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佐原ひかりさんが激推ししていたので読んでみました。すごく良かった。今年の心のベストテン入りは間違いなさそう。
「ニューヨークの魔女」はスピンに掲載されていたので既読だったけど再度読んでも面白かった。
SFといえばSFだけれども、大人のお伽話か奇譚集というような不思議な読後感。
「ユートロニカのこちら側」や深緑野分さんの作品にも通ずるちょっと心が穏やかではなくなる感じも好きです。
とはいうもののもう一度読み返さないとよくわからないなーと思っていた話もあり、どう考察したものかと思っていたら著者の坂崎かおるさんご自身があとがきに代えてということで解説的なことを書かれていた。ありがたやー。読み終えた方、これも必読です。
https://web.kawade.co.jp/column/86889/
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作者初の作品集とのこと。
ジャンルはSFCらしい…
このらしい…というのが、私にはSFというよりは奇譚集。
想像を掻き立てるタイプのホラーのような気もする。
そして、衝撃的なことに、半分も理解できていないはずなのに、読後は何じゃ、こりゃ?面白いやないか!
これ真に珍妙なり、いや、キテレツかもしれない…
この作品を表現する言葉は私には心当たりがないのに…
あっ、ありのまま、起こったことを話すぜ。
おれは本を読んでいると思っていたらいつの間にか本を読み終えていた…
な…何を言ってるのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった… 頭がどうにかなりそうだった…
くらいの衝撃です(わからん)
それくらい意味不明なのに読んでいて面白い、これはどういうことなのか…
思うに、本作品に収録されている短編が実は全て好奇心を駆り立てるように細工されているからではないか?と思ってます。
なんの仕掛けもなければ、本作のそれぞれの短編は意味不明な上、理解できない、何書いてるのこれ?で終わる話だと思うのですが、読んでいて微妙に答えが見えそうで見えない謎のチラリズムが読み進めたいという好奇心をくすぐっているような気がします。
そして、何を書いているのかわからないのに場面が生々しく頭に浮かぶ不思議な感覚に陥ることも読み進めたいと思えるその要因なのかな?と思います。
結局何がどうなっているのか理解できないのですが、そのもどかしさも含めて楽しいという何か不思議な作品だなと思いました。
本作品の面白さの秘密はいつか解き明かしたいと思いつつ、恐らく本作品集が面白く感じるのは、私が普段表に見せない、なんなら私自身も気がついていない私自身の抱えている残虐性をくすぶるからではないか。
そんなことを思いながら、アダムとイヴもきっと今の私みたいな気持ちで禁断の果実に手を出したのではないか。たとえ楽園を追い出される結果になったとしても。
そんなことをふと思う作品でした。
そう、きっと本作品は禁断の果実なのだと思います。
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表題作がお気に入り。
どこまでが嘘か。嘘を重ねて真と信じるようになってしまったこともあるのではないか。歴史の影でそんなことを想像した。
他の8編も良かった。
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読売新聞の「エンターテインメント小説月報」および「本よみうり堂」に取り上げられていた1冊。両方で紹介された本は記憶になく、どちらも絶賛に近い評価で期待は高まる。
著者の坂崎さんは2020年に「リモート」で第1回かぐやSFコンテスト審査員特別賞を受賞したのを皮切りに、数々の文学賞を受賞している。本書は初の単著で9篇が収録されている。
が……。うーん、つまらなくはない。さすがに。ただ、そこまで優れた作品だろうかという疑問はある。単に好みじゃないだけかもしれない。読んだ端から忘れていき、曖昧な印象しか残らなかった。残念。
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いろいろな書評で話題をさらっている本書はSFにカテゴライズされているが、それよりもGL系の方がピッタリしている。現在のSFはサイエンスではなくLoveが主流を占めているような気がする。サイエンスの時代は人類愛、生命愛がテーマのものが多かったのだが、現在は世相を反映してかBL, GLものが多い。同性同士の愛の本質は私には判りかねるので、性の概念を排除して人間同士の愛と読み替えて作品を読み進めると幾分理解力が深まったようにも思える。
今回の作品の中には愛の対象が電柱というもの「電信柱より」もあるが、電柱と言う物体を擬人化するという発想には興味を持った。以前、何かの本で読んだ記憶があり、初めて読んだ時は心のどこかに引っかかっていた程度で、作者の名前も覚えていなかったが、流石に2回読むと作者の意図がグイグイ入って来る。
その他、気になった作品としては、やはり表題作の「噓つき姫」だ。人間の発する嘘がどんでん返しを誘発するのだが、推理小説のどんでん返しとは質が全く異なる。中山七里を良く読む機会があり、一定の割合で犯人を当てることができるが、本作品の結末を予想できた人が一体この世の中に何人いるだろうか。もう流れに任せて読むしかない。嘘の波に揉まれて次々と繰り出される驚きに打ち負かされるのもたまには良いだろう。
それともう一つが何と言っても「私のつまと、私のはは」。子育てキットと言う発想が凄い。これを読んだら子育ての大変さが倍増どころか、人によっては子育てを諦める、子育てを頑張るぞと張り切る人達に子育てに対するトラウマができてしまう。そのキットをリセットする方法が生々しすぎて、自分の子供に対しても実行してしまうのではという恐怖感が襲ってくる。とても後味の悪い作品でした。
次の本が出るのはだいぶ先かな?当面はいろいろなアンソロジーに顔を出すと思われる坂崎かおるに注目していきたい。