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音楽ミステリーだけではなかった。
挫折や目標、やりたい音楽と向き合う人たちの事や、関わっている人間の心理描写が色々と考えさせられる。
四重奏の世界にのめり込みました。
面白かった。
作中に出てくるクラシックを聴きながら読むと
この事か。と理解が深まる気がしました。
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音楽が好きでよく聴くけど、「音楽とは何か」と問われると、うまく答える自信がない。
大御所の演奏だから、人気のある曲だから…確かにそんな先入観に影響を受けながら、聴いてしまっているところもあるかも。
「錯覚」を利用して演奏する鵜崎は、あまりに極端過ぎて怖いけれど、やろうとしていることはわかるなぁという部分もあった。
鵜崎の主張をずっと聞いていると、人間不信になりそう。
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音楽の概念はもちろんのこと、人間関係のあらゆる場面を疑ってかからなくてはいけないのではないかと思わされる。これまで漠然と抱いていた思いが、もしかすると全て錯覚なのではないか、知っていると思っていたことの本質を実は勝手に解釈しているだけだったのではないかと、自分というものの危うさまでも感じてしまいそうになる。深みに嵌まると危険かもしれない。
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2023年。
横溝正史大賞を過去受賞している作家。なんで読もうと思ったか、音楽ミステリぽかったから。
ミステリではないな。音楽で食べていくのは大変だな('_') マンガ喫茶も大変だな。人の心理を利用するとか異端児の方が気になったな。英紀にとって由佳とのことは、友達以上恋人未満。だから放火による死に気になったのか、単に今後に迷ったのか。なんかいろいろ錯綜してたな。
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ミステリとしては小粒だけど、芸術や音楽への視点としては面白い。世の中の全ては錯覚と解釈によるもの。完全に否定できないからこそ最後の鵜崎の模倣に心を打たれるのかも。
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美しいチェロの音色が、物語の最終盤で“解釈合戦”で聞こえなくなった。残念。鵜崎「観客が求めているのは音楽ではなく音楽を聴いたという体験」「クラッシックは抽象性が高く曲も長い。そんな難解なものを人間は理解できない。理解できたつもりになっているだけだ」錯覚「他人の本心は判らない。人間は何も理解できない。膨大な先入観やバイアスによって解釈する」「錯覚を作り上げ、それを見ている」「音楽とはそうやって出来上がった謎の構造物にすぎない」逸木さんの深い洞察に共感するも、理屈抜きでリラックスして音楽楽しむもあり。
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煌びやかな音楽を奏でる芸術家たちの厳しい現実と卑しさ… チェロに向き合う天才と凡才の物語 #四重奏
■あらすじ
主人公である若き青年はチェリスト、実力はあったがオーケストラの正会員ではなく生活ができていなかった。ある日彼は、チェロを自由奔放に演奏する女性に出会い、すっかり魅了されてしまう。しかし彼女は、本人のスタイルとは合わない楽団に入団し、その後彼を離れていってしまったのだ。数年後、彼女は自宅の火事で亡くなってしまい…
■きっと読みたくなるレビュー
