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二人キリ
著者 村山由佳
その女は愛する男を殺し、陰部を切り取り逃亡した――
脚本家の吉弥は、少年時代に昭和の猟奇殺人として知られる「阿部定事件」に遭遇。
以来、ゆえあって定の関係者を探し出し、証言を集め続けてきた。
定の幼なじみ、初めての男、遊郭に売った女衒、更生を促した学校長、被害者の妻、そして、事件から三十数年が経ち、小料理屋の女将となっていた阿部定自身……。
それぞれの証言が交錯する果てに、定の胸に宿る“真実”が溢れだす。
性愛の極致を、人間の業を、圧倒的な筆力で描き出す比類なき評伝小説。
作家デビュー三十周年記念大作!
二人キリ
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2024/09/26 17:44
ショセン私は駄目な女です
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和史の最も有名な猟奇事件といえば、
やはり昭和11年(1936年)5月に起こった「阿部定事件」だろう。
愛人であった男を殺し、その男根を切りとった事件、
昭和11年があの二二六事件が起こった年ということもあって
余計に語られることが多い。
事件を描いた映画だけでも何本も作られ、
中でも1975年に公開された田中登監督の「実録阿部定」は評価も高い。
この作品で阿部定を演じたのは、宮下順子さん。
それからどれだけ歳月が流れただろう。
阿部定自身は事件のあと刑期を終えて出所したが、それでも世間の目にさらされ、
最後は昭和46年、当時働いていたホテルから「ショセン私は駄目な女です」と書き残し、
失踪し、その生死は不明となった。
もちろん、さすがにもう生きてはいないだろうが、
それでも彼女の生きざまは創作者の心を揺さぶるのであろう、
村山由佳さんによって2024年に一冊の本となって描かれることになる。
タイトルの『二人キリ』は、
阿部定が殺した男の遺体のそばに書き残した「定吉二人キリ」がとられている。
定と犠牲になった男の名前は本名だが、その他の関係者の名前は変えられている。
名前を変え、おにぎり屋で働く彼女と接触しようとする男を創作することで、
物語がうまくまわっていく。
「昭和」というすでに歴史化された時代に生きた女を描こうとすれば
やはりそういう手立てが必要になるのだろう。
長編となったこの作品を読み終えて、
もはや「阿部定」は昭和のゴチック体の記号に見えてきた。
そして、その記号はあまりに切ない、女の匂いがする。
2024/04/02 23:05
びっくりしました
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
あの阿部定事件が、ドキュメンタリーみたいに書かれていて。これ、小説では有りませんよね?これを読むまでは、単なる猟奇的事件、位にしか思ってなかったです、しかし……。感想は、びっくりしました……でした。