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<目次>
第1章 奈良時代の国家権力は誰の手にあったのか
第2章 藤原氏は権力者だったのか
第3章 地方支配と郡司
第4章 変貌する国司
第5章 「唐風文化」から「国風文化」へは成り立つのか
座談会
<内容>
古代の基本的なジャンルの最新研究をまとめたもの。若い研究者の文章は読みやすい(そのように指示を受けて書いているかも)。また第3,4章など学校で授業をやっていて一番伝えにくい、10世紀前後の地方と国司の様子をまとめてくれたので、大変助かった。ただ現在の教科書や自分の頭の中の理解とずれている点があるので、そこを自分の中で消化しないと…
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若手研究者による小論集と対談。奈良時代から平安初期までは中国文化を積極的に吸収し、我が国のやり方と併せて推し進めた。9世紀以降は国交がなくなり文物は入ってきてはいたが古い中国を大事にしつつ、我が国風の文化にシフトしていった。教科書の国風文化のように一気に変わったわけではない。摂関期に固まったことは広く後世まで残った。
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日本の骨組みを造ったのは奈良時代だと感じながら歴史を愛好しているが、イメージダケの決めつけが個別の事実で裏付けされていく高揚感を覚えながら読み進んだ
実際はヤマト政権時代から有る権力者と天皇の形から律令制を移植手術して副作用や免疫反応に
個別のルール追加により原則と裏ルールを組み合わせながら、中央の朝廷と地方が密に人的繋がりを残している・・・地方豪族は出身地と中央の両方に拠点を持ち活動をしていたのか(加藤謙吉「両貫制」)、大河ドラマ鎌倉殿の13人で初めて意識した構図が古代から有るんですよね(氏女とか)
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奈良時代の律令国家の始まり。過渡期的な状況での、
天皇や太上天皇、皇太子の地位や存在について。
天皇家産やキサキとの関わりからの権力の確保。
平安時代は奈良時代と異なる天皇中心の政治の再編。
臣下の摂政・関白による天皇政務代行が成立した理由と、
摂関政治に至る過程について。摂政は幼帝の政務代行。
天皇の母・母后が子の天皇を後見する権能と外戚との関係。
中央派遣の国司と地方豪族の郡司の変遷。
郡司層は地方行政の重要な存在だったが、
古代国家の地方支配との関係は平安時代に変化する。
国司の受領化、院宮王臣家や諸司の地方進出と富豪の登場。
郡司層の解体による自律的活動が始まる。
平安時代の受領国司は地方支配を担う存在に。
任用国司は中央官人層から地方有力者層が選ばれるように。
受領と現地勢力との関係からの、国司苛政上訴と
受領再任などを求める善状提出。
奈良時代後半、唐風を政策と文化に。それは平安時代初期にも
受け継がれ、遣唐使や渡来の者たちからの最新の唐文化が受容。
国風文化は承和年間に萌芽。和歌やひらがな等の和文化に
関心が高まってゆく。それでも公的の漢と私的の和。
漢と和が並び立つ文化に。
なかなか興味深い内容でした。
奈良時代と平安時代は大雑把に覚えてはいたけど、
国司と地方豪族の関係とか、国風文化とは何ぞやとか、
かなり研究が進んできていて、興味惹かれる提示が多く、
平安貴族の学習方法もあったりで、面白かったです。
後々の時代まで漢詩や唐文学が伝わってきているのも、
起源はこの時代にあったのかと。
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いくつも驚きがあって興味深い。
古代って言うからてっきり土偶とか埴輪の世界の事かと思って買ったのだが、古墳時代以前は歴史学の対象ではないのね。全然知らなかった。これが最初の驚き。気を取り直して読み進めて行くと、教科書的な歴史の記述ではなく、自然科学で言う所のレビュー論文みたいな感じで、複数の学説の紹介で構成されている。こんなマニアックな内容にニーズあるんか?と思ったのだが、案外これが面白い。2つ目の驚き。
学校では都の中央の出来事しか習わないから、古代日本の地方官吏の実態とか、中央との関係とか、中国との向き合い方とか知らない事がたくさん出てきて好奇心を刺激された。日本人の急激な変化を嫌う起源がわかった気がする。
この手のマニア向けの本は何とも言えない味があって好きだ。