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この本は、本屋で手にして買いました。紫式部と藤原道長の関係を知りたかったからです。
大河ドラマがきっかけで興味を持ちました。類似のタイトルの本が多くあるようですが、それらの中からこの本を選んだ、ということはありません。
本書は文学者ではなく、年配の歴史学者によって書かれています。歴史の風景、社会や人間の生き様としての見方が安定していて記述されています。いわゆる「伝説」や「偉人伝」的な逸話で何が何だかわかるなるような、文学者的な書き方ではないので、そこは本書で良かったと思います。一方で、語りつくした内容を改めて書きました、という感じで、新しい見方を提示したり、世の中に価値を問うような熱いものはありませんでした。それは否定的な意味ではありません。
彼ら、彼女らの話は遠い遠い昔のことですが、やはり何故興味を持ってしまうのか、自分でも分かりません。日本人だからでしょうか?
摂関政治の後、平清盛を得て鎌倉幕府ができるのは歴史で覚えていますが、藤原定家、鴨長明、源実朝が同時代人だったことは記憶に残っていますが、これらと紫式部らの時代との間がまだ自分の中で埋まっていないので、いろいろ読んでみたいと思います。
藤原道長、紫式部の人物像は朧気にしか分かりませんでしたが、時代の雰囲気を感じ取れた気がします。
藤原道長が三男だったことや、紫式部と面識があったことなど知りませんでした。貴族としての道理、仁義、在り方などの解説は、研究の成果だと思います。そういうものか、程度にしか感じませんでしたが、一つの適切な解釈のように感じました。そのような社会制約の中での人間の生き様が、今の人の生き様を投影させる対象として興味が持たれるのかもしれません。
また、ほうと思ったのは、地方の話です。閉鎖的である貴族社会でも、「地頭」などで父や夫が地方の官僚になると、それについて娘や妻が地方にいき、それが記述として残っているという話です。本当に漠としたイメージしかない時代と場所で、想像が広がる気がしました。
一時の栄華、当人にはまじめで死活問題だったものも、時が過ぎてしまえば過去の物語なんだなぁーという、無常観に浸っっています。源氏物語、大鏡、などいつか読んでみたいなーと思いました。