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面白かった。しかし。これは知識が相当必要。おかげで何度図書館へ通ったことか。旧約聖書の時代、その時代のあの地域のこと。知らなくて当然だろうけれど、この本を読んでいるとそこの知識が必要になる。
そういう複合的な読書だけれど、個人的には面白かった。
ヨーロッパには何度も行っているけれど、中近東は遠いんだよねぇ…。
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特定の宗教に依存しているわけではないので、聖書も断片的にしか読んだことがないのだけれど、遺跡や史料を頼りに考古学的なアプローチで旧約聖書を捉えようとしている。当時の統治形態や集団形成を図る上で都合のいいように物語が作られることが多いのが常であるが、考古学的な観点で見ると別の解釈が得られる好例のように思う。イスラエルの歴史をある程度見ながら、イエスの物語を見ると、キリスト教がなぜ必要とされたかも見えてくるかもしれない。
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聖書の記述はどこまでが真実なのか、誰が纏めたのか、を考古学の手法で検証すると同時に「イスラエル人」はどこから来たのかという謎についても言及している。また、聖書の記述の考察だけでなく考古学における発掘作業や遺物の同定の難しさ、聖書を歴史の史料として扱うことの難しさについても取り上げている。文書史料の検証は記述されているものが発掘されるか、同時代の別の地域の史料に共通記述が見られるかといった点で検証する。これは聖書においても同じであるが、信仰という要素が絡んでくるため少々複雑なことになっている。すなわち聖書に書かれていることは全て正しいとしてしまうという事である。こういったことをしないよう「批判的」に扱うよう注意を払わなければならないことが指摘されている。
記述の癖から特定の人物による編集が行われた可能性の指摘、何らかの事実を基にして警鐘を鳴らすための創作、信仰の正当性や信仰を続けることの意義、なぜ「今」そのようになっているのかの説明、こういったことを発掘の結果や他の史料から導き出している。全体を当してみると、何らかの事件が起きたのは間違いなさそうな印象を受ける。その上でやはり宗教として成立させるための「操作」も行われているだろうことは想像に難くない。「聖地」を発掘すれば多くのことが分かるのだろうが「聖地」であるが故にそれもできない。宗教の難しさがこのようなところにもあるのだと改めて認識した。
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新聞に書評があったので、購入。
ユダヤ教やキリスト教についての本を僅かばかり齧ったが、ある本は一神教はモーゼの発明とあり、別の本はモーゼの実在性に疑問を呈していた。
よく判らない聖書について、何か教えてもらえればと思い読み始める。
考古学の立場で、はっきりした証拠がない限り断定は避けている。出エジプトはエジプト側に資料がないそうである。文献記録のほとんど残されない時代かもしれないが、これも仮説の域を出ないと書かれる。
この後のカナンの征服期では山地に住んでいたユダヤ人と平野部に住んでいたカナン人は民族的にも言語的にもかなり近い民族であったらしいと記される。ユダヤ人が自らをユダヤ人と自己規定していく中で古代イスラエルが生まれたとの見解が現在主流とのこと。
つまり、本書ではそこまで断定していないが、アブラハムも出エジプトもモーゼも恐らく虚構。唯一神との契約もカナン人との衝突のなかで自己規定することから生まれたものらしい。そうした虚構がどうして、どうのように生まれたかは考古学の範疇でない。が、こうした考古学の成果と聖書の文献分析に隔たりがあるのではと、過去の読書体験から疑問を感じてしまったのだ。
発掘された多くの街が戦争で破壊された跡を留めているとされる。多くの民族が滅び、また混血し、当時の種族は今存在しない。現在のユダヤ人も当時のユダヤ人とは民族的にはまったく別の民族と云っていいのではないか。しかし、自分をユダヤ人、イスラエルの民と規定する人々が現代に存在し、困ったことに世界紛争の種となっている。
読後はユダヤ教の発生過程に大いに疑問が残っている。
さて、何か良い本ないかな。
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帯の宣伝文句のような「本書は現地調査に従事する研究者の、大いなる謎への挑戦である」といった派手さやワクワク感はないが、読んでいて楽しい本だった。
考えてみると、自分も含めて多くの日本人の聖書の知識はお粗末と言わざるをえない。本書にもあるが、高校の教科書にはモーゼは実在の人物として登場し、出エジプト記も史実のように書かれている。史実だと思っていたことについて、フィクションの可能性が高いと指摘されるのは知識の修正という意味で有意義と思う。
「聖書考古学」とは、「聖書の歴史記述の深い理解に達するため、特に聖書の舞台となった古代パレスチナを中心とした考古学」という。そして、本書では、「信仰の対象としての聖書からは距離を置き、聖書を『人間が何らかの意図を持って書き、また編集したもの』として批判的に扱」っている。
例えば、イスラエル人には「大イスラエル主義」という政治的主張がある。これは「カナンの地全体がイスラエル民族に神から与えられたものである」という旧約聖書の信仰につながっている。一方、考古学的発見から、平野部にいたカナン人の一部が山地に住むようになり、彼らが次第に独自のアイデンティティを形成して後にイスラエル人として出現したという有力な説もある。しかし、出エジプト記がまったくのフィクションだと断言できないという聖書考古学の限界も、この本から読み取れる。
歴史本のブームの中で、自分の中にある史実を見直すきっかけとなってくれる本ということで良書と思う。お勧め。
