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英国の事務弁護士ケイト・モーガン初の著書。
かの地における古来から現代までの正しい〈裁き〉を巡る考察。
英国の法律では人間を殺害する行為全般を
「殺人(homicide)」と呼び、
計画的犯意のある殺人を「謀殺(murder)」、
計画的犯意のない殺人を「故殺(manslaughter)」
というカテゴリーに分ける(日本でも旧刑法では
このふたつに分類されていた)。
これに加え、下位分類として交通事故による死や
法人による殺人があり、
いずれの事例にも容赦なく切り込んでいく(p.395 訳者あとがき)
■イントロダクション――汝、殺すなかれ
犯罪の話題と切り離すことが出来ない刑罰の問題。
■第一章――決闘場
18世紀英国の裁判において
謀殺と故殺の罪を区別する初期の試みがなされた。
■第二章――悪の狂気
英国では18~19世紀にベスレム王立病院や、
それに類する施設が、
異常な状況で他者の命を奪った殺人者の受け入れ先になった。
■第三章――自治領の外へ
1884年9月に発覚した、遭難した帆船ミニョネット号の乗組員が
仲間の一人を殺害して食糧とし、生還した事件。
■第四章――まかせてください、医者ではないので
両大戦間の十年余りのうちに、
裁判所の広範な介入によって
英国の殺人法を取り巻く状況が激変した。
■第五章――収穫逓減とキャピタル・ゲイン
1955年の復活祭の日の夜、タヴァーンの傍の舗道で
交際相手を射殺し、後に絞首刑に処された
ルース・エリス。
■第六章――HIRAETH(ヒーライス)
1966年、南ウェールズのアバヴァン(アベルヴァン村)で起きた、
炭坑近くの盛り土が長雨の影響で崩落し、
麓の小学校を呑み込んだ事件。
■第七章――鏡に口紅
冤罪の問題、あるいは
量刑には被害者による“挑発の蓄積”と
加害者の精神状態が考慮されるべきだと
考えられるようになったこと。
■第八章――法人
故人を死に至らしめたのが特定の人物ではない死亡事故について、
英国で法人が裁きの対象となるまでの道のり
→法人故殺法の成立は2007年(!)。
■第九章――謀殺:手引き
英国の法曹界において謀殺と認識される事象と現実とのズレ,
限定責任能力と被害者による加害者への挑発行為の新しい定義,
法人故殺罪の適用,
あるいは母親による嬰児殺しを取り巻く法律や
危険な自転車運転致死罪導入の是非について。
※後でもっと詳しいことをブログに綴る予定。
https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/