芸術で食べていくのは、ほんと難しいですよね。アウトプットされるものは華やかなのに、何故生み出している人間はこれほどに薄暗い生活をしなければいけないのか。音楽家たちの厳しい現実と醜態さがひしひしと伝わってきました。
生きる道を思い悩むチェリストの目線で物語が進んでいく。自分を信じてきた道を進んでよいか分からなくなる。周りがやたら優れて見え、いつも卑屈な態度になってしまう。毎日が不安で不安で、ずっと予備校生みたいな状態。私も若い時分はうまくいかないことが多かったので、わかるなぁ~彼の気持ち。
凡才には凡才の、天才には天才の、鬼才には鬼才の価値観と判断基準がある。本作は様々な立場で音楽を刻んでいきますが、彼らの中にあるパワーと葛藤と苦しみがリアルに伝わってくるのです。
また本作の謎解きも、物語の芯を食っていて胸に刺さりました。人生は自分が望んだとおりにはならず、結果、美しくはならないもんですよね…
■きっと共感できる書評
私は読書が大好きで、自身への記録の為にレビューを書き始めました。せっかく書くなら、たくさんの人の目に触れてほしいし、その人にとって役に立つものにできればと思っています。レビューを読む人はもちろん、作家先生や出版社の皆さんに敬意をはらうことを忘れないよう、自分なりに魅力や強みを書いているつもりです。
しかしこれが思った以上に難しい。書いてある事実をシンプルにまとめるだけであれば比較的簡単なんですが、作品から伝わるものを自分に取り込んで解釈していくのが難しい。そして作品が読みたくなるように魅力に伝えるには、さらに難易度があがります。国語のテストではないので正解は存在しませんし、読む人によって作品の好き嫌いもある。
正直、書いてても報われることは少なく、経済的なメリットがあるわけではない。作品によってはレビューを書くのに手間と時間がかかってしまうこともある。そんな想いで書いているレビューも、読んでいる人には伝わらないかもしれない。それでも書き続けるのは、やっぱり本が好きだからだと思う。
別に人と感想や評価が違っててもいいし、作家先生の伝えたいことや狙いとずれていてもかまわない。これからも自分なりに、作品たちに向き合っていきたいです。
長くなりましたが、そんなことを考えさせられた作品でした。
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異端の楽団に入った知り合いの女性が死んだ。死の謎を解こうとまだプロになりきれていないチェリストが挑む。
ミステリーとしては微妙。しかし音楽とは何かを大胆に解釈する様は最高。所詮この世は錯覚とバイアスで成り立ってるだけなのかも
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本の雑誌3月号の新刊めったくたガイド(SF)を読み終えて、何の気なしに次頁をめくったら、推理小説のページに「音楽とは何か」を問う、逸木裕『四重奏』を推す!という見出しに釘付けとなった。いつきひろし?あの演歌の?ではない。「いつきゆう」とルビが振ってあった。そりゃそうだ、予備知識が無ければそう読むでしょう。約三段の解説を読み終えたら、この本を直ぐに手に入れたいという衝動にかられた。これは本当に推理小説なのか?内容が甘利にも次元の高い音楽の話をしている。今まで関わってきた私と音楽との関係を見直すきっかけになりそうなテーマに手が震えた。よほどクラッシック界の実情を御存じなのか?それとも緻密な取材に寄るものなのか?この逸木裕のバックグラウンドが判らないので、もうどうしてよいか判らない。書評だけでこれだけ興奮すると、本を読み終わったら気絶しているかもしれない。因みに『四重奏』とは弦楽四重奏ではなく、チェロ四重奏。
読む前に紙面を使い過ぎた。さて、感想だが、考えが纏まらない。いろいろなことをいろいろ考えさせられる内容だった。本作品の根幹を成すテーマは「音楽とは何か?」、「模倣」か「オリジナリティー」か?
