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オーストラリアで海兵隊の旦那と2人の子供とともにくらす、元日本人のベティさん本名柚子は、時々やってくる貨物船に乗る少年を世話することになる。
うーん、なんていうか、なんだろう?なんにも引っかからない。
純文学や文学然としたところはなく、比喩もほとんどないため読みやすいのかもしれないが、だからといって引き込まれるものでもない。オーストラリア妻という短編が2作含まれているのは、本人の私小説的要素があるのであろう。しかし、ただでさえ感情移入できない上に、なんだかわからない土地の描写で、どこに軸足をおいて読めば良いのかわからないのは辛すぎる。
あと2作のうち、水道工事のおじさんをいじめるだけの小説は、まあありかな。もう一作の心底わがままで嫌な身内にいやだいやだと言い続ける話も、なんかもう少し書き方があるだろう?と言いたくなる作品。
所々に、なぜ主人公はそう考えたのかという点において、ホホウと思うような表現があったりするわけだが、終始「〇〇した。〇〇した。〇〇した。」と紋切りで淡々と、悪く言えばダラダラと盛り上がりなく表現されているのは、ブンガク?ブンゲイ?何か勘違いしているようにしか思えない。
この手の(特に女性作家の)作品は、セックスに逃げ込むのであろうと思ったが、1作目でそこも自分で遮断しており、主人公も作者も読者も逃げ場のない、コンクリートの壁に囲まれた部屋のような作品群である。
芥川賞をとっているらしいが、1980年頃の芥川賞がつまらない作品ばかりになった頃の作品だと思う。