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競馬会で華々しく走った馬たちは、引退したら何処へ?
引退馬たちのその後を、関わる人々、引退馬たちの姿、
そして抱える様々な問題を捉えながら巡る、ノンフィクション。
・カラー口絵2ページ ・はじめに
第1章 突然だが、馬主になった 第2章 馬と生きる新しい仕組み
第3章 知られざるリトレーニングの世界
第4章 馬と暮らした日本人 第5章 ある地方馬主のリアルと挑戦
第6章 ホースセラピーの力 第7章 旅して食べて馬を応援
第8章 社会が変わる交差点
・おわりに 主要参考文献有り。
2019~2023年の約4年間の、引退競走馬を巡る世界への記録です。
2~3歳での引退もあるが、寿命は30年以上。
アスリートになるために幼少から特別な訓練を受けてきた
競走馬たちが、乗馬クラブや観光牧場、セラピーホースとして
医療・福祉施設等に迎え入れられ、セカンドキャリアに
つくためには、リトレーリングが必要になる。
TCCセラピーパークの存在。栗東トレセンの調教師の挑戦。
岡山乗馬倶楽部の代表とリトレーリングを行う人々、
住宅地で馬と暮らす人の試み。馬事学院のカリキュラムと
セリで売れ残ったサラブレッドのリトレーリング。
肥育場の馬に新たな馬生を用意する地方馬主の努力。
再びTCCでのホースセラピーの仕事をする馬と再会。
ホースセラピーの研究者である東京農大の教授からの話。
引退競走馬の養老牧場をつくる「奥能登・馬プロジェクト」
引退競走馬と農業を繋げる馬厩肥でのマッシュルーム栽培。
<ウマ娘>からの引退馬への支援の拡がり。
そしてJRAの変化。
実際のところ知らなかった世界だったので、驚きの連続。
馬って繊細な生き物なんだなぁと、しみじみと感じました。
でも、リトレーニングしてセカンドキャリアに繋げる人々の
行動と努力の熱さにも感動しました。
かつて引退後が行方不明だったことを考えれば、
課題はあれど、大いなる変化であり、進展だと思います。
引退競走馬の穏かな姿は癒しだなぁ。会ってみたくなりました。
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<目次>
第1章 突然だが、馬主になった
第2章 馬と生きる新しい仕組み
第3章 知られざるリトレーニングの世界
第4章 馬と暮らした日本人
第5章 ある地方馬主のリアルと挑戦
第6章 ホースセラピーの力
第7章 旅して食べて馬を応援
第8章 社会が変わる交差点
<目次>
最近、テレビで競馬を見ることが増えた。決して賭けたりするわけでなく、走る馬が美しいことと、走っている最中の馬はなにを考えているのかを考えたりしているたからだ。この本で、そんなことの一端が知れたらと思ったが、それ以上の成果があった。著者は、動物系のノンフィクションを多く書いている人。前回は『平成犬バカ編集部』を読んだ。動物への優しい視点がよい。今回は、その競走馬のセカンドキャリア(引退後の世界)を追いかけた。有名な競走馬も「安楽死」の話をよく聞く。勝てない馬は引退後に屠殺されることも多いと聞いた。JRAなどが広報しないため、知らない人が多いのだ。この本に出てくる人たちは、そうさせずに、馬の余生(大体20~30歳まで生きるらしい)を幸せに過ごさせる努力をしているのだ。その振り幅は大きいが、近年アニマルセラピーの観点が広まり、競馬については、ゲームアプリ”馬娘”のおかげもあり、理解が深まっているようだ。馬は感性豊かで、人との共生も普通らしい。ただ体が大きい分、気をつけないと人に危害を加えてしまうわけだ。詳細は触れないが、もっと日常に馬がいる生活(江戸時代までは普通だった)が広がればいい。
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「犬部!」以来、出ると読んでいる片野ゆかさんの新作。今回は、動物好きの著者でもこれまでほとんど縁がなかったという馬について。いつも通り、いやいつも以上に、へぇ~知らなかったなあということがたくさんあって興味深かった。
そもそも捕食動物である犬や猫と違って、馬は被食動物なのだということからして、言われてみれば確かに!と目が開かれる。だから基本的に臆病なのだ。体が大きいからそういうイメージがなかった。そうなのか、ということが次々と出てくる
・背中に人間が乗れる動物はごくわずかで、馬、象、ラクダくらい。
・前足近くに乗れるのは馬だけ。だからあまり揺れず乗り心地がいい。
・日本は世界一馬券が買われている国。公営も珍しい。
・レースの賞金(5着まで)は8割が馬主、残り2割の半分が調教師に渡される。調教師が重要。
