紙の本
懐かしさも、これからの人への想いも、みんな静かに写しこんだ絵のような文章。
2012/10/30 16:15
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「チョコレート工場」など、このシリーズには著者の子供向けの話が多いのだが、本書は少し趣が違う感じの作品である。
1916年に生まれて1990年に亡くなった作家の、1991年出版の作品。一月の寒さの中で見回す部屋の中の情景から始まり、春の遊び、夏の冒険、秋の楽しみ、と一月ごとに記される。晩年、慣れ親しんだ風景を見ながら思い出を重ね合わせて書いたのだろう。原題はMy Year。自分の生きた年月が、12か月の季節の移り変わりとともに「心に映るがまま」思い出と一緒に言葉になっている。
ダールはいろいろなタイプの文章を書いた人だけれど、行きついたところはこんな静けさだったのか。
挿絵の雰囲気も文章にとても良くあっている。そっけないようでやさしく、情感にあふれている。表紙は著者の散歩風景だろうか。その姿は、どこか100歳を過ぎても書きつづけていらっしゃる素敵な詩人のまど・みちおさんに重なるものがある。私が好きなのは6月の最後にあるカエル。温んだ水に身をあずけたカエルの脱力感は夏のけだるさそのものにもみえる。
翻訳の素晴らしさにも触れておかねばなるまい。たくさんの生きものが登場するが、その名前は尉鶲、橡の実、とできるだけ感じで表してある。ダールさんがおそらく土地の言葉も活かした名称で書いていたのだろう、母国語での独自の雰囲気を生かそうとした翻訳者の心を感じる。
そして、十一月で語られる、著者が小学生のころ書いた文章。「誤字ばかりだった」文章を「びっくりぎょう点」とか「すごくゆ会」とか「体走着」とか、日本語で表現してあるところも楽しい。翻訳者の本領発揮、というところであろうか、こだわりが感じられるところである。
いろいろと読みどころはあるが、理屈抜きに楽しい、心穏やかにしてくれる小冊である。
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ロアルド・ダールが都市生活をきらうわけがよ〜くわかります。
自然と共存、いや自分も自然の一部(人間)としての視点での、幼い頃からの記憶や暮し・・・ どれも鮮やかでまぶしいくらいです。
英名タイトルの"My Year"の方がピッタリかもしれない。でも、この本がイキイキと感じられるのは、翻訳の絶妙さもあるからかもしれません。
昆虫博士のファーブル先生と筆者が重なってしまいました。
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コレクション23〜月ごとのエッセイ〜1月は楽しみが少ない・・・やっぱり夏に限る・・・冬は渡り鳥がやってくる・・・クリスマスのプレゼントに貰った工作セットで悪戯を・・・と楽しそうに振り返り,今を語る
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ダールが晩年に綴った12か月それぞれの思い出。心和む文章だが、ところどころにさすがにダールの皮肉が利いている。どこから読んでもいいので、ちょっと文章が読みたいときにちょうどいい。巻末の訳者あとがきは、少々蛇足…?原文タイトルは「My Year」。邦題よりこちらのほうがいい。
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「一年中わくわくしてた」は、なかなかいい題名だと思います。
まあ、原題がただの「My Year」なので、本当に、「わくわく」していたのかは、どうかわからないのですが(爆)
↑ 多少、訳者が嫌いなので、あまりほめたくない気分になっているだけです。気にしないでください。
ダールは、結局、終生変わらず、一貫して、愉快な頑固者だったみたいです。
それはそれで、素敵だと思います。
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題名の勝利!
原題はMy Yearだけなのに、
この題名をひねり出すのはすごいと思います。
一年中わくわくして生きれたら、
楽しいだろうな。
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ダールによる、ダールの孫達への、ダールの日記。
一年中わくわくしているダールの自叙伝。
いつまでも子供の目を失わないダール。
一見、ひとりよがりのように見えるが、
孫達の視線と行き交う中で、
人への愛情が増幅されていく。
ひとりよがりが、みんなが楽しめるものへと化けて行く。
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ブラックジョークたっぷりなほかの作品からは想像できないほど優しさと自然(特に鳥類)への愛情に満ち溢れたエッセイ。
ときおり小さな棘のような皮肉もあるけれどそれさえも愛おしく感じる。
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『チョコレート工場の秘密』の作者、ロアルド・ダールの日記。
一ヶ月形式でその季節についての作者の思いが書かれています。へ~と思うほど細やかな自然の知識と、子どもの頃のダールさんがやんちゃした話など、穏やかな気持ちになれる読みものです。でも、よっぽどファンじゃなきゃ読みませんね~こりゃ。
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こういう本を読むと、街に住んでいるのは損をしている気分になってくる。もちろん街にも自然も四季もあるわけで、要はそれを感じる感度があるかどうかという話だとは思うのだが。
あとがきはいらないCMを読まされた気分。
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周りをゆっくり見回すと楽しい事がたくさんあるんだ、と、
日々過ごしていたんだろうなあ、
と読んでるこちらもわくわくしてくる本でした。
私も皆さんが書かれてるように、邦題が素敵だなあと思います。
こんな目線を持ち過ごしたいものです。
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著者のわくわくを追体験できるのはもちろんですが、そこに不思議な滋味深さが加わって、読後感の心地よさがあります。日に当たると鳴りだすオルゴールってどんなだろう。
クエンティン・ブレイクの絵も軽妙で楽しい。
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My year。ロアルド・ダール氏が最後の年に書いた日記だそうです。おちゃめな祖父から昔話を聞くような気持ちになります。そして、そばで目を丸くして聞いている子どもの自分がいるようです。
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ロアルド・ダール、人生最後の一年間にふと書き綴られた日記。
クエンティン・ブレイク氏のイラストが添えられ児童書のシリーズ内に収められているけれども、これ、しみじみといいです。
幼いころから少年・青年時代の思い出、マッシュルーム採取の心得、蝶のライフサイクル…こんな祖父から小さいころにいろいろな話を聞くことができたら、さぞ素敵だったろうなと思います。
ところで膨大な数にのぼる鳥や草花の名称がほとんどすべて、片仮名や平仮名ではなく漢字をあてられています。
これもまた違った景色が生まれる源なのだなあ。
名前はとても大切なもの。
翻訳は、超絶難書『フィネガンズ・ウェイク』を攻略した柳瀬尚紀氏です。
あとがきで自らを「言葉掘り生活者」と言いあらわしモグラ君との空想対談を繰り広げるなかで、漢字を用いた理由を丁寧に説明しておられます。
「日本ではふつう、本でも新聞でも、動物や鳥や植物の名前はカタカナで印刷されているんだ」
「でもね、動物や鳥や植物の名前をカタカナで書くと、姿が見えないような気がする」
「たとえば、鶸(ひわ)は弱い鳥ではないよ。弱は『こんにゃく玉』だってさ。『こんにゃく玉のように、丸々として大きい鳥』が鶸なんだ」
(ちなみに「おいらだって『土竜』と、漢字でいかめしく書けるんだぜ」とむくれるモグラ君にたいしては、ずいぶん適当な宥めかたです)
このあとがきを読んで、ますますこの一冊に出会えてよかったという思いが深まりました。
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本当にダールの一年中わくわくしてた記録です。
人生の最後に書いた日記、らしいです。
こんな風に世界を見てたのかなあ、自然科学にめちゃめちゃ博識で、でもやっぱりすごくヘンだし不思議な人だったんだろうな…。