紙の本
犬好きなら是非
2024/04/16 18:36
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投稿者:fuku - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫化に際し、村井理子さんがおすすめしていたので、興味を持ちました。
シェパードだけで生涯50頭、狼も飼った平岩氏の犬への愛情、探究心、観察眼に心打たれました。
フィラリアや戦争で短命だった犬たちのことを思うと、現代に生きて犬を飼えることが本当に有り難い。
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<目次>
プロローグ
第1章 狼に憧れた神童
第2章 白日荘のにぎやかな住人
第3章 動物文学に集う人々
第4章 愛犬の系譜
第5章 戦火のなかの動物たち
第6章 犬は笑うのか?
第7章 狼との対話
第8章 奇人先生の愛した犬たち
エピローグ
<内容>
戦前の日本には「奇人・変人」が数多いたようだ。南方熊楠然り、牧野富太郎然り…。この平岩米吉もその一人。彼らは裕福な家に生まれ、その財力で自由気ままに自分の興味を掘っていった。それだけで無く、ちゃんと成果を出したワケだ。米吉は犬の生態から狼やハイエナの生態まで。さらにちゃんとした動物文学の紹介まで。人口に膾炙したところでは、『シートン動物記』の紹介か。片野さんは「イヌ」など動物への視点が温かい。
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犬を飼ったことは無いが(猫は飼ってる)犬の賢さ愛情深さは少しは知ってるつもりだったけれど、狼やハイエナが人に慣れたりこんなにかわいいなんて思いもよらなかった。そもそも彼等のご主人である平岩米吉氏が抜群に面白いのだがご家族もみな器量と愛がデカ過ぎる!
村井理子、高橋源一郎、高野秀行の帯に惹かれて手に取ったのだけれど、とにかく最初のエピソードから引き込まれ驚かされ、一気読みさせられる事間違いなし!写真も楽しい。
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こんな人がいたのかと驚きながら読み進めた。自宅の庭で犬はもとより、キツネ、オオカミ、ジャッカル、ハイエナなどの動物とともに暮らし、深い愛情を持ってその生態を観察し、研究を続けるとともに、雑誌『動物文学』を立ち上げ、日本に真の意味での動物文学をつくろうと努力を続けた人物。晩年には「犬奇人」と呼ばれていたそうだが、犬の愛好家と言う人は結構いるとしても、普通の常識では考えられないという意味で、「奇人」という言葉に相応しい人だったのだろうと思う。
今でこそ犬の寿命は延びて10年以上生きるのは普通になっているが、平岩米吉の愛犬の多くは数年で亡くなってしまっていた。その大きな原因の一つが、蚊を媒介とする寄生虫フィラリアだった。多くの愛する犬を見送ることとなった米吉の悲しみ、それを詠んだ短歌が何首か収められている。どんなにか辛い別れだっただろう。
一匹くらいの犬ならともかく、何頭ものシェパードに加え馴染みのないオオカミやジャッカルの世話をするのは大変だったろうし、家のドアは傷だらけ、襖、障子は破れ放題という生活に耐えたというのはスゴイこと。もちろん本書の主人公は米吉であるが、その研究を支えた妻、そして長女の献身振りもしっかりと描かれている。
現代では、ペットは家族の一員として大事にされるようになってきた。それもこのような先人の努力があったこそなのかと、本当に頭が下がる思いがした。庭で遊ぶ愛犬たちと米吉ら家族の写った写真や、懐いているオオカミやハイエナと一緒のところ、愛犬との散歩風景などは微笑ましいが、最も愛した愛犬の死に顔のスケッチ、見ていて切なくなる。