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初出「婦人公論」(1991年3月号〜1994年2月号)、1993年単行本化、1996年文庫化。今回は巻末に座談会「物語の論理・〈性〉の論理」(三田村雅子・河添房江・松井健児・橋本治)を新たに収録した新版。
大河ドラマの「源氏物語」&紫式部ブームにのってか、28年ぶりの改版で装いも新たに店頭に並んだ、橋本治が「窯変源氏物語」(光源氏の一人称の語りによる現代語訳)をてがけるかたわらに「婦人公論」に連載していたらしい論考(エッセイ)。学生時代はちょっと手が届かない存在だったけれど、橋本治のよさもすごさもわかるようになった今なら読めそうだし、実際冒頭からおもしろい。これを機に「窯変源氏物語」にも手を伸ばしてみようか…
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大河ドラマ「光る君へ」の関連本としてなのか、本屋に目立つように置いてあった。
橋本さんのファンだけど、正直シンドイだろうなと覚悟する。橋本さんのネチネチしたモノローグにつき合うのは結構疲れる。勿論、ムチャクチャ面白いことも分かっている。
以下、自分の忘備録として箇条書きにする。
・雨夜の品定め。紫式部は自分の所属する階層の男をバカにして、光源氏に黙殺させている。紫式部の“復讐”。
・源氏物語の男たちには性的飢餓がない。性的目覚めの頃にあてがわれているから、ひりつくような身体欲求がない
・平安時代にモラルはない。女房達は主人の不幸の噂話を本人の前で口にする。家司は主人の為に働こうとしない。
・姫君達は基本なにもしない。父親が早くに亡くした末摘草は、たたぼんやり日を送るだけ。食べるものもあまりないから、女房達もただ寝そべっているだけ。
なにもしないことが美学の達成。
・源氏物語は「男の物語」であるより「女の物語」。夕顔が陰の主役。浮舟は女の嫉妬に殺されなかった夕顔、出世を拒んだ玉鬘。
光源氏死後の主役であるはずの薫への紫式部の糾弾が厳しい。
苦悩するばかりで恋をすることができない男。「理性的で物静かで、しかし“恋”という感情が理解できなくて、そこのところでは、“乱暴”と言いたいばかりの雑駁を平気で露呈してしまうエゴイスト」
こ、怖い。思わず、申し訳ありません。僕が全部悪いんですと謝りたくなってしまう。誰に謝っているんだと考えると更に怖くなくなるからやめるけど、橋本さんの筆致はグリグリ突き刺さってくる。
付録の座談会では、光源氏は宝塚の男役みたいなものとか、男でない少年時代に後宮で女性的な技能を身につけているなど、物語の中の同性愛への言及など白い話もある。
結構、お腹一杯だけど、まだ下巻があるんだよ。頑張ろう。
追記。
薫への糾弾で「その後の仁義なき桃尻娘」のホモの源ちゃんの失恋を思い出した。
打てる球を打つだけ。貪婪な草食動物。人の気持ちを見ようともしない。
橋本さんはこう言う奴が嫌いなんだな。紫式部も相手のことを慮れないバカは大嫌いだったんだろうな。
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「源氏物語」は紫式部の?復讐心?から始まった? 『窯変 源氏物語』の著者が天才女性作家・紫式部の思考に迫る。座談会「物語の論理・〈性〉の論理」前篇収録。