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EASY FIGHT
“史上最強のMade in Japan“堀口恭司の自伝的な本。一言で表すと、凡事徹底であろう。凡事を徹底したものだけが非凡になれる。逆説的であるが、堀口は非凡なまでに凡事を徹底する、まさにその徹底ぶりが今の彼の姿を形成している。
本書を通じて、堀口が清々しいほど、(良い意味で)何も考えていないことがわかる。これだけトップレベルでやる選手であるからには何等かの複雑な思考や戦略があるのではないかと思わせるが、恐ろしいほど、考えていない。一つのことに集中、敢えて何も考えない。本書でも、堀口自身が、無感情であることの効用を唱える。できるだけ感情をなくし、やるべきことを徹底する。私の敬愛する内田老師も、武道として天下無敵を定義する時、自分のコンディションを下げ、パフォーマンスを下げるあらゆる要素から解放された状態であると述べていたが、まさに試合中の緊張や迷い、気負い、それらも敵であり、勝負の際には視界を曇らせる。堀口も、同じようにそのような感情がパフォーマンスを下げることが知っているからこそ、機械的に、無感情で練習や試合に臨む。
そして、もう一つの大事なこととして、ただ自分を信じて自分ならできると自己暗示する。比較的、その点、日本の教育にはやはり批判的である。他人の挑戦を否定する空気やカルチャーに異議を唱える。有名なインタビューとRIZINの文句として「お前は俺じゃねーんだよ」「誰かの否定に付き合うな。主人公になることを恐れるな」があるが、まさに本書はその二言を敷衍した内容であった。
昨年頃から、総合格闘技にのめり込んでいるが、やはり総合格闘技の魅力は各選手の戦略の部分にあると思う。総合格闘技をやっている選手の多くはキックボクシングや空手等の打撃系出身や、レスリング出身、さらには柔術家等のグラップラー出身等、バックボーンを持った選手がしのぎを削っている。それらの選手が、自分の出身の格闘技の強みと弱みを理解し、弱点を補強しつつ、強みを最大限活かす戦略を立てる。いずれの試合でも、無論、立ち技の展開になれば、キックボクシング出身の選手が強いが、ひとたび寝かされてしまえば、柔術家の極め技の餌食になってしまう。各選手が自分のカラーを出して、闘う。そのためには基礎技術はもちろんのことであるが、自分の戦いたい土俵を作り、相手を誘いこむことも重要である。極力、場を主宰し、場をコントロールできる人間がやはり強いし、場をコントロールするための引き出しの多さが肝になる。こうした格闘家の立ち回りは、非常に自分自身のビジネスでもオーバーラップするところがある。
今の会社は中途入社が9割近くの会社であるが、皆が自分たちの前職の職歴や強みを活かして、勝負している。営業であれ、コンサルタントであれ、付加価値提供による顧客の課題解決と自社の事業成長のための収益獲得を目指して昼夜頑張っているが、その道筋は人々に任されている。保険を扱う事業であるため、最低限の保険知識はもちろん必要であるが、英語力を活かす人もいれば、コンサルティングスキルを活かす人もいる。そうした中でも、できるだけ顧客と対峙した際に、引き出しの多さを持ったうえで、自分の強みを活かした展開に持ち込むことも信頼を���る上で重要である。(無論、顧客のニーズをゆがめるという意味ではなく、ニーズの解決における道筋を自分が付加価値を出しやすい展開に持ち込むという意味である)。こうした、面でも総合格闘技と大きく重なるところがある。さらに、もう一つ興味深いところが、総合格闘技におけるマッチメイクの発想である。堀口恭司はそのタイプではないが、トラッシュトークと言って、試合前に相手選手の悪口を言い連ねて、因縁を演出すること、試合を盛り上げるパフォーマンスもある。ただ悪口を言っているように見えて、多くの選手は戦略的に実行し、試合前のボルテージを引き上げ、試合当日まで観客の幻想を喚起する。そして、このようなトークの上手い選手は、試合が決まる前から様々な布石を打っている。平本蓮選手等は、非常に特徴的で、ある種のプロモーター目線で自分自身のストーリーを2-3年スパンで描き、そのストーリーの中に多くの選手を引き込んでしまう。まさに場を主宰する力に長けていると言える。いずれの選手も、格闘家をしての芯の強さはもちろんであるが、階級のチャンピョンになるためのストーリーを描き、向こう数試合のマッチメイクを意識して、演出をしていく。観客の幻想と喚起しても、勝負所で勝てなければ意味はないのだが、勝負論を掻き立て、マッチメイクを実現させていく幻想構築力やストーリーの構成力も、総合格闘技の魅力の一つである。実際、試合は多い選手でも年間4-5試合しかない。その中で、その勝負に至る過程をいかに演出し、観客に夢を持たせるか、そこもできる選手はやはりプロフェッショナルであると感じる。このような感性も、実際のビジネスの展開でも重要であると思う。社内政治という言葉とはまた違うが、魅力的なポジションやチャンスをつかむためには、自分自身で演出し、上司部下同僚を含めて、この人であればやらせてみたいと思わせるストーリーを描くこと、ある種の幻想を抱かせることも重要である。その時点では幻想でも、勝負できる場所が決まれば、そこに向けて幻想を現実化するために圧倒的に努力する。まずは目標を立て、自分の能力よりも一段上の機会を作り(作ってもらい)、その勝負に勝つための努力と、盛り上げを欠かさない。そんな学びが、興行としての格闘技の視点では実生活への学びがある。
