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「経済人」の終わり
ファシズム全体主義はなぜ生まれたか。経済のために生き、経済のために死ぬという経済至上主義からの脱却を説く本書は、時の大英帝国宰相ウィンストン・チャーチルの激賞を得た。本書で浮き彫りにした社会問題の多くは、世紀をまたいで今なお、未解決のままである。ドラッカー29歳のときの処女作であり、偉大なる思想の原点となった歴史的名著。
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「経済人」の終わり
2009/08/16 23:11
自由を守る意志を固め、経済人を乗り越えろ!
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kc1027 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はヒトラーが政権を掌握した直後、1933年に書き始められ、
1939年に出版された。これ以前に発表した論文によってナチスの怒りを
買い、アメリカに移住して書き上げた本書の出だしはこうだ。
「本書には明確な政治目的がある。自由を脅かす専制に対抗し、
自由を守る意志を固めることである。しかも本書は、ヨーロッパの伝統と
ファシズム全体主義革命との間にはいかなる妥協もありえないとする。」
しびれる。本当にしびれる。今の世界が形作られた過程の中に、
このような意思を持つヒトがいてくれたことに心底感謝したい。
ドラッカー先生の思想の原点である本書には、なぜ彼が「個人の幸福」を
追求したいのか、それが切々と伝わってくる。人間観の中心に
経済を置いた二つの思想、ブルジョア資本主義とマルクス社会主義の
限界が見えはじめた第一次世界大戦後、そこにはすでに経済至上主義では
幸福になれない大衆がいたのだ。それでもなお経済至上主義にすがる
大衆がいたのだ。
そして大衆の絶望に付け込む形で勃興したファシズムは、経済人の
変わりに「英雄人」を提示した。戦って勝ち続けることにだけ価値を
置く英雄人、それはひとりひとりに隈なく役割を設定することで
救世の思想のように一瞬見られたが、破壊と殺戮によってしか秩序を
保てないものだと、ドラッカーはナチス崩壊の12年前に喝破している。
この稀代の警世の書の出版から70年を経た今日、それを読む誰もが
果たして我々は「経済人」が終わった後の人間観を見出そうとしてきた
のかと、自問せざるを得ないだろう。プチブルまで木っ端微塵に
なった2000年代末になってやっと、我々は本書からの問いかけに
真剣に対峙せざるを得ない状況に追い込まれた。我々ひとりひとりが
自由を守る意思を固める覚悟を求められているのだ。
さて、とは言っても、あまり硬くなりすぎても専制への対抗はうまく
いかない。経済人の後に来るもの、を考える前に、その前にあった
人間観は、ドラッカー先生曰く、宗教人であり、知性人らしい。
いわば、心と頭が中心の人間観に絶望してお金にすがっても駄目だった
ということか。
先ほどテレビを見ていたら、CMで吉永小百合さんが「救うのは、
太陽だと思う」と言っていた。わたしもそんな気がするが、地球環境
中心の人間観といっても掴みどころがないので、いきなり地球に行く前に、
これもドラッカー先生の教えに習い、人間の社会環境の生態学に沿って、
持続する自由とは何かを自問しつつ、自分なりの人間観を探り続けたい。
わたしは本書を通じてドラッカー先生が、今こそ「社会人」を自ら体現し、
再構築せよと、励ましてくれているように思えてならない。
「経済人」の終わり
2016/06/21 13:34
金言集9
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:KKキング - この投稿者のレビュー一覧を見る
マネジメントの大家・ドラッカーによる名言集シリーズ第九弾。1939年作品。ドラッカー自身にとって畢生の作品とも言うべき、ファシズム批判。
「経済人」の終わり
2023/09/28 13:26
ドラッガーによるファシズム、ナチズム論
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドラッガーによるファシズム、ナチズム論。初稿は1933年に書き、39年に出版された。現在では古びている部分もあるものの、非合理であるにも関わらず支持されたのではなく非合理であるからこそ支持されたのだというところなど、現在でも通じるところもある。