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18歳の理佐と8歳の律の姉妹が母親と婚約者に理不尽な扱いをされ、家を出る。
理佐が新たな場所で働く仕事の条件は蕎麦屋の給仕としゃべる鳥〈ネネ〉の世話だった。姉妹の40年を描く長編。
北澤平祐さんの表紙に惹かれて購入し、中にも挿絵があって嬉しい。
すごくすごく良かった。
長編なので読み切れるか心配だったが読みやすくてスルスル読めた。
2人の生活のスタートはおぼつかないが周りの人がとても良い人達で心配して親切にしてくれたおかげでなんとか立ち往かせていく。成長と共に新たな人々の関りもあり、自分の受けた親切を周りにも当たり前のように繋いでいく。その40年にはずっとネネがいて、この物語が終わってしまうのが寂しくて読み終わりたくないと思った。
ネネが可愛くて面白くって大好きになった。
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18歳の姉と8歳の妹が、母とその婚約者との生活をやめて、蕎麦屋の住み込み仕事のため移り住み、その土地で出会う人たちとの暮らし。
蕎麦屋は水車小屋で蕎麦を引いており、その水車小屋に住み蕎麦ひきの見張りをしているのが、ヨウムのネネだ。
親には恵まれなかった登場人物達だけど、行く先で出会う人たちの善意によって生かされ、人格も形成されていくのか。
自分が持っていないものを人に与えてもらい、それを今度は自分が誰かに手渡したいと願う妹の律。
登場人物みんな魅力的で、心があたたかくなった。
ネネがよくしゃべる愉快な鳥で、ヨウムの知能は人間の3歳くらいと言われてるらしい。
ネネの言葉の覚えっぷりは3歳を優に凌ぐものの、ネネの「永遠の子ども」らしさが、物語全体を優しくしてくれてる。
約40年間の物語。
津村さんの小説は短めのものが多いイメージだったけど、あとがきによれば、これは津村さんの一番長い小説だそうです。
出会いと別れがあり、単にすれ違うだけの人もいる。
滅多に会えなくなっても、故郷は待ってくれている。そんな優しいラストだった。
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●なぜ読んだか
「誰かに親切にしなきゃ、 人生は長く退屈なものですよ 」キャッチコピーに心をつかまれた。18歳と8歳の姉妹は40年間、どのような状況をどのような気持ちで過ごしたのだろう
#水車小屋のネネ
#津村記久子
23/3/2出版
#読書好きな人と繋がりたい
#読書
#本好き
#読みたい本
https://amzn.to/3ENQ6vQ
●読了感想
とてもよかった!「静かな波乱万丈」という言葉が頭に浮かぶ物語だった。状況は激しく変化してはいくが、その展開は淡々と。「打算なき親切の申し送り」が生み出したものに心を満たしてもらった。
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p.37 なんとなく、これからの自分と律は、ジュースを飲む機会があれば、必ず「いる?」と尋ねるような関係でもなくなるだろう、と言う予感があった。それは要するに、理佐が律を子供としてモテなすのではない、律を甘えかしすぎない、2人で無駄遣いはしないと言う関係になることへとつながってもいるようだった。
p.89 小学3年でも、友達が「いい人」か否かが重要なのはそうだよな、と澤は思う。性格の良い友達を見つけるのは、子供の人間性がまだむき出しなまま混ざり合っている小学校ではとても難しい。
理佐にとって律は、子供と言うよりも、自分が世話をしなければならない背丈が低くて、たまに突拍子もないことを知っているような変な人、と言うようなところがあるのだが、この時ばかりは子供らしいと思った。律が悩むようなことになれば、理佐もきっと悩むだろうし、できるだけ応援しなければ、と理佐は決めた。
p.104 理佐はうずきながら、むしろ選択肢があるのが自分の方であること、律に対して申し訳なく思った。そんな事は絶対にしないけど、自分は律を放り出そうと思えばできるのに対して、立はそういうことになったら、母親と婚約者の元に戻るしかない。難しい漢字が読めて、自分が見た鳥がヨウムであることをわかっても、それでも子供だと言うだけで、立は自由を制限され、保護を必要としている。
p.143 ネネのところに寄って、コーラススカイの録音テープを聞かせると、ネネは翼をくださいをいたく気に入って、早速ものまねを始めた。それを聞きながら、ネネは翼もあるじゃない、と律は指摘して、それから寛実が笑い出して、理佐も笑ってしまった。
p.145 「職場で使っていたものなのですが、ネネさんに必要なものだと、娘と律さんが話していたので」
p.169 「学校の意地悪な男子は、ものすごく貧乏を馬鹿にするからね。だから怖いのはわかる。でも私の読んでいる本に出てくる人は、貧乏な人が多い。私も例外じゃないのかもしれない」そういう連中に馬鹿にされない生活をしているからって、幸せだとは限らないし、馬鹿にする連中が幸せだとも思わない。
p.383 「誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて、退屈なものですよ」
