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十三番目の人格 ISOLA
著者 著者:貴志祐介
賀茂由香里は、人の強い感情を読みとることができるエンパスだった。その能力を活かして阪神大震災後、ボランティアで被災者の心のケアをしていた彼女は、西宮の病院に長期入院中の森谷千尋という少女に会う。由香里は、千尋の中に複数の人格が同居しているのを目のあたりにする。このあどけない少女が多重人格障害であることに胸を痛めつつ、しだいにうちとけて幾つかの人格と言葉を交わす由香里。だがやがて、十三番目の人格〈ISOLA〉の出現に、彼女は身も凍る思いがした。
十三番目の人格 ISOLA
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十三番目の人格 Isola
2003/06/03 21:45
良かったと思うのですが…
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:じりくん - この投稿者のレビュー一覧を見る
貴志祐介さんの作品を読むのは、これで三作目でした。最初は、『クリムゾンの迷宮』、次に『青の炎』です。『青の炎』を読んで以来、貴志さんにハマってしまいました。『青の炎』は最高でした。この人の描く小説は、きっとすごいものなのだろうと、かってに決めていました。貴志さんの作品名は、「色」がつくものが多いです。『青の炎』の『青』や、『クリムゾンの迷宮』の『クリムゾン』や、『黒い家』の『黒』や。これは、なんらかの意図なのでしょうか?
とにかく、私はこの本を読みました。
最初、本の裏の梗概を読み、おもしろそうだと思いました。他人の強い感情を読み取れる能力、エンパスの持ち主が主人公。その主人公の加茂由加里が出会う、多重人格の少女。これは見逃せないと思った。多重人格少女の千尋の感情を、どうえがくのかと、興味を持ったからでした。
読んでいて、すごいと思った。とにかく、上手だったのだ。
人の感情をえがいているところでは、なぜか、読んでいる私が優越感のようなものに満たされた。
このあと、どうなるのか。小説の中盤で、話はハッピーエンドとなるかと思ったが(むしろトゥルーエンド?)、そのあとにも、まだまだ発展があったのだ。
ただ途中で、対外離脱などの話が出てきた。これはこれで、楽しくなりそうだと思った。だが、やけに現実的でないし、幽霊、悪霊というイメージがしてしまう。だから後半は、サスペンス的ではなく、怪奇的な恐怖を感じながら読んでいた。
そこが、ちょっと、想像以上なのか以下なのか、ハズレだなあと思った。
最後、終わり方。これはこれでよかったと思うが、やはりこれも、いったい何が変わったんだ?と思わせてしまう。いったいこの長い話の中で、何を学んで何が変わったんだろうと、そう考えてしまう。それが著者の意図なら、すごいと思う。
でも、やっぱり、貴志さんはすごいと思った。現在、『黒い家』を読んでいる。まだ読んだばかりなので、話のある程度の内容は理解できないが、今後の発展が気になる。
貴志さん、ファンになりました、いやはや。
十三番目の人格 Isola
2001/09/19 00:15
阪神淡路大震災直後の被災地を舞台に、主人公はエンパスという超能を生かして、多重人格の少女を助けるために奔走するが
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なりてん - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台は阪神淡路大震災直後の被災地で、主人公賀茂由香里は、エンパスという超能力を生かして、ボランティア活動を行っていた。そこで、出合った一人の少女は、いわゆる多重人格。なんとか彼女の力になりたいと自分の能力を最大限に活かしていくのだが…という物語だ。
私も阪神淡路大震災一ヶ月後か二ヵ月後ぐらいの神戸に仕事で頻繁に通ったことがあるのだが、本書の冒頭を読み始めてあの時の光景がまざまざと思い出された。半壊、全壊した家々を横目に見ながら、数十分歩いて電車を乗り継がなければならなかったのだが、今でも思い出すと胸の奥がしめつけられるような気がする。
おそらく著者が本書の舞台として阪神淡路大震後の被災地を選んだのは、そんな光景、被災者を含む多くの人々のさまざまな人間性を見て、なにか感じるものがあったからではないだろうか。事実私には、本書のなにか闇の奥から迫りくるプレッシャーみたいなものと、阪神淡路大震後の被災地の雰囲気とが妙にあっているような気さえしてくる。
また、本書には心理学用語がたくさん出てくる。特に多重人格の少女には、それぞれの人格毎にさまざまな心理テストを実施している記述があり、著者の心理学への深い知識が覗える。特に本書で重要視されている心理テストとしてバオムテストがあり、様は1枚の白い紙に1本の木の絵を描いて、そこから心理状態や性格、本人も自覚していないような隠れた内面などを測るものなのだが、このバオムテストの結果が、多重人格のそれぞれの人格に、さらに個性を与え、物語のリアリティさが増していると感じた。
この辺の豊富な知識による物語への肉付けが、非常に上手いと感じさせられた。
それと、主人公の能力であるエンパスは、テレパシーとはちょっと違う能力として描かれている。私としては、この辺は特に区別する必要もなかったように感じた。あまり聞いたことがないエンパスよりも、比較的よく耳にするテレパシーの一種としても、それほど違和感はなかった様に感じる。まあ、テレパシーとしてしまうと、読書のそれそれが持っているテレパシーに対する先入観に、物語の雰囲気を左右されてしまうことにもなりかねないので、それを避けたかったのかもしれない。
本書は、著者、貴志祐介氏のデビュー作だそうだ。話の展開、物語を支える豊富な知識、登場人物のリアリティ溢れる描写、どれもデビュー作とは思えない秀逸さだ。特にデビュー作にありがちな、いろんなアイデアや、知識をなんでもかんでも詰め込んで、飽和してしまっているような感がまったくなかった。年齢的には少々遅いデビューだったこともあるのだろうが、すでにベテランにさしかかっている作家の書いた小説のように感じる。
ホラー小説なので、超能力やオカルト的な要素があるため、それらが受け入れられない人は別として、ホラー好きはもちろん、SF好き、ミステリー好きな人へはお勧めの書である。
十三番目の人格 Isola
2017/08/12 21:33
怖かった
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
多重人格者vs心を読めるエンパスの話。はっきり言ってホラーです。日没が迫る中、大学の中でイソラを探す模様は緊迫感があり、印象的なシーンでした。最後の最後まで、ゾッとさせられつつも、楽しく読めました!あと、個人的には、関西が舞台で阪神電車が出てきたのが、地理感もあって良かったです^_^