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サリン事件死刑囚 中川智正との対話
著者 著者:アンソニー・トゥー
松本サリン事件・東京地下鉄サリン事件では日本の警察に協力し、事件解明のきっかけを作った世界的毒物学者。
彼は事件の中心人物で、2018年7月に死刑となった中川智正と15回に及ぶ面会を重ね、その事件の全容を明らかにした。
中川氏との約束に基づき、このたび緊急刊行。
第1章 サリン事件解決に協力する
第2章 オウムのテロへの道のり
第3章 中川死刑囚との面会
第4章 中川死刑囚の獄中での生活
第5章 オウムの生物兵器の責任者、遠藤誠一
第6章 オウムの化学兵器の中心人物、土谷正実
第7章 麻原の主治医、中川智正
第8章 3人の逃走犯
第9章 中川死刑囚が語るオウム信者の人物像
第10章 上九一色村とサリン被害者の現在
第11章 オウム事件から学ぶ、将来への備え
第12章 中川氏最後のアクティビティ
サリン事件死刑囚 中川智正との対話
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サリン事件死刑囚中川智正との対話
2018/08/28 00:34
出会う人を間違っていなかったらと思わずにはいられない内容でした
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Nagi - この投稿者のレビュー一覧を見る
私はリアルタイムで一連の事件の時代に生きていて、日比谷線や松本市とは縁もあったため、この事件当時に感じた世間の雰囲気を今でも鮮明に身近で起きた事件として記憶しています。
でも、その時代を生きてきた人でも知らないまま今日まで来てしまったことが多々あるのではないかと思わせる内容でした。
少なくても私はこの本で初めて知ったことが多かったです。
中川氏や土谷氏は、出会う人さえ間違っていなければ…本書の著者であるトゥー博士を始めとした方々と先に出会えていたら、日本が誇れるほどの素晴らしい化学者や医師であったかもしれません。
トゥー博士が、一個人として中川氏と15回にわたる面会や手紙を交わすやり取りを読むと、中川氏や土谷氏は、ある意味で「ごく普通の人」だと感じられました。
言い換えれば、誰もがひょんなことから道を踏み外す可能性を持っているとも思わせる怖さがありました。
中川氏はマインドコントロールから少しずつ解放され、世間からすればまだ記憶に新しい金正男氏のVXによる暗殺についても貢献しています。
恩赦を期待しての偽善かと問われたこともあるようですが、トゥー博士とのやり取りなどを見ると、彼は過去の行いへの悔恨と償い、同時に医師として化学に携わった人間としての自負心などが原動力となっていたのであり、決して減刑が目的ではなかったのだと感じられる内容のやり取りが書かれていました。
また、本書では、一般の人には意識されたこともないかもしれない、死刑囚に対する厳しい制約なども仔細に書かれています。
ごく限られた人とごくわずかな面会時間しか許されない中で、死刑囚は自分自身や犯した罪と向き合わざるを得ない環境の中で過ごしているのだと本書で初めて細かく知ることができました。
林氏や中川氏の能動的な捜査協力により、事件が起こるまでの経緯や動機の一部が推測され解明もされていたのだと解釈しましたが、やはり部分的でしかなく、全貌を把握しているのは麻原氏本人と、彼の側近で刺殺されてしまった村井氏だったようで、改めて村井氏が存命であればと思ってしまう記述もありました。
情報の重複や校正ミスなどが散見される本書ではありますが、「過去に起きた大きな事件の解説書」として読むだけでなく、トゥー博士と中川氏のやり取りの中から、自分の存在価値や承認欲求の満たし方を間違えてしまうと、またあの悲劇が起こりかねないという危機感を持たせる内容にも感じられました。
若い世代の人にとっては「歴史」に近い感覚でこの事件を受け止めている方もいるでしょうが、実は時代を超えて常に隣にある落とし穴でもあると感じてもらうきっかけになればという気持ちを湧き立たせる内容なので、若い世代の方にも読んでいただきたいと思う内容でした。
そして最後に、改めて被害を受けた方々やそのご家族ご遺族の皆さまに哀悼の意を表します。
2018/08/18 19:49
非常に心に残る内容だった
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:滝のしらたき - この投稿者のレビュー一覧を見る
オウムの事件が起きた頃、私はまだ小学生で漠然とした記憶しかないが、ひどいテロ組織だとは、思っていた。
13人の死刑執行を機に、オウム事件が気になりいつくかの本を読んでいて、これもその1つだったが、非常に心に残る内容だった。
中川智正がオウムの幹部で事件に関わっていた頃と今の自分は同世代に当たるが、彼が優秀で非常に真面目だったからこと、巻き込まれてしまったように思えてならない。これは林郁夫にも当てはまると思う。
中川智正の最後のメールには涙するものがあるし、死刑というものについても、とても考えさせられる。
結局麻原は何も話さず、村井も殺されてしまったので、全容解明は難しいが、同じように悲しい事件、被害者、加害者を生み出さないためにも、しっかりとした議論や考えが、ひとりひとりに求めらると思った。