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人は一人で生きているわけじゃない。誰もが誰かの手を借りて、誰かの優しさを受け取って生きている。
困っているときに親切に手を差し伸べてくれる人の、その優しさに甘えることのできる人は、幸せである。
だから、自分が受けた親切と優しさを、今度は誰かに差し伸べていく。そうやってつながっていくんだ。
優しさのバトンが繋がるその幸せを堪能しました。
18歳で親から自立して生きていくことは、自分の身だけであればそう難しい事ではない。けれど、そこに8歳の妹が付いてくる、となると並大抵の苦労ではない。自分自身がついこの間まで庇護される側だったのに、小学生の「保護者」としての役割が生まれてくるのだから。
だから、理佐と律が浪子さんと守さんと出会えたことは、この上ない幸運だったと思う。住むところがあり、まかないもあり、そして自分たちをちゃんと見守ってくれる大人がそばにいるということなのだから。
二人が初めて出会った「赤の他人」が彼らでよかった、と心から思う。
「とりの世話じゃっかん」という風変わりな求人。そこから始まる四十年に及ぶ二人の物語。
そば屋で使うそばを挽く石臼の監視をしているヨウムのネネの世話、ってなんじゃそれ、って思う仕事なんだけど、読んでいるうちに、自分もやりたいとすごくすごく思ってしまう。
ネネと一緒にニルヴァーナを聴いたり、墾田永年私財法!と叫んだりしたい。
二人が出会う大人たちが彼女たちに与えてくれる優しさは、いったいどこから生まれてくるのだろうか。
浪子も守も、杉子さんも、そして律の担任の藤沢先生も。
藤沢先生の「誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈なものですよ」という言葉は、その一つの答えなのかもしれないけれど、それぞれに、それぞれの思いがあって、なのだろう。
誰かに救われること、誰かを救うこと。その小さなつながりが大きな円になって広がっていく。
8歳だった律に、40年後あなたはとても幸せに微笑んでいるよ、と伝えたい。40年後のあなたの目にはあなたに優しさをくれた人と、あなたが優しさをあげた人と、そしてネネが映っているのだよ、と伝えたい。
読み終わった後もずっと心が幸せなままだ。
温かい優しさにそっと包み込まれた気持ちよさ。
自分も誰かにつなげられるかな、この幸せを誰かに伝えられたらいいな、と思いながらぼんやりネネのことを思っている。
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お母さんの恋人に虐待されて居場所がない…という暗い始まり方をしたけれど、周りの人々の温かさに守られてすくすく真っ直ぐに成長していく心温まるお話しでした。
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「つまらない住宅地~」の時にものすごいものを読んでしまったという感想だったのが、さらに更新された。
ネネや周りの人々と共に、山と川に抱かれて40年を生きている気持ちで、読み終わりたくないけれど、ページをめくる手が止まらない。
この数年、生き方について考えていたことに共感者がいた...というような静かな勇気を与えられた気持ち。
同じように感じた人がきっと多いと思うし、そんな世の中なら嬉しい。
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3ページ毎に泣いちゃうから外で読めなかった。
好きな言葉はたくさんあったけど、藤沢先生の「誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈なものですよ」は、人生のモットーにします。
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津村さんはシリアスととぼけたユーモアとをバランス良く組み合わせるのが上手いなと毎回感心する。
今回は子供よりも男を優先させる母親から離れ独立することを決めた18歳の理佐と8歳の律姉妹の40年に渡る物語。
序盤は彼女たちの過酷な状況に胸を痛めるのだが、理佐が独立するために見つけたのが「『鳥の世話じゃっかん』と書かれたそば屋の仕事」という、津村さんらしさが早速出てきてワクワクする。
その仕事の実態はと言えば、そば屋での給仕の仕事と、そば屋で使う蕎麦粉を水車を利用して挽いているのだが、挽き終わったそば粉の回収とそばの実の補給という蕎麦挽きの仕事、そして石臼が空挽きしないように見張ってくれる『鳥』(ネネという名のヨウム)の相手をすることとという『じゃっかん』変わったものもある仕事だった。
18歳という、私から見ればまだまだ子供の理佐が、8歳の妹・律の保護者となりながら生活も成り立たせていくという危うさ…理佐自身、度々『綱渡りのよう』と感じるギリギリの生活というシビアさが描かれる一方で、ネネがポコ・ハラムの『青い影』を上手に真似て歌うシーンやそば挽きがもうすぐ終わるところで『空っぽ!』と叫ぶシーンでにんまりとし、姉妹が受け取る遺産を狙って母親の婚約者が追いかけるシーンではハラハラする一方でネネの物真似が再び二人を救い、そば屋の女将・浪子さんや律の担任の藤沢先生や絵描きの杉子さんたちが二人を守ってくれ助けてくれたりとホッとしたりする。
