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要約すると。
世の中の未婚のアラフィフおじさん諸君!
あなた方はキモいです!
人の話聞かないでしょう!?
男尊女卑思想バリバリでしょう!?
あるいは実家暮らしで精神的にも自立してないマザコンの子ども部屋おじさんなんでしょう!?
テメエのキモさを自覚して、自分の色んな部分を直して結婚しましょう!
じゃなきゃ67で死にますぜ!
……と、婚活ハウツー本の皮被りながら、世の中の非モテ・未婚のおじさんをビンタするノリの本だな。
ダメげな婚活をしてる、見たら引く感じの顔写真をマッチングアプリに登録してるおじさんとかを晒上げとかしながらで、ダメだダメだと。
まぁ、ある意味すごいわ。
なにしろ。
「生涯未婚男性の半分が67歳までに死ぬというデータがあります」
「妻が亡くなった後、2020年12月頃に作者は67で死ぬのは早いと思って婚活始めて、成功しました」
から、婚活頑張りましょうみたいな冒頭弁論だが。
その時に独身研究家の荒川和久さんが書いた「『いのち短かし、恋せぬおとこ』未婚男性の死亡年齢中央値だけが異常に低い件」という世間でバズった記事も参考にしたと、名前を名指ししながら書いてるが。
いやもう、分かる人には分かると思うが。 すごいでしょう?この時点でもうすでに。
その「未婚は67歳で半分死ぬ説」の記事は……ネットでそこそこバズった有名な奴だが。
『2021年の6月以降』になって出た2020年人口動態調査データを元にした『2022年9月8日』の記事だ。
で。作者が再婚活動を始めたのは『2020年12月頃』・・・?
どうやら作者は予知能力者らしい!未来が見えていたようだ!!
奥さんが亡くなられて少しした2020年12月頃の時点で、半年~1年半先になって世間に公表されたデータや記事を読んで「ヤバイ!未婚の僕は67で死ぬんだ!」と考えることが出来たらしい!
いや、冗談ではなく予知能力者である可能性があるな?
だからこそまるで荒川和久さんの記事の情報を断片的に読んだかのような内容をしてるのだろう。
荒川和久さんが提唱したその「未婚は67歳で半分死ぬ説」にしても。当該記事から情報引用すると
「未婚男性(15歳以上)の死亡年齢中央値が67.2歳」で。
「離別の死亡年齢中央値は72.9歳。死別は88.4歳」で。
「生涯未婚率の考え方を取り入れて、50歳以上の場合で計算したら、未婚は68.5歳。離別は72.2歳。死別は87.8歳」
といった情報を書いていた記事だ。
これを読んで「生涯未婚男(50歳以上男性)の半分が67歳で死ぬ」という発言を堂々と表紙にまで書けるというのは、それこそ、よほど浅慮な人間でない限りは……
おそらく、予知能力で15歳以上の場合の67,2歳というデータだけを断片的に読んで、それを50歳以上の生涯未婚男性の話であると勘違いしたのでしょう?いやあだとしたら実にすごい書き方がされている!
しかし、いささか早計な言葉づかいではありますな。
「生涯未婚率」というのは50歳基準で考えるものであると一番最初にご自身で書いたりもしているのに。
これでは「15歳で事故・災害にあって逝去した男子中学生(当然未婚)」とかも対象に含めながら「結婚してないから早死にするんですよ」と語るような、無慈悲極まりない言論になってしまってますな。結果的に。
それに、奥さんが病気で亡くなられたという作者の立場というのは。「死別者・離別者」の側でしょう?
そこで自分のことに関して「67で死ぬのは早い!」と思うのは・・・
それってつまり「僕は奥さんを喪ったから、一度も結婚してない奴と同じように67歳で死ぬんだ」と思ったということでしょう?
前の奥さんとの結婚生活、長くつれあってくれた奥さんは、何も与えてくれなかったのですか?
長生きできるだけの恩恵を何一つ与えてくれず、自分より先に死んだ奥さんは、最初から居なかったのと同じであり。
自分には普通の離別者のような72歳までの生涯も、死別者のような87歳近い生涯といった未来もなく。
一度も結婚してない中年男性のような生き様になり果てて67歳で死ぬんだと、考えられた・・・と?
