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「ざしきぼっこのはなし」を、はたこうしろうさんが、どんなイラストで描くのか見たくて購入。だけど、「虔十公園林」のはたさんの世界がとてもマッチしていて、きゅうっとなりました。
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◆絵:秦 好史郎「ざしきぼっこのはなし」併録◆いつもはあはあ笑っていてばかにされている虔十がはじめてほしがったのは、杉苗七百。やせた土地に整然と植えつけられた杉は大きく育たず、やっぱり物笑いの種。でもそのぽっかりとした小さな気持ちのよい空間は公園林となり、虔十がいなくなっても「ほんとうのさいわい」を教えてくれるのです。◆いつ読んでも、無垢の虔十に「居場所」があることにほっと安心するお話。虔十を見守り認める父・母・兄の愛に心打たれ、また、虔十が守った杉林が子どもたちの清い「居場所」になることに心打たれます。◆小石のように転がっている平凡な「ほんとうのさいわい」、尊い「十力」に、私はきちんと気づけるだろうか。◆花巻の賢治記念館にて次男が選んで購入した1冊。
【2013/10/24】
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宮沢賢治のお話を児童書にしている「宮沢賢治のおはなし」シリーズより。
各巻をそれぞれの絵本作家が絵を当てています。
こちらは『虔十公園林』と『ざしきぼっこのはなし』の二編が収録されていて、挿絵は はたこうしろう です。地元に寄り添ったような優しいお話と、はたこうしろう の絵がとても合っています。
この『虔十公園』は宮沢賢治のなかでも好きなお話です。
自然を見るのがなによりも大好きな虔十は、まわりからはのんびりしすぎた変わり者だと思われていました。
ある時虔十はお父さんお母さんに「杉の苗を買ってけろ」とお願いします。
ここいらでは役には立たない杉だけど、虔十の両親とお兄さんは、いつも頼み事をしない虔十の言うことだから、と買ってくれます。
虔十は周りから変な目で見られても、邪魔だと叱られても、一生懸命杉の苗の世話をします。
数年後、虔十は病気で死んでしまいました。
それからまた何年も何年も経ちました。虔十の育てた杉は立派な杉林になり、村の人々や、小学校の子供たちの憩いの場になっています。
村を出ていった人たちも、久々に帰ってきてはこの杉林がそのまま残っていることに「ここはすっかり元のままだ。あの杉林には私や友達がいるようだ」と感動します。
虔十の杉林は、「虔十公園林」と名前がつけられ、人々の憩いの場として、優しい空気を爽やかに吐き出すのでした。
その人が生きている間は価値が認められなかったけれど、その人が死んでからもやったことは人々に良いものとして残り続けている。
この虔十が宮沢賢治に似ているなあと思いました。宮沢賢治も生きている間には2冊しか本を出さず、死んでからこんにちまで残り続けています。
その人は死んでも、その人の遺した善意は残り続けるっていいお話だと思いました。
『ざしきぼっこのはなし』は、宮沢賢治の故郷に伝わる座敷わらし伝説を書いた小品という感じです。
部屋の中から音がするのに誰もいない。みんな知っている友達なのにいるはずの子供が一人多い。夜に渡し船で家から家に移動すると、前の家は寂れて、新しい家は栄える。
こんなのがざしきぼっこです。