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9件
人間失格
著者 太宰治 (著)
「恥の多い生涯を送ってきました」3枚の奇怪な写真と共に渡された睡眠薬中毒者の手記には、その陰鬱な半生が克明に描かれていた。無邪気さを装って周囲をあざむいた少年時代。次々と女性と関わり、自殺未遂をくり返しながら薬物におぼれていくその姿。『人間失格』はまさに太宰治の自伝であり遺書であった。作品完成の1か月後、彼は自らの命を絶つ。
人間失格
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人間失格
2015/06/05 10:46
おすすめ
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:一匹狼 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間失格はいろんな文庫で読みましたが、私はこの集英社文庫が一番おすすめです。表紙はちょっと、イメージと違いましたが。
おすすめの理由は解説の部分です。太宰治の娘さんの太田治子の文章が載っていて、太宰の子ども目線での人間失格が綴られていて非常に面白かったです。新しい目線で人間失格を読めた気がしました。この本に強烈な先入観を持っている人にこそ読んで欲しいです。
巻頭にある写真も眺めていて楽しかったです。太宰、イケメンですね…
人間失格
2016/12/05 18:42
太宰治の世界観
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぺんたろう - この投稿者のレビュー一覧を見る
今回の人間失格が私が読んだ初めての太宰作品であった。元々友人に薦められていたので、読むことが叶ってよかった。人間失格を読了して感じたことは、文豪と呼ばれる人物はこんな視点から世界を切り取ることができるのかという感動である。私などは普段何気なくこの世界に生きているが、太宰治ともなれば世界の見方も常人とはかけはなれており、さらにすごいのはその感覚を文章で正確に表現できることである。この作品をきっかけに他の文豪と呼ばれる人物たちがどのように世界を切り取っていたのか、興味が強く湧いてきた。
人間失格
2011/02/21 19:16
共感の1作。
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BH惺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者の遺書的作品と言われているようですが、自分はそうは感じませんでした。そんなに太宰治に精通しているわけではなく、思い入れも無いのでそう感じただけかもしれません。
ただ、大変良く出来た作品だな、と。仮に、もし遺書的作品ならば、もっと感情的な部分が全面に押し出されて内容破綻な展開になると思うのですが、この作品、起承転結で言うならば、起と結部分が第三者視点で、承と転部分が主人公の一人称視点・独白といった、とても凝った構成のよく練られた作品だと思いました。
ひと言でいうと主人公・葉蔵の幼少時から転落までの半生譚。
その彼の根本的な人格に決定的に欠落していたモノ。それは自我だと思った。それがあまりにも無いがゆえに、すべて他力本願の人生を歩まねばならなかった悲劇。
幼少時から道化の仮面を被らなければ生きてゆけなかった彼の苦悩の根源て何だったんだろう?
家父長制度の強力だった当時の、絶対的な父親の存在? 抑圧? 要因はいろいろあるんだろうけれど、あまりにも生きる力に欠け、意志薄弱すぎたのがその後の彼の人生の不幸を決定づけてしまったように思えた。
酒に逃げ、女性に逃げ、自分自身にも逃げ続けた葉蔵の行きついた果ては精神的虚脱。そして皮肉なことに、自分自身を「人間失格」と自覚した瞬間に初めて彼の裡に育ちつつあった自我を見たように思う。
半ば自虐的に自分の人生を冷静に見つめ、回顧する葉蔵の姿は決して破滅的ではない。人間として生きる上で誰もがぶち当る壁に苦悩し、あがきつづけるその姿はむしろ共感に値する。ただ、お坊ちゃん育ちの彼は、逆境から這い上がるという強さが無かっただけで。
葉蔵というキャラクターは作者自身を投影した姿だと言われているけれど、それは作者だけではないと思う。万人がどこかしら自分に当てはめ、共感・投影し得る部分があるのではないかなと。それがこのテーマの不変性でもあると思う。
「恥の多い生涯を送ってきました」
ある程度の人生を送ってきた人物ならば誰しも納得するこの言葉。生きている以上、恥の無い人生なんてまずあり得ないから。冒頭のこの一文で自分は思いっきりこの作品世界に引き込まれてしまいました。
「人間失格」……誰でも失格な部分はあると思う。むしろ完璧な人間の方がめずらしい。
好き嫌いが分かれる作品だと思いますが、自分的にはとても満足な作品。あくまで個人的見解ですが、一般で認識されているような自殺願望作品ではないと思いました。
BIBLIO HOLICより