まずは「模倣」から考えよう。実は模倣は非常に高度な技術を要する。上手い人、下手な人、音量の小さい人、汚い音を出す人、テンポが一定しない人等々、それらの人の多様な音を再現するには、自分の音と相手の音の差をなくすこと。お笑いものまねタレントが本人と全く同じ動き、全く同じ声を出し、体形・表情・衣装を限りなく同じにするには涙ぐましい努力が必要だ。しかも一人だけではない、100人以上のものまねができる人もいる。世の中には特徴を掴む能力に長けたがいる。鵜崎が求めるのはそれに近いレベルだ。私も学生時代から楽器を演奏しているが、まずは有名奏者のまねをする所から入る。ベルリンフィルの首席と同じ音が出せるよう何日も徹夜で技術を磨いた。頭の中で一流奏者の響きが常に流れていればゴールは近い。
そして、次の段階が「オリジナリティー」だ。実際は、本書で書かれているように「模倣」と「オリジナリティー」は対立するのもではない。「模倣」の次に「オリジナリティー」の追及が来るのだ。様々な演奏の模倣ができるようになると、模倣した複数の演奏から取捨選択、良いとこ取りをする欲が出てくる。どの演奏にこの演奏をこの程度加えると言った香水調合の様な検討を行い自分自身特有のスタイルを確立する。これがオリジナリティーの追求だ。
そして最終段階が「アンサンブル」だ。勿論一人ではアンサンブルは成り立たない。二人以上人が集まって演奏すれば、ここからアンサンブル力が必要となり、時間と人をかけてアンサンブル力を磨く必要が出てくる。鵜崎の四重奏団は模倣とアンサンブルに特化し、オリジナリティーは徹底的に排除するといった歪な合奏に位置づけられる。プロアマ問わずこの3つができていれば音楽を楽しむ権利を得られる訳だ。鵜崎、可哀そうな奴。
本筋とは離れるが、ブルックナーの交響曲第9番を指揮する巨匠神山多喜司は、明らかに朝比奈隆のパロディだ。この皮肉は良く分かる。鵜崎・坂下は巨匠の化けの皮を心の中���剝いだだけではなく、神山(朝比奈)の狂信者に対して冷たい戦闘行為を繰り広げているのだ。テンポが遅ければ遅い程良いのであれば、チェリビダッケの演奏を死ぬまで聴けばよい。
要は、この作品に出てくる中途半端な登場人物達には「模倣」、「オリジナリティー」、「アンサンブル力」の3つのうち、いずれかが欠けている。例え、3つ全部を手にしたとしても、その時に人生の破滅、音楽の破滅・熱的死が待ち受けているという皮肉。
もっと掘り下げて考えたいが、文字にするとマイナス思考に陥ってしまうので、この辺で終わりにしたい。本作品はジャンルが推理小説ということだが、最後のどんでん返しがショボすぎて盛り上がらないまま終わってしまった。中山七里レベルまでは求めないが、華麗なネタばらしを次回は期待したい。最後に私としては、本作品は音楽小説としては最高峰に位置づけている。
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ミステリー(特に死が絡むもの)は暗くてえぐいものが好きなので、その点でいくと物足りなさはあった。でもそれを凌駕するほどの『解釈』に圧倒されてしまった。音楽とは何か、演奏家の演奏はなんなのか、聴く側は一体何を鑑賞しているのか、という問いかけがとても冷たくて、かつてクラシック音楽に携わっていた身からすると、当時自分の演奏にああでもないこうでもないと言ったり言われたりしていたことに果たしてなんの意味があったのだろうか、という気持ちにさせられた。
そしてこれは音楽に限った話ではないと思う。この世の全ての事象、表現する側とそれを受け取る側がいる限り付き纏う。私たちは世界の何を見ているのだろう。全くの私情や先入観なしに世界を見ることはできないのではないだろうか。
読みながらそういったことを考えていると、小説ではなくもはやデカルトについての哲学書を読んでいるような感覚に陥った。
こんな風に重厚な読後感を残せるのは、楽器が他でもないチェロだったから、というのもあると思う。
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チェリストの黛由佳が自宅で放火事件に巻き込まれて死んだ。かつて音大時代に由佳の自由奔放な演奏に魅了され、彼女への思いを秘めていたチェリストの坂下英紀は、火神の異名をもつ孤高のチェリスト鵜崎顕に傾倒し、「鵜崎四重奏団」で活動していた彼女の突然の死にショックを受ける。演奏家としての自分の才能に自信をなくしている英紀にとって、音楽は求めれば求めるほど遠ざかっていく世界だ。同じように苦しんでいた由佳の死に不審を感じた英紀は、「鵜崎四重奏団」のオーディションを受け、クラシックの演奏に独特の解釈を持つ鵜崎に近づき、由佳の死の真相を知ろうとする。音楽に携わる人間たちの夢と才能と挫折、演奏家たちの秘密に迫る、長編ミステリー。
