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図書館の新刊コーナーにあったので手に取ってみた。
著者は1946年生まれ、外務省に入り2005年から駐ウクライナ兼モルドバ大使を3年間務め、2008年11月、外務省を退官された方。
学者の本とはちがったアプローチ。
メモ
DS(Deep state) の存在を説く。狭義にはウォール街やロンドンシティに跋扈する国際金融勢力およびそのネットワークをさすが、広義においては政府を陰から操る勢力を指す、と述べる。
プーチン・ロシア=悪、ゼレンスキー・ウクライナ=善という枠で報道がなされている。メディアで市民が受け取る情報は言論人の分析で、それは”ビジネス”であり、そこには特定の情報源があり、それをベースに言論ビジネスをしている。そうである以上情報源の意向への配慮やその道筋に沿う必要がある。私の40年にわたる外交官生活の経験から言えるが、情報源に頼るビジネスは限界がある。
世界の出来事の99%は公開情報で理解できる。いや公開情報からでないと本質を理解できないと言った方が正解かもしれない。
学者や専門家は断定を避ける。「こういう可能性もあるけど、こっちの可能性も否定できない」と。
歴史の大きな渦中にあって、国家や国際金融資本が生き残りをかけてしのぎを削っているときに資料的裏付けのある証拠などあるはずがない。ウクライナ戦争においてもわれわれが見てすぐ判断できるような証拠など都合よく出てくるはずがない。それは10年かそれ以上先の事だろう。
ゆえに、本当は何が起きているのかを見抜くためには、大きな流れをつかんだうえで、ある程度大胆な仮説を立て、そこから原因を類推することが必要。結果から原因を突き詰めるというアプローチだ。
例えばG7でゼレンスキーが急遽訪日した理由は何か。戦時下に劣勢に立たされている国のトップが外遊するということは、ロシアとウクライナの戦争はほとんど結着がついていることが読み解ける。そのような仮説をたてることができれば、直接的な証拠はなくても、その仮説を補強する傍証は出てくる。それはすべて公開情報でわかる。
2023.6.30出版 図書館