亡くなられた奥さんとは作者にとってどういう存在だったのだろうか。
この本にはどうも再婚相手の年収1000万超の美人キャリアウーマンさんの話ばかりが並んでいるが・・・。
いや流石にこのあたりは言葉のあやであったと思いたい。
でなければ亡き奥さんが闘病生活の果て、その人生を終えられてから夫に「居ないも同じ奴だった」かのように言い放たれ、著作のネタにされているかのようで、可哀想すぎる。
あくまで個人感想だが、そういう言葉づかいになってしまっているように感じてしまう
あと「子ども部屋おじさん」なんてマスコミが作ったイジメ用の言葉を乱用しているのも考え物ですな。
参考元にされた荒川和久さんですら「親元に住んでる未婚男性よりも、独居の未婚男性の方が多い」「子ども部屋おじさんという言葉は不実・デタラメ」とデータを片手に糾弾されておられるぐらいだ。
「実家暮らしはダメ、無理、絶対失敗」的に断言するのであればもう少しデータや根拠を詰めた物言いをしなければ全く説得力がない。
まぁ、傾聴術を婚活に活かそうというのは一つの技法かもしれないし。
傾聴術の超基本、基盤とも言える「スティンザーの三原則」レベルの話はちゃんとしてある。
それに提示されているテクニックの中でも
「美容院でみだしなみ」
「痩せる努力しよう」
「清潔感大事にしよう」
「色付きの服は避けてスーツなりユニクロなり無難な服で」
「まずはマッチングアプリ、ノールックでいいね押しまくって相手の注目を引こう」
これらの項目はまぁモテようと思ったら、不特定多数の女性から注目を浴びようと思ったらそうなるわな、と思うものではあった。
ただ、逆を言えばどんな素人が見ても「まぁそりゃそうだ」と思うような「色んな女子に自分を見てもらうアプローチ術・モテ術」とか、どんな��聴術の本でも大抵書いている技術内容が書かれていると言えるわけで。
ホームランの打ち方教えます!と書かれた本を手にしたら、技術的な内容は
「強くバットをふるべし!!」としか書かれてないような拍子抜け感も否めない。
この本に関して「男尊女卑思想のオッサンを否定しまくってて痛快」などという感想もあるようだが・・・
まぁー……自慢話しか能がない年齢食っただけのオッサンたちの顔を考えながら
「そうそう、あいつらはそういう節度がねえんだよ!人の話きかねえんだよ!よく言ってくれたー!」と。
ある種、オッサンたちを制裁していい気分になりたい人・オッサンに恨みを抱えた人にとっては良い本なのかもしれない。
個人的には先述した作者の予知能力らしき記述っぷりに「すげええwwww」と笑う、高度なギャグの本として読むことこそが、この本の読み方ではなかろうかと感じ入っているわけだが・・・それにしては婚活ハウツー本としても結婚関係の社会論としても、主観的すぎてデータ的な内容もてんでなくて、効果出さないんじゃないかという、無用の長物感ある部分が多いかなーという感覚もある。これは非常に評価が難しい。
結局「世の中にいるキモいオッサンをぶった切る口上を楽しめるかどうか」が評価の境目になりそうだ。
とはいえ・・・確かに?
自分の成功体験ばかり並べて、失敗してそうな他人を見下しながら、客観的な検証や考察もしてない俺流理論を掲げて、もっともらしく説教かます。
内容はうすっぺらで詰まったところがない。現実的な解決策には一切つながらないであろう妄言。長年自分に関わった人間でさえ遠回しに貶めるかもしれないような軽率な言葉づかい。
そういう言葉を並べる中年男性というのは。知性や品性というものからほど遠く確かに不快千万であるな。
そういう意味では、多少なりとオッサンはキモいんじゃ、口開くんじゃねえやと言わんばかりな言論に同意してしまうものがある。
特に新しく得るものはなかったが、何か「こんな年齢の重ね方はしたくはないな」というものを再認識されてくれる本ではあったな。真面目に読もうと思ったら相当に出来がアレな本だと思えてしまうが。