最近改めて、感じるのは、意外にも世の中の多くのことは人々の思い込みや感覚ベースで動いている。人々が抱く幻想の現実変成力というものは馬鹿にならない。昇進やチャンスをつかむにせよ、公正に評価してほしいと望む人は多いが、またしても天下無敵という言葉を引用するが、人々の幻想や思い込みも自分自身の現在から将来にわたるパフォーマンスに影響するのであれば、それもコントロールしてこそ社会でいきるということではないかと思う。
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『何度も言うけど、他人の人生じゃない。あくまで自分の人生』『本気か本気じゃないか、その中間の答えは求めてない』
後悔しない為の助言。
2024_1
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堀口恭司の自伝ということで読んでみた。戦極、DREAMの低迷期に見ることを止めてしまった総合格闘技を再び好きにさせてくれたのは彼のRIZIN参戦の影響が大きい。ゆえに楽しみにしていたが思っていた内容と違う感じが否めず、そこまで楽しめなかった。本著のターゲットは格闘技ファンというより、もっとライト層向け、さらにはカルチャーから何か自己啓発的なものを抽出したい衆向けなんだろう。幻冬舎からの発行で編集に箕輪厚介という時点で察する部分はあったにせよ悲しかった。
本人が直接書いたのではなくインタビューを書き起こしたものと思われる。Q&A式ではなく彼の一人称で自分の生い立ちや試合、最近の格闘技業界について書かれている。RIZIN参戦前の経歴は知らないことが多くオモシロかったし、さらに試合時の心境などはRIZIN Confessionsを見ているようで興味深い内容が多かった。ただ読んで気づいたこととして、自伝より評伝の方が好きだなということ。主観である自伝の醍醐味として外部から見えない当人氏から知らない情報や感情などがあるが、本著ではその主観を使って彼の精神論が繰り返し登場する内容に辟易した。
格闘技と新自由主義の相性は抜群であり「やるやつこそが正義」というテーゼを掲げた上で彼の口から格闘技に対する精神的なアプローチを繰り返し引き出していた。当然彼の本心だとは思うものの、それは見せ方次第で良い風にも悪い風にも捉えられる。あくまで主観だが「ごちゃごちゃ考えずにjust do it」的な物言いが正直苦手だった。
彼は泰然自若であり本著内でも感情をコントロールすることによるパフォーマンスの向上の話が何度も出てくる。普段の試合前の煽りは少なくリング上で「最強」を誇示してくれるからこそ好きな格闘家だ。しかし本著内では後半にかけて他者、特に朝倉兄弟、那須川天心への言及が結構多くてガッカリした。先述のとおり彼は聞かれてるから答えているのだろうと推測できるものの、一人称の文体なので、まるで彼が自分から現状の格闘技について小言を言っているように見えてしまうのが本当にもったいない。そういったくだらない争いに巻き込まれたくないから自分でガチの実力派団体を旗揚げしているわけで、彼が最近の格闘技界隈の不良優遇や過剰なSNS煽りについて踏み込んで、こうやって残る活字でコメントする必要もなかったはず。読み手を煽りたい気持ちも理解できるけど、堀口恭司のキャラクターと一致していないから残念だった。とはいえ彼のことは引退までずっと応援していきたい。
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自分を行っては行けない方向に洗脳してしまっているし、悪い方向の思い込みをしてしまっているからだと思う。逆に楽しさを追求すると、練習方法に進化が生まれるから、効率良く強さを追い求めることにつながっていくのかもしれない。 ①何も考えない。目の前にあることに感情を入れず、機械的に淡々とこなす。②それでも考えたければ前向きに考える。絶対にネガティブな思い込みはしない。 答えは至極単純だから。本気か本気じゃないか。その中間は求めていない。迷ってどうのこうの、なんて絶対に思わない。 弱いと何も決められないけど、強いと最低限のことを決めることが出来る場合が多いからだ。 仮の話、「自分には才能がない」と考えた人がいたとして、それを自分が出来ない事の理由にしているのであれば、その考え自体が言い訳に過ぎないと思う。 ストレスで帯状疱疹が出てきたりもしたし なるべく自分が存在しているうちに周りの人に笑ってほしい
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自分の人生を生きる
シンプルに考えて、今に集中する
弱気になったときに読み返したい本
⭐︎感情を殺すように心がける
複雑に、ネガティブに考えない
試合でも感情ではなく、機械的にやったもん勝ち
怒りを持つと、その感情のスキをつかれることもある
⭐︎同じ人間がやっていることだから、価値をつけなくても、淡々とやっていれば正解に近づけるよ、上に行けるから心配する必要はないよ
⭐︎周りに叩かれるからってビビりすぎてどうするの?
チャレンジに失敗したら叩かれる?
そんな声、ほっておけばいいじゃん
足を引っ張りたい人は腐るほどいるけど、成功するのはほんのひと握り
だったらお前はどっちになりたいの?
そんなどうしようもない人たちのことを考えてもしょうがない