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2件
葬列
著者 小川勝己
不幸のどん底で喘ぐ中年主婦・明日美としのぶ。気が弱い半端なヤクザ・史郎。そして、現実を感じることのできない孤独な女・渚。社会にもてあそばれ、運命に見放された三人の女と一人の男が、逆転不可能な状況のなかで、とっておきの作戦を実行した――。果てない欲望と本能だけを頼りに、負け犬たちの戦争が始まる! 戦慄と驚愕の超一級クライム・アクション。第二十回横溝正史賞正賞受賞作。
葬列
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2018/12/05 08:35
気持ちがざらつき過ぎて読後感は最悪
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「戦慄と驚愕の超一級クライム・アクション」という煽りにある通り確かに戦慄し、驚愕しましたよ。 「不幸のどん底で喘ぐ中年主婦・明日美としのぶ。気が弱い半端なヤクザ・史郎。そして、現実を感じることのできない孤独な女・渚。社会にもてあそばれ、運命に見放された三人の女と一人の男が、逆転不可能な状況のなかで、とっておきの作戦を実行した――。果てない欲望と本能だけを頼りに、負け犬たちの戦争が始まる!」という商品紹介。明日美としのぶは元々知り合いでしたが、20歳そこそこの渚は3人とは一切無関係。史郎はおしぼりを届けに明日美の勤め先であるラブホテルに出入りしていたので顔見知り程度。この一見無関係な4人が合流し、強盗を計画し、その後に史郎が娘を殺された復讐のために自分の属していた九條組に戦争を仕掛ける、というのがストーリの大筋ですが、それだけで終わらず、意外なラスボスが最後に登場し、真相の一面を明らかにするのに驚愕を覚えました。
全体的な話運びとして「起承転ー起承転ー起承転転転結」みたいな感じでした。クライムアクションなので、なんというか死体がゴロゴロ半端なく出ます。やめとけばよかったという後悔もすでに遅く、途中まで読んだらやはりどこに話が辿り着くのか見届けずにはいられない、つまり「はまって」しまったので、最後まで一気読みでした。
ミステリの気分だったから横溝正史ミステリ大賞受賞作品を選んだわけなんですが、「これもミステリなの?」という疑問はぬぐえず、気持ちがざらつき過ぎて読後感は最悪。でも思わず「はまってしまう」筆致・ストーリー展開はやはり賞を取るだけのことはあると思います。「欲望むき出しの人間は怖い」というのと、「一度スイッチが入る、またはリミッターのようなものが振り切れてしまうと人間は豹変し、いくらでも残酷なことができる」というのがこの本を読んで改めて確認した結論ですね。その豹変の過程の描写が説得力ありました。
葬列
2003/06/18 23:04
壊れた女、ワルいオンナが魅せる!
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る
体が不自由になった夫と静かに暮らす三十路の地味な女、明日美。ラヴホテルの従業員をしている明日美のところに、古い知人のしのぶがこう囁く。「一緒に現金輸送車でも襲わへん?」拒否する明日美だが、そこへ度胸のすわった女・渚が加わり、非日常へと歩き出していく。
一方、気の弱い男・史郎は、がらでもないのにヤクザの下っ端として使い走りから鉄砲玉までさせられ、身内にハメられてヤクザと警察の双方から追われる身となる。
パッとしない平凡な日常に見切りをつけて、進んで犯罪に手を染めていく女たちと、望まずしてのっぴきならない状況に追いつめられる男。彼と彼女たちの運命は、どう交錯していくのか!?
スピードのある展開と、事件につぐ事件、そして読みやすい文章で一気に読める。しかし、どうしてもヒロインたちに都合の良すぎる嘘っぽい展開が気になってしまう。
確かに、渚には凄絶な魅力がある。並はずれた吸引力を持つダーク・ヒロイン渚をもっと初期から中心に出して欲しかったが、このように理解を越えた存在である渚の過去と心情が、少しづつ明らかになっていくのもまた一興だろうか。明日美と夫との関係や、しのぶの明日美に対する遺恨など、物足りなく感じる部分もあるが、とにかく渚。彼女の不器用であるがゆえの純真さ、トラウマを持つがゆえの敬虔なまでの暴力への希求が鬼気迫る。すごいヒロインが生まれたものだ。生死のやり取りに恍惚となる、ブラックな快楽を味わえる1冊であった。