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毎年、年末が近づくにつれ、不思議と時代小説や歴史小説を読みたくなります。そして、ちょうどそんなとき、リメイク映画「椿三十郎」のテレビCMの、織田裕二の男前な姿に惚れ惚れし、内容もおもしろそうだし、原作を読んでみたいと強く思ったのでした。
もう、ほんとに、良かったです。つくづく良かった。この一言に尽きます。
山本周五郎の本は、『さぶ』を持っていますが未読で、読んだのはこれが初めて。今までどうして読まなかったんだろう、なんてもったいないことをしてきたのかと悔しい思いでいっぱいです。
巻末の編者解説を読んでびっくりしました。なにしろ山本周五郎は<川端康成や梶井基次郎よりやや若く、太宰治や中島敦よりは年長、小林多喜二と同い年>だというんですから。1903年(明治36年)生まれということではそういうことになるんでしょうが、そんな実感まるでなかった。普通に「時代小説の名手」くらいの認識しかありませんでしたけど、こんな文豪たちと同時代人だったんですね。
さて、本書は時代小説の短篇集です。表題作「日日平安」、「しゅるしゅる」、「鶴は帰りぬ」、「糸車」、「『こいそ』と『竹四郎』」、「あすなろう」の6篇。映画「椿三十郎」の原作は表題作です。
どれもほんっとに良いんですよ。ユーモアがあってほほえましく、切なくて、なんだかうれしくなるんです。「糸車」では泣きました。
日本語がゆったりしていて、すごく読みやすいし、この本を開くだけで気持ちが落ち着くんですよ。そして何より上品。内容はさることながら、日本語がとっても上品。読んでいて気持ちが良いんです。
ああもう、本当にどうして今まで読んでこなかったんだろう。自分にあきれています。これから少しずつ読んでいこうと思います。
ちなみに、新潮文庫からも同名の『日日平安』という文庫が出ています。このハルキ文庫とは当然編者が違うので収録されている短篇が違います。
今回ハルキ文庫の方を読んだのは、こっちが映画「椿三十郎」の「原作本」だったから。角川映画なのでハルキ文庫の方が原作とされているんですね(短篇「日日平安」に限って言えばどっちで読んでも同じですけど)。他の短篇も読みたいので、新潮文庫の方も読みます!
読了日:2007年12月8日(土)
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もっとも愛するさむらいは牧文四郎(蝉しぐれ)だったんだが、これ読んでいて菅田平野と本堂竹四郎にもぐらっときた。
竹四郎…なにこの昔の少女漫画の憧れのあの人みたいな真っ直ぐさとかっこよさは…
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「鶴は帰りぬ」も好きだが「しゅるしゅる」が直球ど真ん中。
あぁ粋だ。時代が変わっても、色褪せない物語。時代小説が余計好きになりつつあります。
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「日日平安」「しゅるしゅる」「鶴は帰りぬ」「糸車」「『こいそ』と『竹四郎』」「あすなろう」の6編。
どの作品も心憎い。こんな小粋な話を書く人だったんだなあと改めて感じ入っていたら、解説で、短編を読んでああ本当はこんな作家だったのだと感動するはずとあった。まさしく。
会話やプロットの展開に小気味いいリズムがあり、とても臨場感がある。著者の作品が多く映像化されているというのも納得な話だ。
「日日平安」は実は「椿三十郎」の原作なのだが、椿云々なる人物名は全く出てこないのにちょっとびっくり。
「鶴は帰りぬ」「しゅるしゅる」がよかった。
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山本周五郎の短篇小説集『日日平安―青春時代小説』を読みました。
山本周五郎の作品は、8月に読んだ『つゆのひぬま』以来ですね。
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お家騒動に遭遇したのを幸いに、知恵を絞り尽くして食と職にありつこうとする主人公の悲哀を軽妙に描き、映画「椿三十郎」の原作にもなった「日日平安」をはじめ、男勝りの江戸のキャリアウーマンが登場する「しゅるしゅる」、若いふたりの不器用な恋が美しい「鶴は帰りぬ」など、若者たちを主人公に据えた時代小説全六篇を収録。
山本周五郎ならではの品のいいユーモアに溢れ、誇り高い日本人の姿が浮かびあがるオリジナル名作短篇集。
(編/解説・竹添敦子)
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山本周五郎の時代小説から、青春小説を集めたオリジナルの短篇集で、1944年(昭和19年)から1960年(昭和35年)に発表された作品6篇が収録されています。
■日日平安
■しゅるしゅる
■鶴は帰りぬ
■糸車
■「こいそ」と「竹四郎」
■あすなろう
■編者解説 竹添敦子
『糸車』と『あすなろう』の2篇は再読、残りの4篇は初めて読みましたが、好みの作風の作品が揃っていて愉しめましたね、、、
黒澤明監督の名作(森田芳光監督がリメイク)した痛快時代劇『椿三十郎』の原作で、主人公・菅田平野が何とか食と職にありつこうと無い知恵を絞る姿と、ことをなし得たときに感じる「恥ずかしさ」の描き方のバランスが良い『日日平安』、
男勝りの女性・尾上と、のらりくらりと女性陣の攻撃をかわす万之助が維持を張り合いつつも最後は結ばれ、タイトルが印象的な『しゅるしゅる』、
若い二人の不器用な恋が美しく、心をときめかせながら読み進めた『鶴は帰りぬ』、
裕福な生家ではなく、養女として育った貧しい家を選ぶ… 人の道を優先する、お高の凛とした姿勢が心を打つ『糸車』、
身分を恥じず、堂々と仕事を果たし、恋をも成就させる主人公・竹四郎、そして当初は反対したものの、自分の責任で夫を選らぶこいその二人に快哉を叫びたくなる『「こいそ」と「竹四郎」』、
悪に染まってしまった男二人を対比しながら、悪人の善意を描き出す『あすなろう』、
どの作品も良かったー 『あすなろう』は、以前読んだときよりも、再読の方が良く感じましたね… 次も山本周五郎の作品を読んでみようと思います。