・日本で「生産」される馬のほとんどはサラブレッドで、年間数千頭に及び、競走馬として活躍するのはその一部。
・競走馬の引退後は、多くが所在不明。
・公営競馬の(莫大な)収益は、畜産振興などに当てられ、欠かせない財源となっている。
馬って誰もが知ってはいるが、身近ではない。競馬についても、近年そのイメージが変わってきているとはいえ、ギャンブルのネガティブな印象はぬぐえない。大体サラブレッド自体、生き物として不自然じゃないかという感覚はわたしも持っていた。そういったところにも十分目を行き届かせつつ、丁寧な取材が積み重ねられていて、具体的で実感を伴ったものになっていると思う。
かつては、引退競走馬については業界内で口にすることもタブーだったそうだ。近年その状況が大きく変わっていこうとしていて、まさに取材をする過程でダイナミックな動きがあり、そのことへの著者の驚きと嬉しさがストレートに伝わってくる。「犬部!」などの他の著作でもそうだが、片野ゆかさんの書かれるものには一本芯が通っていて、それは行動する人間への信頼だ。
「社会問題を考える際、その課題があまりに深刻すぎたり大きすぎたりすると無力感におそわれ、個人的に行動することは無意味と感じてしまう人は少なくない」
「だが社会問題が世間で注目され、改善へ向かうムーブメントに至った実例に目を向ければ、その原点には今できることを考え、行動した人がかならず存在している。同調圧力の強い社会では、こうした行動や発言を疎ましく思う人もいるが、それでも活動を継続させることで多くの賛同者を集め、それが世論や社会を動かす力になった例は数え切れない」
本当にそうだと思う。本書には、馬が好きで、行き場をなくした馬たちに何とか安息の地を与えたいと奮闘する人たちが出てくる。目の前の馬だけでも救いたいという必死の思いが、やがて事態を動かす力になっていくさまには、心を動かされるものがある。励まされる一冊だった。
・表紙の馬は著者が一口馬主になっているラッキーハンター。すごーくいい表情。
・著者の「馬ってかわいい!」という気持ちがあふれていて、そこも読みどころ。
・片野さんは犬好きで、馬と犬に共通点を感じている。どっちもカシコイ系。わたしはどっちかっていうと、コイツは何を考えてるのかいやたぶん何も考えてないだろタイプの牛や猫が好き。(猫好きの反論可)
・よく思うのだが、こと動物に関する議論が、しばしば感情的でヒステリックな応酬になってしまうのはなぜなのか。
・とか言いつつ、自分も実は、一部の人だとはわかっているけれど、みんなが動物(特に犬)好きだとは限らないということを理解しない人たちのせいで、犬好き一般に警戒心があり苦手にしている。
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近くに乗馬クラブがあって、いつもぼけ〜っと見ていましたが、この様な世界に居たんですね。
競馬ファンの皆さんにも、是非読んで欲しいです。
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競走馬を引退したサラブレッドたちのその後をサポートする様々な取り組みについて、丁寧な取材で描き出していて、良い本だったと思う。
引退後、種牡馬になれるのは5%以下、繁殖牝馬は3割程度と推測されるが、それ以外の馬は行き先不明とされている。引退した競争馬について語ることはタブー視されていると本書で何度か書かれているが、そのタブーの中身は正面切っては描かれていない。少しだけ書かれているか、現在それに関わる人々もいて、大っぴらにはしにくい様子が伝わってくる。競走馬は経済動物なので、まあ察してください、ということか。(個人的な興味はこっちだったので、もう少しページを割いてもらいたかったが。)
本書のメインは、引退馬のセカンドキャリアとして、一般的な乗馬馬になるためのリトレーニングの様子や、ホースセラピーやマッシュルーム栽培の堆肥づくりなど、新しい取り組みを紹介するパート。馬に関わる人々の馬愛が伝わってくる。
ただ、毎年6,000頭の競走馬が引退している状況で、本書で紹介される取り組みがもっと広がったとしても、それだけのキャパが出来るとは到底思えない。ただ、現状を少しずつでも変えようとする関係者の努力には、それなりの意義があるのではなかろうか。
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年間7000頭がデビューして6000頭が引退するサラブレットだが、引退馬の行き先のほとんどは不明だという。
引退後のサラブレットが安心して暮らせる場をつくろうと奔走する人たちを取材したのが本書。
また、ホースセラピーによって馬が人に与える効果にも触れていて、その部分がもっと社会に認知されてほしいと思うようになった。