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2件
【シリーズ】黄金の服
著者 佐藤泰志 (著)
復活した悲運の作家の青春小説集
泳いで、酔っ払って、泳いで、酔っ払って…。夏の大学町を舞台に、若い男女たちが織りなす青春劇。プール、ジャズ、ビール、ジン、ラム、恋愛、セックス、諍い、そして暴力。蒸し暑い季節の中で、「僕」とアキ、文子、道雄、慎の4人は、プールで泳ぎ、ジャズバーで酒を飲み、愛し合い、諍いを起こし、他の男たちと暴力沙汰になり、無為でやるせなく、しかし切実な日々を過ごす。タイトルの出典であるガルシア・ロルカの詩の一節「僕らは共に黄金の服を着た」は、「若い人間が、ひとつの希望や目的を共有する」ことの隠喩。僕たちは「黄金の服」を共に着ることができるのだろうか?
他に、職業訓練校での野球の試合をモチーフとした「オーバー・フェンス」、腎臓を患って入院している青年の日々を描く「撃つ夏」を収録。青春の閉塞感と行き場のない欲望や破壊衝動を鮮烈に描いた短篇集。「黄金の服」と「オーバー・フェンス」は芥川賞候補作品。
黄金の服
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黄金の服
2017/09/06 14:33
山下敦弘監督映画化原作
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
「オーバー・フェンス」が秀逸です。短く美しい函館の風景とともに、それぞれの旅立ちを感じることができました。
黄金の服
2011/08/01 13:21
若者たちのけだるい夏を描いて見事な表題作、佐藤泰志「黄金の服」。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
3編収録。やはり芥川賞の候補にもなった表題作「黄金の服」が一番
いい。「泳いで、酔っ払って、泳いで、酔っ払って」を繰り返す男女の
ひと夏の物語。主人公の義男は24歳、大学生協の書籍部に勤める彼は、
その大学の学生である道雄や慎と毎日のようにプールで泳ぎ、夜はジャ
ズバーで酒を飲んでいる。義男が惹かれているアキは離婚経験のある2
つ年上の女。慎が心を寄せる文子もそこに加わる。リアルな会話と何か
が起こりそうで起こらない日々。5人の造形の見事さと佐藤らしい巧み
な表現で、いつの間にか物語に引き込まれていく。けだるい夏のけだる
い毎日、やり過ごすように日々を消費していく若者たち。彼らには夢や
希望はあるのだろうか?義男とアキの恋の行方は?ラスト、心を残しな
がらもすべてを受け入れる主人公の姿に共感する。この小説ではいたる
ところに作者の姿が透けて見えるような気がする。それは、珍しくつい
ている「あとがき」のせいだろうか。
「オーバー・フェンス」は職業訓練校を舞台にした話。タイトルにし
てもラストにしても作者の意図があらわになり過ぎていて残念。これも
芥川賞候補だというが、どうだろう?「撃つ夏」は入院中の男が主人公
で、同室の男や友人とのやり取りがなかなかいい。