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紙の本
空間的なもの、時間的なものに強いこたわりを持っているファンタジー作家・評論家による、最新評論集
2003/01/30 12:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:石堂藍 - この投稿者のレビュー一覧を見る
空間的なもの、時間的なものに強いこたわりを持っているファンタジー作家・評論家による、最新評論集である。
本書は、「家」「旅」「魔法」という三つのキイワードで括られている。そしてこの三つのキイワードの象徴するものや、それらに具わっている本質的なものが、登場人物たちの内面世界(時にはそれは無意識の世界であったりもする)と深く結びつけられているということが丁寧に論証されていく。私たちファンタジーの読者もまた、物語を通して、自分の内面と向きあうことになるのだということが、本書では繰り返し語られているのだと言えよう。
取り上げられている作品は、『指輪物語』『ゲド戦記』といったモダン・ファンタジーの古典的作品から、『危険な空間』『ハリー・ポッターと賢者の石』『レイチェルと滅びの呪文』といった近年の作品までと幅広い。さまざまな知見に満ちていて、どこから開いて読んでもおもしろいのだが、「家」を論じた章が、最も力が入っている。特に「台所のマリアさま」のように、いわゆるファンタジーではない作品を取り上げて、その象徴効果を語る「家屋の神話学」は、鮮やかな論理で貫かれていて、著者以外には書けないものだ。また、私が個人的に興味を引かれたのは、《ハリー・ポッター》をなぜ評価するのか、という点だった。ファンタジーを読み慣れた人からの批判に応える形で、この作品のファンタジーとしての魅力について語っている。その偏見のない眼差しにも感嘆させられた。
一人ひとりにとって、自分というものもまた謎である。ファンタジーの主人公たちに付き合ってゆくことは、自分自身の中に深く降りて行くことでもある。誤解を怖れずに言えば、井辻朱美もまた、自分という謎に向きあうために、こうしてファンタジーについて語り続けているのだろう。私はその営為そのものを美しいと思う。(bk1ブックナビゲーター:石堂藍/書評家)
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