事件の謎を解くというよりは、主人公を含む音楽の道に志そうとする人達の葛藤や信念、こだわりに重視していて、音楽に対する印象が変わったかなと思いました。
なかなか演奏家として目がでなく、バイトのかたわら、演奏団のサポート役ばかり。そんな時、由佳の死をきっかけに由佳が所属していた演奏団に潜入しようとオーディションを受けることになります。
途中から運が巡ってきた⁉と思うくらい、トントン拍子感はあったのですが、苦悩する英紀が何かに取りつかれたように真相へ知ろうとする展開は、気になるばかりでした。
もちろん、由佳の死の真相もわかります。由佳のこれまでの行動を深堀りしていくことで、知らなかった真相が次々と明らかになります。死の真相というよりは、これまでの人生における様々な「なぜ?」が浮き彫りになり、一つ一つ潰していくような展開だったので、どこか遠回り感がありました。
また、「音楽」における見方も考えさせられました。良い楽器を使っているから。知っている演奏家だから上手いでしょう。といった先入観によって、音楽を本当に味わっているのか?読むにつれて、段々と色んな迷いが生じました。
また、作曲家が思い描いていた構想を、果たして音楽家達が解釈することができるのか?人によって、解釈はさまざまであり、どれが正解なのかわかりません。
作品内では、色んな作曲家によるクラシック曲が紹介されていますが、指導する人によって解釈が違ってくることもあり、よりクラシックが難しいなと思ってしまいました。
自分ではこうと思っていても、相手は別の答えがあり、はたまた曲を作った人は、もういないので、どんな本当の解釈かもわかりません。そういった中で、こうでしょうと生きている人たちが唱えると本当に合っているのか疑問を感じる時もあります。
なかなか音楽って難しいなと改めて思ってしまいました。
真相から見えてくる音楽のこだわりに、音楽の奥深さを感じた作品でした。
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〈火神〉の異名を持つ孤高の音楽家・鵜崎顕。彼の主催する鵜崎四重奏団で、団員の黛由佳が亡くなったため欠員補充のオーディションが開かれる。学生時代に彼女と親しかった坂下英紀は彼女の死に疑念を抱き、オーディションを受けることでその真相に迫ろうとするが……。
ミステリーだと思って読むと肩透かしを食らう。本作で描かれているのはクラシック音楽や演奏を含めた“芸術”の本質だ。
登場人物の1人が言う。「人間は、何も判らない」。この言葉が繰り返され、すべては〈錯覚〉だとされる。
深い。そしておもしろい。年間ベスト入り確定の1冊。
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芸術という世界では才能が何においても重要で、努力なんて天賦の才の前では霞んでしまうのかな。そして財力が必要な分野では、生まれ落ちたときにその未来がほとんど決まっているという儚くも切ない現実。縋りついて諦めきれなくて、もがき苦しむ。その葛藤が苦しくなる。
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自由闊達な演奏をしていた女性チェリストが火事で死亡した。しかしその死に方に不審を抱いた彼女の友人は、彼女に何が起こったのかを知ろうとする。音楽家たちの苦悩を描いたミステリです。
自分には音楽の才能なんてなくて良かったなあ、と思い、しかし同時に音楽に生きられる人を少し羨ましくも思いました。どちらかといえばここに登場する人たちの生き方は苦しいとしか思えないのですが、しかし他に生き方を見出せないくらいに音楽に囚われてしまうというのは、一種の幸福でもあるのかなあ、と。真摯に音楽に向き合うからこそ、「錯覚」と認識した時にそこまで苦しく思えてしまうのでしょうか。
英紀の変貌が恐ろしくて、はらはらさせられました。自分の音楽を見失い、それでも音楽の道を捨てられない彼がいったいどのような道に踏み込んでしまうのか。目の離せない展開でした。
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音楽を受け取る側です。感動や解釈は 演者のテクニックや模倣や演技力によるもので錯覚だ というチェリストの言葉 「音楽ミステリー」として読み始めた身には辛いものがありました。主人公が 葛藤の末 光を見出だすことが出来て良かったです。