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紙の本
雪江先生の「代数学2」に直結する貴重な本
2019/12/18 03:01
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:類太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
代数幾何を学ぶには代数学の入門書の環論だけでは足りないと言われている. しかし, いわゆるアティマクの本のように高度な環論の本を読める人は相対的には少ない.
「アティマクが読めないならこの本がおすすめ. 幾何学的イメージをはっきりさせているので」という知人からの勧めと前々から気になっていたのが重なり本書を読んでみたが, 確かに可換環について何も知らない人が読む物ではない.
しかし入門書には書かれていないような深い結果(任意の可換環が, 単元群と, 極大イデアルたちの和集合との直和であることや, 中山の補題とその系など)や広い内容あるいは幾何学的イメージ(多項式環の極大イデアルの図説や零因子の定義に関する図説など)が載っているのと, 本文によれば代数幾何や複素幾何を学ぶ人のために書かれているようなので, 本書を読んでいけば自然に高みに達せそうである. なお余談だが日本ではどちらかというと本書の意味での中山の補題の系を「中山の補題」と言う気がする. (「複素解析幾何とディーバー方程式」参照)
予備知識はちょうど雪江先生の「代数学2 環と体とガロア理論」を読んだことがあるとその知識と経験が無駄なく活きる程度である.
補足すると, 群・加群Mに対してその正規部分群・部分加群KでMを割り商群・剰余加群M/Kを作る操作はKの元をMの単位元と見なすということも用いている. また互いに同型な環は同一視している. 説明が無いがk(X)はXを変数とするk-係数有理関数体を表す.
アティマクでは省略されているが多変数複素解析や数論で重要な内容も書かれてあるようである.
今は出版社では品切れのようだが, 貴重な良い本なのでまた復刊してほしい.
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