紙の本
小説でよかった
2021/10/13 01:08
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投稿者:読人不知 - この投稿者のレビュー一覧を見る
谷崎潤一郎が関西移住後に書いた作品。
解説部分には、ちょっとした地域の歴史紹介や、古い関西弁講座などもあり、関西人もその他の地域出身の読者も楽しめる。
但し、登場人物は揃いも揃ってクズばかり。
特にタイトルに唯一人名前が載る「庄造」のクズっぷりが群を抜く。本文の「不服を聴いてくれる友達もなく」の一文が庄造の人物像を如実に物語る。
母親のおりんは近所の住民から煙たがられ、現妻の福子は下半身事情がアレな悪女として新聞沙汰になった札付きの人物、前妻の品子はしっかり者だったが嫁いびりのストレスを猫のリリーにぶつけていじめ、また、冒頭の手紙に精神状態の危うさが表れる。
唯一の救いは、品子が一定程度、心の平安を得て、猫のリリーと慎ましく小さな幸福のある暮らしを送れるようになったことだろうか。
阪神パーク跡地は、二〇〇四年にショッピングセンター「ららぽーと甲子園」になり、久々に「阪神パーク」の名称を目にして懐かしくなった。
人間観察としては、小説なので安心して読めるが、人間の身勝手に翻弄されるリリーが可愛そうで、猫好きの人にはあまりお勧めできない作品。
紙の本
猫好き男の気持ちを知る為に!
2004/06/08 15:27
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投稿者:こひつじちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
普通、こういう親バカみたいな話って、猫好きじゃない人にはホントに苦痛な内容だったりするものじゃあないですか。でも私、別に猫好きって訳じゃないんだけど、これ読むと猫がものすごく可愛らしいヤツに思えて、友人で「俺、猫がいれば女いらない」と言っていた男がいたけど、そいつの気持ちが解る気がしなくもなくもない。という感じでした。
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谷崎は『春琴抄』を読んで以来、半年ぶりだ。やはり面白い。
でも『春琴抄』ほどの凄みは感じない。あれはほとんど極限まで完成された美学だったのに対し、こちらはそれが未完の状態を描いたからだろうか。
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面白い、詳細に描かれる文体は初めねちっこく嫌だったがだんだん癖に・・・もう手に取るように入ってくる。
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谷崎潤一郎は、良いのだが、つい、反射で拒否してる(ついだ…。)メロウなんだもん!!(多分)(絶叫)猫がらみで読んだこれはたしか。なんかもう、あああ、ああああ と思った気がする、いや、忘れてる…。想像でなんか作ってる…。
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この作品ではタイトルの並び順が優先順位である。
筆者は人間の幸せは隷属的支配にあると述べている。もしその隷属的支配がなかったとしたら・・・それがこの話。
あまり隷属的支配に実感がないが社会人は会社という隷属的支配でこれにより地位を確保して安心しているのはつまりこういうことなのか。
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猫好きは読むといいのでは。谷崎の耽美な世界からは離れているけど、十分に面白い。もうこれはギャグの域。
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よく「仕事とワタシと、どっちが大切?」と男を責める女がいるけど、この本では「猫とワタシと、どっちが大切?」と、庄造が妻に責められる。もちろん、素直に本音は「猫」なんて答えられないから、のらりくらりとかわして逃げるが勝ち。かくいうワタシも、ダンナに聞かれたことがある。「オレとナナと、どっちが大事?」って。答えはもちろん…ご想像にお任せします(ニヤリ)。
読んだあと、谷崎さんて猫を飼ってたの?って思った。猫のリリーと庄造の生活ぶりや、猫のしぐさなどが、ものすごく丁寧に、そして間違いなく書かれているし、庄造の溺愛ぶりは自分の姿を重ねて書いたのでは?とさえ感じたから。猫が飼い主に時折見せる媚や甘えたしぐさなんて、そのまんまだもん。
猫好きの皆さんに、是非読んでみてほしい一冊です。
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私の地元で繰り広げられる、痴話モノ。
地名はわかるのに、あまり風景が想像できないのは時代が違うからでしょう。この頃とは海岸線が全然違うらしい。
旦那さんが浮気したら読み直すと思います。
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一匹の猫に翻弄される男の物語だが、私自身、無類の猫好きであり、又、谷崎潤一郎の別著「痴人の愛」の、譲治の、捨て身で捧げる奴隷的な愛にしびれたので、この本の庄造にも、愛猫リリーの為に、とことん身を滅ぼして気違いになって犯罪に走る、くらいまでに堕ちてほしかった。猫への愛の行き着く最終ステージを、私が傾倒してやまない、甘美なマゾヒズムの内にある谷崎の作品に見てみたかった。
猫って妖艶。
“何とも云えない媚びと、色気と、哀愁とを湛えた、一人前の雄の目”
“僕リリーとは屁まで嗅ぎ合うた仲や”
“リリーの冷たく濡れた鼻のあたまと、へんにぷよぷよした蹠の肉”
“心の奥に持っていながら、人間に向かって云い現わす術を知らない畜生の悲しみ”
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谷崎独特の世界。とにかくこの猫が何とも言えない。強かで計算高く自分の振るまいの効果を知り尽くしている。登場人物のなかでもっとも「おんな」なのは間違いなくこの猫だ。
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美猫リリーに翻弄される男と女の恋愛模様を描いた作品。世の中の愛猫家(男)は皆こういう感じなのかしら。まあ、此の作品に出てくる男は、猫が好きって云うよりは、猫に恋してます。病気ですね。
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正直、 ええ、これで終わり? とは思った。
でもこれ痛い話というか、最後にぐうたらな庄造がパンチを食らった。物語としてはすごく小さな波風が、その人物にとってはとても大きなこと。『痴人の愛』でも思ったことですが、すごく個人に入り込む人ですね谷崎。
人が猫に勝手な想像を抱いて、主人が好きなんだとかなんとか、そう思ってたらそうじゃなかった。それで裏切られた気分になる。そんなの人の勝手で、猫にとっては何考えてるの、ってことなんですよね。所謂、一人上手。やっぱ好き、うん、好き。
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これは面白い。猫好きの人ならきっとわかる。人間が狂ってしまうほど可愛らしい獣の様子。たまらなくなる。
猫にふりまわされる人間模様が、おかしくて、切ない。
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異常なまでにリリー(猫)を溺愛する庄造君30歳の頭の中は猫でいっぱい。
妻福子の嫉妬(猫に対する)と前妻品子の未練(庄造に対する)により愛猫リリーを取り上げられてしまった庄造君30歳(ほとんど子供)。
三者三様の悲壮と破滅とを描く。
あぁ、猫とはどこまでも奔放なれども
なんと可愛ゆきことよ。