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バベル消滅
著者 著者:飛鳥部 勝則
島の版画館で警備員として働く風見国彦は、毎日決まった時間に訪れるセーラー服の美少女に気づく。閉館までアントニスゾーンの版画『バベルの塔の崩壊』の前に立ちつくしている少女に、風見は興味を抱く。同じ頃、島では連続殺人事件が発生。殺人現場には必ず『バベルの塔』の絵が残されていた。事件の犯人は誰か、バベルに秘められたメッセージは何か、そして美少女との関係は? 自作の絵画と小説を融合させるという新しい試みで注目を集める作家の、ミステリ・マインド溢れる一作。
バベル消滅
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2024/08/28 08:18
ミステリーへのこだわりが枷になっているのでは?
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投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の絵画が使われた珍しいミステリー。殉教カテリナ車輪では図像学や図像解釈学と結びつけた展開が新鮮だったが、今回は何もない。なーんもない。製作年の若いバベルの塔の記号だけが重要でした、はい。
……いや、バベルの塔を巡る解釈はむしろ充実していたはずだ。解釈も程よくストーリーに馴染んでいる。なのに読後感は「何もない」になってしまった。どういうことだろう。
それは単に、作中のバベルの塔は狂気と混乱にのみかかわるからだ。
バベルの塔は、事件を決着に導く理性からは、余りにもかけ離れている。
内容も筋が通っている。しかし、この内容で面白さを引き出すなら、ミステリーよりもサスペンスに振り切って欲しかった。この物語の推進力は、犯人を狂気へと駆り立てた境遇や偶然にある。つぎはぎだらけで補った叙述でもって真相を煙にまくのはミステリーではよくあるとの言い分まで本文に出すくらいなら、そんな小細工抜きに犯人目線で気持ちよく狂う様子を追ってみたかった。