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子どもがいっぱしの一人の人間になっていく過程に驚いたり、近所の事件に後ろめたさを感じながらも興味津々だったり、他人事とは思えない夫婦の生活を描く表題作と、塾と矯正歯科を往復する日々を過ごす高校生の話『舟』。
どちらも取り止めのない思考の流れがリアルで、面白かった。
きっと普段の思考を全部文章に書き表したら、こんな感じが、もっと支離滅裂な(始点と終点で全然関係ないことになりそうな)感じになるんだろうな、と思う。
長嶋さんの作品は『ジャージの二人』のあの淡々とした、何も起きない日の描写が好きなのだが、本作もあの時と変わらない素朴さが良かった。
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大きな出来事が起きるわけではないけれどなんてことない、でも味わいのある人々の生活を書くのが本当に上手い。
くだらないことも重要なことも同じ頭で考えていると思うと人間って愛おしいなとしみじみ思い、クスッと笑いながらもなぜか同時に少し泣きそうにもなる。
そんな物語。
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レイバン風サングラス男性が放った悪意、自分もギョッとすることが多く印象的だった。
「われわれ善良な市民からしたらー」という主語の雑さ。
しかしそういう人が社会を秩序立てている一面もあるという。
男性が投げつけた電子タバコのカートリッジ(?)を回収しに行く、そのささやかな行動に主人公の意思の表明を見た。
大人のミロ、おしりたんていなど小説では長嶋作品でしか見かけなさそうな固有名詞が今回も楽しい。
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読み始めは、なんだかいつもの著者とはテイストが違うなと戸惑いつつ、最後はうまく着地した。
battery lowのアナウンス、ビートルズのCome Together、いずれも英語と絡めた表現が笑えた。
「舟」は読んでから、これもなんか違う?と思っていたら、漫画の原作として書かれたものだったのね。
元素記号が妙に新鮮に感じられたのが悲しい年齢(笑)
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おもしろい!似たような状況あるあるってところがいくつもあって、最後まで気になる。
ねかしつけのくだりなどは、よくこんなに言えて妙な描写ができるなぁと、羨ましくおもった。この言語化力で、日記をつけられたら、読み返しても楽しめる日記が書けるだろうなぁ。日記続いたことないけど。
読み終えるのがもったいなくて、いつまでも続きを読んでいたいって思いながら、大切に読んでます。
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男の子をもつ父と母。特に何にも事件があるわけじゃなく(あっても完全なる傍観者)、悩みや困難や痛みがあるわけじゃなく(あっても日々の雑事)、将来への希望や不安があるわけじゃなく(あってもやっぱり日々の雑事)、つまり、どこにでもある日常の生活の繰り返しをただ切り取って描いているだけなのに、
長嶋先生の手にかかると小説になる。
ほのぼのとも違うし、まったり、という言葉とも一味違う。この大きなマンションの隣ではなく違う棟に私も住んで時々これからもこのご家族と世間話をしたい気になる。
「あらぁコースケちゃん、今度小学校なのね〜」
『舟』こちらも普通の女子高生の何でもない日常。
なのに、この短編小説も長嶋先生らしさに満たされている。言葉の選び方やつまらない(?)面白さをみつけるのが絶妙!
図らずも自分自身の高校生時代に逆戻りして、友人の日記帳を見ちゃた感じ。そこに世代間のジェネレーションは感じるが(笑)
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築50年のマンションに住む、夫婦と5歳の息子の日常。
何の音?AEDだと気づいたのは、消防車と救急車のサイレンが聞こえた後である。
6階から見下ろしていたけど、下の階へ降りて挨拶だけしたことのあるおばあさんに聞いたら飛び降りらしいと。
特に騒ぎ立ててる人もおらず、翌日も対して変わらず。
夫と交代で息子の送り迎えをして、管理組合の理事を最小限こなしている。
取り立てて、大きな事件はなく飛び降りは中年の鬱による自殺。
だけど住んでるところは、連続殺人事件があった現場に近いのかも…。
しかし、何も変わらず寝て明日を迎える。
あまりにも淡々とした日常。
しかし、これが普通にどこにあってもおかしくない日常かもしれない。
こんな時代あったかも、とかマンションはやはり管理組合や自治会もあって面倒だったなぁとか…を思い出した。
短編の「舟」は、憧れの先輩が口にしていた暗記法の「水兵リーべ、僕の舟」を思い出していた歯科矯正中の私が、久々に出会って瞬間に一日だけの恋に気づいた話。
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ウーン長嶋さんの久しぶりの作品に加え「日本に住むすべての人へエールを送るマンション小説」という帯に惹かれて手にしたが…連続殺人犯の物語でもなく、ささやかな日常含め展開なく、すべてが中途半端。残念。
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ルーティーンズが良かったので、そのまま読み始める。長嶋節-別の言い方でクスリ笑いを誘う-炸裂してる。--で区切られた言い換えだらけ。堪能。そして、言い換えが絶妙に昭和で、絶妙に貧乏っちくて、いや、揚げ物の残り油で卵焼きしなくない!?というレベル。でも、変わらず好ましい文体。ただ、「マンション小説」ってなんだ???
