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今では徐々に知る人も少なくなっているが、サンリオはキャラクター事業と並行して出版事業を手掛けていた。
特に自身が最初に知って驚愕したのはサンリオが80年代にサンリオSF文庫という文庫シリーズで、かなりハードエッジな海外SFの翻訳を行なっていたことである。あまりにもサンリオのキャラクタービジネス事業とは距離がありすぎて、一体どのような経緯で始められたものなのかずっと謎であり、それが本書を手に取ったきっかけである。
本書はそんなサンリオの出版事業について、複数の研究者がそれぞれの専門性に基づいて論じた論考集である。対象となる出版事業の範囲としては、
・アンパンマンの作者であるやなせたかしが選者を務める詩の公募雑誌「詩とメルヘン」
・少女向けマンガ雑誌「リリカ」
・いわゆるハーレクインロマンス的な女性向けロマンス小説
・サンリオSF文庫
と多岐に渡る。
ボリューム的には「詩とメルヘン」に関するものが多く、それはこの雑誌からデビューしたメルヘン系の詩人が多い点にも起因する。この「詩とメルヘン」への会社としての力の入れ方には、創業者である辻信太郎の平和への強い憧憬が背景にあり、そうした観点からもサンリオという企業の企業文化を知る良い材料であると感じた。