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西洋美術を入口に聖書に興味を持って何冊か読んでみいる中で、学問的な色合いの本を探しているときに本書に出会った。
本書は考古学、歴史学の見地から旧約聖書の記述を検討していて、その史実性を跡付けようとしている。
決して宗教の虚偽や欺瞞を暴露しようと意図しているわけではなく、あくまで学問的に何が実在しているといえるか、と批判的で冷静な学問的立場を維持している。
神によるこの世の創生からではなく、アブラハムから始まる族長時代からが検討対象で、聖書の中であまりメジャーではない(?)ソロモン後からバビロン捕囚までの時期の歴史に割と多くのページを割いているのは、史料と発掘物に語らせる姿勢の表れかもしれない。
そのため、族長時代や出エジプト記が歴史的に実在していたかどうかは、明確に判断されていない。黒白はっきりしてほしい人には不満が残るかもしれないが、私は著者の真摯さが感じられて好感が持てた。
聖書のストーリーの説明はあまりないので、ある程度旧約聖書の知識があった方が楽しめるだろう。
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本書は、旧約聖書の物語は考古学的に証明できるのかという観点から考察する書です。考古学であるから、発掘結果ベースということにはなるのだけど、旧約聖書の記述には少なからず時代錯誤が含まれているという点にはまさに目からうろこ。細かい点を記憶するつもりもなく読んだのですが、ざらっとユダヤ教の誕生の歴史もおさらいできるのも良い点です。
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読書案内(pp.232-233)
山我哲雄『聖書時代史 旧約篇』
P.カイル,Jr. マッカーター『最新・古代イスラエル史』
月本昭男『目で見る聖書の時代』
杉本智俊『図説 聖書考古学 旧約篇』
アミハイル マザール『聖書の世界の考古学』
長谷川修一『旧約聖書の世界と時代―ヴィジュアルBOOK』
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これはなかなかいい本だと思う。著者自身がイスラエルの発掘調査に携わっていたこともあり、よく仕上がっていると思う。
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古事記も引き合いに出し、旧約聖書を成立させた動機は、仮説だが、説得力がある。
その後は、地域限定の古代史そのもの。年代特定方法も含めて、考古学的。
逆説的になるが、現代まで連なるユダヤの民を見るに付け、「正典を持つ」威力を感じた著作であった。
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聖書の事象の証明、確認に科学的手法・考古学からアプローチする面白さと難しさがよくわかる。
一気に読める読みやすい好著。
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聖書の大まかな内容と考古学的な観点から見た真実(と推定されるもの)を分かりやすくまとめてあるため読みやすかった。
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世界史で聖書の存在を知ったとき,あるいは実際に聖書を読んだとき,「どこまでか史実なのか?」という疑問を抱くと思う。全てが史実なわけではない,かといって全てが空想でもない。
本書は,考古学の視点から聖書と史実の関係について概説したものとなっている,学問としての線引きについて知っておくと良いだろう。族長時代から新約時代,とはあるが,実際メインに扱っているのはアブラハムからダビデまでで,旧約聖書のモーセ5書と歴史書が該当する。
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聖書はそれが史実であるかはともかく、その時代に書かれ人々に共感された事実に価値と面白さがある。
私の日頃の思いもまさにこれである。
この観点を踏まえて考古学と照らし合わせるのが本書のやり方で、聖書を暴くことは意図されていない。
発掘資料から推察されるイスラエル近辺の歴史と聖書の記述に相違があれば、ではなぜそれが書かれたのか、人々の心を打ったのかを追究する。
ただいくら考えても世界中に論者がおり、決定的な発見がない限り真相は闇の中である。
というわけで、これを読んでも何も答えは出ないのだが、単純に紀元前の歴史を追うのが面白かったし、照らし合わせで嵌る深みからは浪漫が溢れかえる。
聖書に出てくる人物や出来事が、エジプトやアッシリアの碑文に出てくるか。
いや全然出てこない。
出エジプトはさすがにしたのだと思っていた。
それさえ怪しいとなると、旧約聖書フリーザ編的なあの盛り上がりは一体誰の意図で書かれたのか。
エジプトが悔しくて歴史を闇に葬ったのか。
モーセたちの夢物語なのか。
そして真実でなかったとしてもユダヤ人の心に共通の祖への思いが宿り続け、
20世紀に建国に至ったという壮大すぎるこの事実。
何があったんだよ、いやむしろ何もなかったのかよ。何を過越祭してるの。
列王記なんて真面目に読んだことがなかったが、もしかしてめちゃめちゃ面白いのかもしれない。
持ち歩ける分厚さなら良かったのに。本棚ででっぷり座り続ける聖書よ。
興味や価値観が合うと思ったら、母校が同じだった。
文章のところどころに見える、ロジカル風で思いが勝っちゃっているところも何かありがちでわかる笑。
私は院卒ではないが時々出会う先輩の本を読むと、学んだ時期は違っても刷り込まれる大学ナイズはあるとしみじみする。
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『歴史学者と読む高校世界史』の第01章が面白かったため、長谷川修一の過去作として手に取った。旧約聖書の記述の全てを原理主義的に信じることは(信徒でないこともあり)元からしていなかったが、では実際にはどこまでなら史学的・考古学的に一次史料から確かめられるのか、という点について良い概説を提供してくれた。ダビデあたりの伝承が境界例であり、分裂王国時代以降に少しずつ考古史料が増えてゆく過程について学ぶことができた。読んでいて興味深かったのは、聖書考古学におけるシュメール文明とアッカド語の重要性の高さ。古代ヘブライ語や古代ギリシャ語以外にも、アッカド語が読めるかどうかが、古代オリエント史におけるイスラエルの民の歴史を追跡するうえで重要であることが、史料活用の中で伝わってきた(同じ著者のちくまプリマー新書『謎解き 聖書物語』でもそうした史料活用のようすを確認することができる)。