紙の本
少将滋幹の母
2021/05/31 23:43
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
時の権力者藤原時平は、伯父であり人のよさ以外に何のとりえも無い藤原国経が七十代になって迎えた妻を奪ってしまう。残された子ども少将滋幹は、何度か母と会う事を許されるが、やがてそれも許されなくなり、数十年後母が老いるまで会う事ができない。この本は、この少将滋幹が残した日記をもとに、妻を奪われた夫、そのきっかけをつくった平中という男の人生などを描いている。
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母への思慕、老人の美女への執着を描きます。平安を舞台にし、王朝文学を題材にしたこれぞ日本みたいな作品。
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主人公ではないけれど、平中が、好きな女性の「おまる」を奪ってしまうあたりの描写が、一番(作者が)楽しそう。元になった古典と照らしあわせると面白い。こういうセンスは、私は芥川よりよっぽど谷崎の方が好き。
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一つ一つのシーンが美しい絵画のように脳裡に浮かび上がる。個人的には主人公が夜中に父親の後をつけるエピソードが好きです。
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美しくいやらしい。きれいなおかあさん。という幻想。美しい妻という現実。谷崎の男たちはいつでも振り回されるのである。おまるのあたりが良い。
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学校で出された課題やから読んだけど…最初のページからとっつきにくい!しばらくは筆者の立場もわからず読んでたよ。。まぁ最初を乗り越えたらあっさり読めるけど。あと脚注も多すぎ。でもリアルな書き方で、状況が分かりやすかった。話題は古典だけど話し方はわりと現代なので。時平だけは最後までなんか嫌い。国経が…哀れ。
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▼ツンデレにスカトロって、どれだけ時代の先へ行ってるんだよこの人……! ▼ツンデレの放置属性に精神を病んで死んだ脇役にワロス。▼基本テーマは「喪失した母性の回復」なんだけども、脇役どもの恋愛話があんまり面白くて、そっちはあまり頭に入って来なかったりした。▼ほんとに親父カワイソス。人間の情って、へんてこなものだね。(08/1/15読了)
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なんだろうこれ、どうしよう。
びっくりするくらいあちこち歪んでいて、でも描写があんまり綺麗なもんだからくらくらする。
特に北の方が時平に引っ張り出されてきた時、滋幹にはっきり顔を見せた時、その情景がどうしようもなく儚くて美しい。
美女のせいで男がどんどん狂ってしまって一人も幸せになれないし、渦中の美女の心境は読みにくい、というかちっとも分からないし、こんなの絶対いい話じゃない。語り口だって結構突っぱねてるし。
それなのに、でも、やっぱり、だ。
08.12.11
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いろいろなテーマが盛り込まれていると思いますが、残念ながらわたしには平中による恋の駆け引きが一番印象に残っています。
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これを授業で取り上げられたから読んだんだけど・・・
もう、これで谷崎に落ちました。
老人→美しい若い妻
っていうのがたまらない。
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排泄物を食べたりするのはこれだっただろうか。
面白かった、という記憶以外が薄れてしまっている。
七年ぶりに谷崎を読み返してみようと思った。
『武州公秘話』『盲目物語』そして本作。
2002年7月10日読了
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国経が御簾の蔭へ手をさし入れると、御簾の面が中からふくらんで盛り上がって来、紫や紅梅や薄紅梅やさまざまな色を重ねた袖口が、夜目にもしるくこぼれ出して来た。
それは北の方の着ている衣装の一部だったのであるが、そんな工合に隙間からわずかに洩れている有様は、万華鏡のようにきらきらした眼まぐるしい色彩を持った波がうねり出したようでもあり、非常に暈のある罌粟か牡丹の花が揺らぎ出たようでもあった。
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三島由紀夫は見上げて「大谷崎」と呼んだ。私にとっても神に等しい作家だからレビューを書くのも畏れ多い。かつて法然院の墓に参った時、思わず柏手を打った。すぐに仏と気づいて、恥ずかしかった。
谷崎の作品には、建前の裏に隠れた生々しい情欲と、幼い頃に失った母の美しすぎる記憶への憧憬とが、良く出てくるものだ。
その二つが盛り込まれているだけでなく、とにかく盛りだくさんだ。よくぞ、このページ数に収まるものだ。超絶技巧を持つ作家の推敲の賜だろう。
一人の女を、妻として執着する老人と、母として慕う滋幹は、いずれも谷崎の思いの反映であろう。
そして、ただただ美しいラスト。思わず涙が溢れた。
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やっぱり谷崎さんはどんな題材を書いても上手いなぁと思いますが(これは浅田次郎さんにも思う。調理が上手いシェフの料理を食べる気分になる)これは題材がすごかった、というか昔の日本人すごいと思いました…飲むか…?食うかそれ…?そして「そんなこともあろうかと思って」だと…?
登場人物を魅力的にめぐっていって、きれいにラストなんですが、やっぱりあのシーンが一番印象的で仕方が無いのは私だけじゃないと思いたいです
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蘆刈・吉野葛の系譜の作品で大好きだった。中世の色好みな男と周辺の解説のような顔で始まって、北の方という一人の美しい女をめぐる男達それぞれに焦点が当たりずれていき、少将滋幹が登場するのは大分あと。御簾の影に暗闇色の霧のように立ちこめていた北の方を時平が劇的に引きずり出したあと再び彼女は姿が朧気になり物語から遠ざかった掻き消えたかのように見えるが・・・。最後まで北の方は月の暈のような女性だった。彼女の意志は見えずそれとは関係なく男達は彼女を扱い、興亡を繰り返す。彼女に自由意志はないけど、彼女を真に自由に扱えた男もいない。筆もこちらも一番盛り上がる北の方の奪取場面、鼻をつまみたくなるおかしいおまる事件など人間味や実感のあるエピソード群の真ん中におぼろな母の影が匂う、谷崎おじいさんの技の冴える一品。