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聖書の史実を客観的に考古学の立場から追求していこうという著者の姿勢は繰り返し書かれているように私も共感を持つことが出来る。アブラハムはBC2000年前後ではありえない!モーセもBC1300年はない、など。確かにこの年代はキリスト教会ではかつて常識のように語られてきたところである。しかし、信仰とこの年代は直接の関係はない。考古学の限界として見つかっていないものが無かったとは言い切れない。伝承が伝えられてきた中のメッセージを読み解くことに力をいれるべきであろう。逆に考古学の成果を信仰に結び付けることの無意味さも感じる。その中でダビデの150年ほど後のダン碑文にダビデ家という文字が見つかり、その時代にダビデの子孫と称する人物がいたことは間違いのない史実!これは信仰を抜きにしても感動的な発見ではなかろうか。結局は信仰とは見えないものを信じ受け入れることだという聖書の言葉を改めて感じた次第。
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2013 8/16パワー・ブラウジング。四条のジュンク堂書店で購入。
旧約聖書に書かれた内容を考古学的に検証していく本。
図書・図書館史の授業で使えるか・・・と思い購入してみたものの、知識の生産・共有・保存の歴史に関してはそれほど扱っているわけではなかった。
とはいえ死海文書のあたりは使えそう。
他にも面白い話は多い・・・のだけど聖書読んでからの方がピンときそう。
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聖書の歴史的正当性はともかく、聖書がユダヤ人のアイデンティティの維持に貢献し、今日までユダヤ人を民族としてまとめてきたという事実は興味深い。
かといって現在のユダヤ正教徒が聖書を根拠にパレスチナ人を迫害していい訳ではない。中東に和平が訪れることを祈る他ない。
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聖書の考古学であるが、旧約聖書の初めの部分が、紀元前2000年ごろと旧約聖書で、書かれている部分が、ほとんど、確かかどうかわからないとか書かれているが、書かれている人物が120歳、160歳まで生きたとか書かれていると本当かどうか、明らかと思うが、でも、当時のことが書かれた碑文がないので、確かではないとか書かれていた。かなり、慎重な書き方と思った。慎重すぎるかもしれない。また、出エジプト記が、事実かどうかまだ、確認されていないとは、はじめた知った。アッシリアの文書にも記載がなかったと、それから、考古学の遺跡の発掘の仕方が書かれていたが、その部分は、退屈であった。でも、アッシリアの文書、碑文などで、確認された部分は、面白かった。ユダヤ教徒キリスト教の関連などが面白かったし、どのようにキリスト教ができてきたかわかり、面白かった。
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旧約聖書と考古学を照らし合わせることにより、古代の歴史を解明していく聖書考古学という分野のことが、とてもわかりやすく書かれています。どんなに中立に主観を捨てて研究しようとしても、そこに自分なりの主観的な判断が混ざる、研究としての難しさに触れたところが一番面白かった。
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聖書─それも主に旧約聖書において、その中に書かれた歴史と
それが書かれた時代について、考古学という観点から何がわかり
何がわかっていないかを丁寧に解説してくれている。
もっとも、日本の天皇陵がいっこうに発掘調査されないことでも
わかるように、宗教がらみだと(しかも中東では社会情勢という
難敵も存在する!)掘りたくても掘れない場所が多すぎ、わかって
いることはほんの一握りの事実なのだな、と実感する本でもあった。
わかりやすく丁寧に書かれてはいるが、聖書に関して多少は知識が
ないと、読んでいても面白くないと思われ。
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宗教・信仰という、ある意味最も強固なバイアスから決して逃れられない領域での展開を宿命付けられた「聖書考古学」。宗教的・学問的に"中立である"ということが、これほど困難な分野もないだろう。さらに、イスラエル・パレスチナという複雑な政治情勢の特性上、遺跡の発掘が制約を受ける状況下では、聖書の記述の真偽それ自体を議論することは不可能なばかりか不毛でもある。
本書はそれよりも、聖書に描かれた伝承が「なぜそこに記されなければならなかったのか」に焦点を据え、主にローマ統治時代以前のユダヤ人の歴史を、「聖書」と「遺跡」を縦横の糸として解説してゆく。少々駆け足が過ぎる気もするが、我々日本人とは比較にならないほど複雑なユダヤ人の歴史に思いを至らせるには十分。
年表がついていなかったので、イスラエル大使館のHPからプリントアウトして参照しながら読んだ。
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旧約聖書のとあるエピソードはラクダが家畜化された年代と合わない「時代錯誤」であることから後世の創作であることがわかる、といった時代考証が面白かった。
出エジプトも旧約聖書の記述から一応の年代を特定することができるが、時代考証上、事実と異なるだろうと。というか出エジプトがいつ頃の話かってわかってないんだ。
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結構内容は面白かったが、私自身は作者に大学で習った人間なので、まだ大丈夫だったが慣れない人には難しいと思った。イスラエルなどのオリエント関係を勉強したい人には良いかもしれない。
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旧約聖書に書かれた物語はフィクションなのか史実なのか。
本書は考古学を用いてその謎に挑んでいます。
でも、紀元前の世界史にあまり興味が無い人にはちょっと読むのが厳しい本だと思います。