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時代の趨勢を読み、織田陣営についた黒田官兵衛は、瞬く間に頭角を現した。秀吉の右腕として中国経略、九州遠征、小田原合戦など各地を転戦。官兵衛の働きなくして秀吉による全国統一もなかった。「稀代の軍師」とも呼ばれる武将の活躍の実態はいかなるものだったのか。関ヶ原合戦に際して天下を目指したとする説の真偽は――。茶の湯や連歌に優れ、キリスト教信仰を貫くなど、名将の知られざる側面にも光を当てる意欲的評伝。(2013年刊)
・はじめに
・第一章 黒田氏の系譜
・第二章 播磨の麒麟児
・第三章 信長時代の激闘
・第四章 豊臣政権確立期の活躍
・第五章 天下統一から海外遠征へ
・第六章 関ヶ原合戦と官兵衛の晩年
・終 章 「軍師」の実像
・あとがき
真面目な記述は好感がもてるが、広く浅いきらいがある。本書は世情イメージされる軍師の「官兵衛」ではなく実像に迫ろうとしているが、史料の制約もあり掘り下げ方は不足気味である。
黒田官兵衛の生涯を俯瞰して見ることが出来たのは良かった。
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軍師なんかでなく、天才でもなく、上司の命令に忠実な有能な執政官としての官兵衛が彼の実像ではないか。我々は後世に面白おかしく作られた逸話に惑わされているような気がする。
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大河ドラマの主役ということで読む。
何種類もある「勘兵衛」本でどれを読むか迷ったが、世間に定着してるイメージとほ違う、歴史上の実像をしっかり描いていそうな新書を選ぶ。
その意味では、的確な資料をもとに、逸話等は極力抑え、淡々とその事跡を追う姿勢には好感が持てたが、人物「勘兵衛」を知る上では、やはり味気ないかな。
時間があったら、司馬遼太郎らの作品も読んでみたい。
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黒田官兵衛を知りたい人の入門書です。
遺言状の「堪忍」と言う言葉が印象的でした。
連歌に通じていたのはしりませんでした。
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確かな史料をもとにしつつ、よく知られている逸話も紹介しながら、黒田官兵衛の足跡を辿った評伝。官兵衛の文化人としての側面、キリシタンとしての側面に焦点を当てているところに特色がある。本書では、官兵衛はいわゆる「軍師」という役割にはなかったと結論づけている。
大河ドラマ「軍師官兵衛」を見るにあたり、背景となる知識を得ることができた。軍師ではないにしても、官兵衛が文武両道の有能な武将であったことは確かだと感じた。秀吉に逆らってまで、キリシタンとしての姿勢を貫いき、また秀吉も官兵衛の功績ゆえ強くは罰しなかったというエピソードが印象的だった。また、本書で紹介されている史料で、豊臣政権の「内々の儀」が千利休が、「公儀の事」は豊臣秀長が取り仕切っていたという史料の存在はこれまで知らなかったので、興味深かった。
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大河ドラマと中津城で注目している黒田官兵衛の人生を知りたくて読んでみた。
思慮深い面があり、冷静さを持っているのはドラマで想像がつくけれど、晩年、また茶の湯や和歌にも造詣が深いところもあることを知り得た。
九州征伐で特に石垣原合戦は、興味深かった。
軍師と言うと策略にたけているイメージがどうしても優先してしまいがちだけど、戦上手と言うのが合っているように思えた。
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史料に基づく叙述で、史料で確認できない事跡はきちんと明記している点は好感が持てた。人によっては歯切れ悪い印象を与えてしまうかも知れない。江戸東京博物館の黒田官兵衛展をみた直後だったので、直接みた史料が紹介されていて興味深く読むことができた。
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黒田官兵衛は多面的な才覚や関心を持ち、信長・秀吉・家康の3つの天下人の時代の戦国武将として生きた人である。まさに参謀と言われた言葉が分かる一冊。
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悪辣・厚顔・驕慢な軍師という、黒田のイメージを払拭する一書。すなわち、キリシタンの面、あるいは茶の道に邁進したなどという文化人としての黒田官兵衛も描かれる。特に、黒田自身のキリシタン改宗と、秀吉・家康のキリシタン禁制下での彼の対応がなかなか興味深い。ただ、広く浅くの叙述のため、止むを得ないところもあるが、もう少し、先の点を深めて欲しかった。
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秀吉に仕えた希代の軍師、黒田官兵衛を信頼できる文献から歴史的に再構築を試みた評伝です。そこからは、知的な沈着冷静で誠実な人柄が浮かびあがってきます。
黒田官兵衛の実像は、次のようなものです。
■徹底したリアリスト
・天才的な戦上手、あわせて、兵站、築城、検地
・信長が中国攻略を始めた時にすでに信長に味方をしている
・中国大返し、秀吉に天下取りを進める、連絡上手、報告上手。
・関ケ原の2年前にすでに、家康と盟友関係にあった
■信念の人
・主君と仰いだ武将を裏切ったことはない(小寺、信長、秀吉、家康)
・身をもって敵を説得に行く(有岡城幽閉、小田原征伐、関ケ原の役での調略)
・毛利家との浅からぬ縁、秀吉の中国征伐、九州討伐、関ケ原前後。
最後まで毛利家を守りぬいた。
・側室をもつのが常だった世に、一人の女性と添い遂げる
・家族思い、部下思い、領民思い
■時代の中心をなした、一級の文化人
・小さいころから、書歌に通ずる
・茶の湯
・連歌
・キリシタン
・調停役、調整役
気になった言葉は次です。
・秀吉から、茶の湯を進められた時の言:これが茶の湯の一徳というものだ。もし茶室以外で密談をかわしたならば、人から疑いをかけられる。茶室で話せば嫌疑が生じることはない
・官兵衛の人生訓:事は思い通りに運ぶものではなく、辛抱が必要である
・後継者について、もし、器量がない場合、実子であっても不適格である。
・辞世の句
「おもひをく、言の葉はなくて、つゐに行く、道はまよはじ、なるにまかせて」
本書に登場する黒田官兵衛に関係する文献
・黒田家譜 ・信長公記 ・柴田退治記 ・天正記
・駒井日記(朝鮮出兵) ・毛利家文書 ・黒田家文書 等
目次は以下です。
第1章 黒田氏の系譜
1 黒田氏発祥の地
2 祖父重隆
3 父職隆
第2章 播磨の麒麟児
1 幼少期と黒田家周縁
2 官兵衛の成長
3 黒田家の総帥として
第3章 信長時代の激闘
1 信長に従う
2 秀吉に従う
3 幽囚となる
4 小寺から再び黒田へ
第4章 豊臣政権確立期の活躍
1 秀吉の天下取りを支える
2 四国遠征
3 九州遠征
4 豊前六郡の支配
5 茶の湯に目覚める
第5章 天下統一から海外遠征へ
1 小田原合戦
2 朝鮮出兵
3 官兵衛と茶の湯
4 官兵衛と連歌
第6章 関ケ原合戦と官兵衛の晩年
1 関ケ原合戦と九州
2 合戦後の官兵衛
終章 「軍師」の実像
1 文武両道の名将
2 その後の黒田家
あとがき
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相手をだますのではなく、誠実な交渉者として描く。目的のために手段を選ばない卑怯者ではない。黒田官兵衛の祖父は重隆は家伝来の目薬を販売し、それが売れて財をなした(14頁)。このため、官兵衛は「武士というより商人のような気分がなにより、身になじんでいた」と評する作品もある(葉室麟『風渡る』講談社、2008年、32頁)。官兵衛の柔軟な発想は民間感覚に基づくものであった。