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荒蝦夷
著者 熊谷達也
宝亀五(西暦七七四)年、陸奥国の北辺には不穏な火種がくすぶっていた。陸奥を支配せんと着々と迫り来る大和朝廷。そして、その支配に帰属する、あるいは抵抗する北の民、蝦夷。動乱の地に押し寄せる大和の軍勢の前にひとりの荒蝦夷が立ちはだかった。その名は呰麻呂(あざまろ)。彼が仕掛ける虚々実々の駆け引きの果て、激突の朝が迫る――。古代東北に繰り広げられる服わざるものたちの叙事詩。
荒蝦夷
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荒蝦夷
2008/02/03 22:19
呰麻呂、阿弖流為、母礼等、田村麻呂等にかかる霧を晴らす傑作
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
荒蝦夷の蝦夷(えみし)とは、古代から中世に掛けて朝廷に従わない陸奥の住民に対しての蔑称である。彼らは奈良時代から平安時代にかけて朝廷に帰服することに抵抗してきた。今まで高橋克彦の描いた陸奥の国にどっぷりと浸かっていたが、熊谷達也という作家が描いた新たな蝦夷の陸奥が誕生した。
本書では、平安時代初頭の反乱の大将である伊冶公呰麻呂と阿弖流為を中心に描いている。主人公は呰麻呂である。熊谷は、呰麻呂と阿弖流為とを親子という設定にしている。物語の始まりは丁度、呰麻呂が乱を起こして決起するところである。これが後の阿弖流為と坂上田村麻呂との戦いに発展していく。もっとも、戦いといってもそれほどの戦にはならなかったと聞く。この部分の国史である『日本後紀』が散逸しているので、戦いの様子は不明であるそうな。
高橋克彦はすでに『風の陣』、『火怨』などで奈良、平安時代から続く陸奥の独立戦争の様子を小説にしている。さらに、沢田ふじ子も『陸奥甲冑記』で阿弖流為を描いている。
これらを年表から見ると、伊冶公呰麻呂が反乱を起こし、国府の多賀城まで攻め込んだのが780年で、阿弖流為が征夷大将軍、坂上田村麻呂に下ったのが802年である。
この間、22年であるが、呰麻呂が乱後はどうしたのか、阿弖流為との関係はどうであったのかなど、謎は多い。本書はその間を小説にして著したものである。
朝廷軍に対抗する蝦夷の酋長たちの駆け引き、朝廷に対する蝦夷も必ずしも一枚岩ではなかったという舞台設定である。それゆえに阿弖流為は田村麻呂に投降したという論理構成である。
さらに、阿弖流為のパートナーである盤具公母礼等が女性であったという仮定も面白い。さらに母礼等は巫女であったというのも、史実が定かではないこの時代に神秘のベールを一枚掛ける役割を果たしていよう。
荒蝦夷
2023/04/26 14:20
東北 蝦夷(えみし)を蔑んでいるような本
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トマト - この投稿者のレビュー一覧を見る
これでは、中央(朝廷)が東北に住む民を「鬼」として認識していた通りの蝦夷の描き方で、未開の民としか思えない表現ばかりです。
文化も知恵もあり、平和を愛する民の住む東北を貶めるようなところが多く、ガッカリです。
読んでいて胸が悪くなるような描写が、とくに蝦夷の女性に対してあり、怒りに似たものを感じました。