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約二十年ぶりの長嶋有さんの小説。
これまでも「長嶋有読みたい」という発作に幾度か襲われつつも、いつのまにか忘れて読まずじまいだったけど、今回は図書館予約しておいたので、無事読めました。
R市にある「ジュラシックな」佇まいを持つ古いマンション。
主人公はそこに住む中年の夫婦と5歳の息子。
小説はその妻と夫の視点が交互に変わりながら進む。
妻はドラッグストアでアルバイトしながら、リモートワークの夫とともに息子のコースケを育てていた。
夫婦仲はお互いの努力もあり、なかなか良好そうに見え、息子もすくすくと育っている。
何気ない日常、と一言で言えば味気なく思えるのだが、その「何気なさ」の中に、不安や、喜びや、ままならなさ、を、みんなみんな飲み込んで、生活は続いていく。
読みながら私は、長嶋さんはこの小説で、何か繊細でかけがえのないものを読者に手渡そうとしてるのではないか、と、思った。
私などが言語化したら(出来ないんだけど)、立ちどころに壊れてしまいそうな何かを。
私は子どもを育てた経験がないので、5歳児の子育て小説としても新鮮で楽しかった。
子どもは面白いですね。
短編の『舟』も良かった。
声に出したくなる語呂合わせ「水兵リーベ、僕の舟」
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ミニトマトを添えて、育ち盛りの子に野菜を与えているアリバイにする、ということ。
どこに住んでもいいしここには住みたくない、という無限大の自由が、我々を軽やかにしているわけではない、ということ。
ささるわ〜。めっちゃわかる。
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何か起こりそうで何も起こらなかった。子育ては遠い昔なので共感も薄い。
むしろ「舟」がよかった。登場人物をふくらませて長い作品になればいいのに。
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表紙の絵から団地に住む人たちの群像劇的なものを想像したのは、面白かった「三の隣は五号室」に似た物語を期待いたから。
結果は、ある子育て世帯の何の変哲もない日常を描いた物語。
その登場人物の思考や行動に特に感じることもなく、どちらかというと好きになれず、物語としてははっきり言ってつまらなかった。
むしろついでに収録されたような「舟」の方が良かった。
最初から感じたのは文章のわかりにくさ。難しい言葉でもないし、内容もありふれたことなんだけど、この言葉がどこにかかっているのかとかとてもわかりづらくて読みづらい。こんな文章を書く作家さんだったっけ?と訝しむ。
最後まで読めばいいこともあるかと期待して我慢して読んだけど、冒頭でさっさと見切りをつければ良かったと後悔。
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久しぶりの長嶋さん、随分楽しめました。
中編「トゥデイズ」と短編「舟」の2編。
「トゥデイズ」はちょっと古いけど大きなマンション群に暮らす一家を描いた作品。冒頭が同じ棟で起きた飛び降り自殺という不穏なスタートですが、やんっちゃ盛りの5歳の息子を見守るごく普通の夫婦の日常を描いた作品です。
長嶋さんらしく、特に何か大きな事件など起こるわけでは無いのですが、読むにつれどんどん引き込まれて行きます。同じように大きなマンション群に住み2歳の息子を育てている娘夫婦のことなど思い出しながら、「そうだよな~」「そうなんだろうな~」と思いつつ読み終えました。
一方「舟」はコロナ下で歯列矯正に通う女子高校生の恋とも言えないような淡いときめきを描いた作品です。やや古風なタイプにも思えますが、多分普通の女の子ってこんなものなのかな。なんかホッとする短編でした。
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大型マンション群と夫婦と子供。
速い体温計はバカに見える、大人は多くを知り終えている
元素周期表と歯科矯正