人骨が、18世紀に新井白石と対話したことで日本史の教科書にも名を刻むイタリア人宣教師ジョヴァンニ・シドッチのものであることを解明したことのドキュメンタリー的な記録である。
遺跡から出土した人骨が誰のものかを科学の力で特定するという内容で、読んでいてとてもワクワクした。(詳しく説明されてはいたのだが)DNA分析の原理などについて十分に理解できたとは言い難いけれども、自然人類学をはじめとする科学研究の面白さは、十分に感じることができた。
また、発掘調査の主体であった文京区に対する様々な不満も赤裸々に記されていて、行政における発掘調査や、その中での他機関との連携という点においても、教訓的な内容であった。
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岩波書店ブックレット『図書』2017年2月号掲載、
人類学者・篠田謙一による「宣教師のDNA」を
興味深く読み、
その詳細版としての本が出たので購入、読了。
2014年、東京都文京区小日向一丁目で
マンション建設前の埋蔵文化財発掘調査が行われ、
江戸時代の武家屋敷の遺構・遺物が発見されたが、
それはキリスト教宣教師を棄教させた後、
余生を送らせるための切支丹屋敷だった。
危険を冒して来日する宣教師は一端途絶えたが、
18世紀初頭にマニラ経由で入国したイタリア人
ジョヴァンニ・バッティスタ・シドッチという人物がおり、
彼は長崎から江戸へ護送され、
新井白石の尋問を受けた後、切支丹屋敷に幽閉された。
土の中から発見された歯を拾い、DNAを抽出し、
ゲノム解析を経て、
それが1714年に数え年47歳で衰弱死したとされる
シドッチその人であると断定するに至ったプロセスを詳述。
最先端科学を用いた古人骨の鑑定という
スリリングな話題だが、
研究者に対する行政や一般市民の理解・支援不足を嘆く声が
大きく聞こえてくる気がした。
金儲けに直結しない分野の研究にも
きちんと力を貸さないと、
この国の文化は先細っていくばかりだと思うのだが……。
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江戸の切支丹屋敷から発見された骨をミトコンドリアDNA分析からヨーロッパ人、核DNA分析から現代イタリア・トスカーナ地方の集団に入ることが確認された。文献に残るシドッチであろう。国立科学博物館での行政とのやりとり、分析費用、関係機関の協力など、古人骨DNA解析の実態の裏舞台を示したもの。
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考古学好きの人にはお勧めです.加えて科学者としての研究に対する取り組み方を読み取ることができて大いに感銘を受けました.最新のDNA解析で埋もれた骨が誰だったかを突き止める,という推理小説的楽しさもあります