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江戸川乱歩全集
著者 江戸川乱歩
何をやって見ても、一向この世が面白くない。そんな男が発見した最後の楽しみ。それは屋根裏を歩きまわり、他人に見せない醜態をのぞき見ることだった。淫靡な快楽の虜となった男が、ついには完全犯罪を目論むが!? 表題作の他、「二銭銅貨」「D坂の殺人事件」「人間椅子」など最初期の傑作群を収録。【この電子版は、註釈と「私と乱歩」を割愛しています】
わが夢と真実~江戸川乱歩全集第30巻~
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江戸川乱歩全集 第23巻 怪人と少年探偵
2011/09/11 15:26
明智先生バンザーイ、小林団長バンザーイ
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は光文社が取り組んだ『江戸川乱歩全集』の第23巻目である。本全集の特徴は大人向けの「エロ・グロ・ナンセンス」ものも子ども向けの「少年探偵団シリーズ」、さらには随筆までもまとめているところにある。本巻は少年探偵団シリーズの「おれは二十面相だ!!」、「怪人と少年探偵」、「妖星人R」、「超人ニコラ」と随筆「探偵小説の謎」を収載している。
少年探偵団シリーズは、世代を超えた少年少女に読み継がれてきた名作だろう。少年少女の頃に愛読したものも今少年少女という年頃のものにも面白く読めることは疑いない。かく言う私も少年の頃にポプラ社が出版したこのシリーズを読み漁ったものだ。
少年探偵シリーズの筋は、ある意味単純である。何かしら事件が起きる。そこには怪人や怪物めいた奇怪なものが絡む。そこに少年探偵団の誰から巻き込まれる。そこにまずは小林団長が現れ、最終的には明智小五郎の登場とあいなる。怪人や怪物めいた奇怪なものは、明智小五郎により怪人二十面相の変装したものと暴かれ、彼の逮捕で万歳と終わる。しかし、二十面相はしぶとく脱出して、次の事件へと繋がる。
今読むと筋はほぼ同じものであるが、いろいろと捻られたトリックの数々が江戸川乱歩の真骨頂と言える。そして、乱歩小説を支えるトリックの数々をまとめた随筆が「探偵小説の謎」だ。ここには国内外の探偵小説のトリックを網羅している。紹介されているトリックの生みの親としては、コナン・ドイルやエドガー・アラン・ポーのような有名どころもいれば、国名しか記されないような無名の小説家もいる。
「探偵小説の謎」にあるトリックは、形を変えたり、着想を得たり、あるいはそのままの形で江戸川乱歩の小説に生かされている。『江戸川乱歩全集』第19巻の「黄金豹」にある列車の一両をそっくりそのまま消失されるトリックは、イギリスの無名作家の着想を応用であることが「探偵小説の謎」を読めばわかる。
『江戸川乱歩全集』の楽しみ方は様々だろう。1つは昔を懐かしむ楽しみ方がある。これは印刷を改めることで当時のままに甦る活字の特性が活かされていると言えよう。時代は変わっても、江戸川乱歩が紡ぎ出した文章はそのまま色褪せることがない。少年少女の時に楽しんだ文章は、昔を思い出させてくれる役割をも果たしてくれる。また、純粋に今読む楽しみもある。新たな気持ちで江戸川乱歩を読む。一度読んだこともある読書にもきっと新たな発見や驚きがあるだろう。
さらに「探偵小説の謎」から乱歩が仕掛けたトリックそのものを追及する楽しみ方もあると考える。「探偵小説の謎」を収載しているところが、本全集の中から本書を評する理由である。まず、本書に目を通し、トリックについてある程度理解したうえで全集を読破するのも一興であろう。ただし、最後までトリックの謎解きを試みながら読み進めたい人は、光文社文庫の『江戸川乱歩全集』の中では本書を最後に紐解いた方がいいかもしれない。いずれにせよ、本書には単に探偵小説を楽しむ以上のエッセンスが詰められていることは間違いない。一読をお薦めしたい。
江戸川乱歩全集 第26巻 幻影城
2004/08/12 20:50
謹聴、謹聴。乱歩翁、海外探偵小説について大いに語る
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
1951年(昭和26年)刊行、探偵・推理小説の巨星、江戸川乱歩の評論集です。
読み進めながら、「奇妙な味と称されるミステリー、特にその手の海外ミステリー短編へ私を導いてくれたルーツは、この書の中にあったんだな」と、改めてそう思いました。
本書の中の、「英米短篇ベスト集と〈奇妙な味〉」の一章。ここで取り上げられ、乱歩翁がその「奇妙な味わい」について語っている短編群は、創元推理文庫の『世界短編傑作集』の5冊に収録されているんですよね。中学生の時、そのアンソロジーを読んで、「へえっ。海外には、こんな味わいの小説があるんだ。がつんと一撃食らわせられたり、ぞくぞくさせられる妙な味わいがあったりして、面白いなあ、これは」と感じた当時の気分が、なつかしく甦ってきました。
戦後間もない昭和20年代。海外の探偵小説、怪談作品を興の赴くまま、あれこれと読んでいった乱歩翁。
その作品のどの辺が面白かったのか。この種の探偵小説(今で言うところのミステリー小説)のジャンルとしての味わいは、どの辺にあるのか。この作品とあの作品を比べてみると、探偵小説としてどちらがより魅力的だろうか。
といったことを書かずにはいられない、そんな気持ちで熱を込めて書き綴っていく乱歩翁。幻影城の主の、探偵小説への愛着と熱意が、行間からひたひたと伝わってきます。
ただし、取り上げた探偵小説の話の筋、トリックの妙味などをかなり詳しく語っているところがあるので、クラシックな海外ミステリー、特に本格作品をまっさらな気持ちで読んでいこうと考えている方には、不向きの評論集かもしれませんね。
でも、私にとって本書は、小泉喜美子さんの『メイン・ディッシュはミステリー』(新潮文庫 ※絶版。なんでなんだあ!)とともに、最もシンパシーを感じる海外ミステリーの評論・エッセイ集です。
乱歩翁が住まう「幻影城」が今でもあったなら……門番か、できれば執事として雇ってもらいたい、そしてこうした夏の夕べ、時には城主と探偵小説について言葉を交わすことができれば……うーん、なんて贅沢なひとときだろう。
本書の頁をめくりながら、ふと、そんな「夏の夜の夢」を見ていました。
あっ、言い忘れるところでした。江戸川乱歩の作品に愛着がある方、もっと乱歩のことを知りたくなかった方、そんな方におすすめのムック本があります。
『文藝別冊 江戸川乱歩——誰もが憧れた少年探偵団』(河出書房新社 2003年刊行)。国内の探偵小説のこちらも巨星のひとり、横溝正史に宛てた乱歩の書簡も掲載されています。
2024/08/20 00:46
すごい世界観
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キュアリズム - この投稿者のレビュー一覧を見る
乱歩は作品作りの苦労話をよく書いているが、
それにしてもこの独自の世界観や設定は圧巻だ。
「闇に蠢く」はまさかそんな話とは思わず
後半びっくり。
「湖畔亭事件」はトリックが面白い。
そのほかにも読み応えがある短編が収められているが
「パノラマ島綺譚」はやっぱり面白い。
ところで電子書籍だけなのか、
カバー、装丁が変わってますね。
紙の本の全集の方の装丁の方が
私は好きです。