自分は周囲の人たちの『良心』でできていると感じる律と理佐は、物語が進み成長していく中で、その『良心』を次の人にリレーしていく。
この物語に出てくる人たちは、姉妹を見守り助けてくれた人たちを含め、ほとんどが順風満帆ではない。
そば屋夫婦は遠い昔に息子を亡くしているし、杉子さんは訳は明かされないが故郷を離れ一人で暮らしている。
実務的で冷静な園子さんは離婚し実家に戻ったし、律の親友・寛実は父子家庭だ。
そんな彼らだからこそなのか、決して押しつけがましくも、姉妹が恐縮してしまうようなあからさまな親切ではなく、そっと寄り添うような、姉妹が有難く受け入れられてそのことで自立出来るような、そんな気遣いをしている(あからさまな親切は藤沢先生だった。彼女の意志は最後までブレていず、そこも感心した)。
そのリレーは理佐の夫となる聡、母親が不安定な研司と連なり、研司は更に別のリレーへと踏み出していく。
そんな彼らを変わらぬ態度で見つめているネネがほのぼのとさせてくれる。
絶妙なリズムと言葉選びは津村さんの真骨頂だ。
律が本で調べたところによると、ヨウムの寿命は50年くらいとのこと。物語が始まる1981年にはすでにネネは10歳くらいとのことなので、エピローグとなる2021年にはネネは50歳となるのだが、この物語の結末はネネの人生ならぬ鳥生の最期を描くのかと不安になりつつ読み進めたが、どうなるのかは読まれてのお楽しみに。
ネグレクトされた姉妹の話となれば、別の作家さんが描けばいくらでもシリアスでシビアな展開になりそうだが、全く違う物語にしてく��た津村さんにアッパレ。益々好きになった。
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母親とその彼氏から、10歳離れた妹の律を連れて家を出た理佐が、そば粉を挽く水車小屋のヨウムのネネの世話をする仕事付きで引っ越してくる、そこから10年ごとの人生を温かく綴る物語。血の繋がりではなく、優しさを誰かに繋ぐ…、読むと熱いものが込み上げる。ネネの人間?!みたいなやり取りが可愛いし、困ってる人に手を差し伸べる人々が良い。物語の中で、理佐と聡をはじめ、本当の子供が生まれ、その子達も絡んでこないのが若干寂しいかな。でも読んで良かった作品。
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普段は小説を読むにあたって、表現技巧については気にしていなかったが、今回の津村記久子さんの本では何度か読み返した箇所があった。本好きで良かった、と改めて思わせていただきました。これから「グロリア」を観てみます。
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誰かに親切にしなきゃ 人生は長く退屈なものですよ というフレーズがこの物語の根底に流れていて その温かい気持ちのリレーを見ていたような
たぶん また何度か再読することになりそうな
大切な本となりました。サイン本でそのサインに
しゃべる鳥 ネネも書かれていて とっても素敵でした 感謝です
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長い長い作品でした。
連続テレビ小説になったら、とても素敵な映像になりそうだな〜と思いながら読みました。
40年分の主人公の人生、楽しませていただきました。
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2023年3月に単行本は刊行されたが、2022年7月まで、1年間にわたって毎日新聞夕刊に連載された小説。連載で読んだ本はここにアップしたことないけど、この作品はあまりに面白かったので。
新聞連載小説を読み始めて僅か数年、でも、今まで読んだ中で一番面白かった。津村記久子作品もたいして読んでないけど、芥川賞作品「ポトスライムの舟」を含めても一番だった。昨年中に読了した小説の中でもベスト作品。
主人公は8歳の女の子、律。彼女と18歳のお姉さんが冷淡な親もとから出て、多くの人と交流し、さり気なく助けられながら、小さく幸せに生きていく話。30年間の話が、4話構成でつづられる。1話がとくに面白い。
今、若い人たちは「普通においしい」とか言ったりするが、これは「普通に幸せ」な人生を達成していく物語。そこには「普通に助け合う」が欠かせないことがわかる。
この小説でもっとも良い点は、お姉さんや律が、年を取っても、冷淡な親と変に和解しなかったことだと思う。
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母親から逃れるために家を出た18歳と8歳の姉妹が出会ったしゃべる鳥ネネ。その町での生活が1981年から2021年まで描かれる。町でたくさんの人と出会っていく中で感じること。人の優しさやよくしてくれることで自分はできていると思う感覚。それがまた循環していくことに喜びや幸せを感じていく。そんな関係がとても素敵で心地いい。しゃべる鳥のネネのキャラクターもかわいい。人と町の中に支え合う空気があって、一緒にいてもいなくてもそこに行けば誰かいると思える場所があることの安心感に溢れた作品。