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11件
影踏み
著者 横山秀夫 (著)
「双子というものは、互いの影を踏み合うようにして生きている」……ノビ師・真壁修一の相棒は、父母とともに炎の中で死んだ双子の弟の「声」。消せない過去を背負いながら、愛する女のために義を貫き、裏社会に葬られた謎に挑む、痺れるほどに哀切な「泥棒物語」。累計50万部を突破した著者渾身の超1級クライム・ミステリー、待望の電子化!
影踏み
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2015/02/04 11:09
ライトノベル風?
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:philia - この投稿者のレビュー一覧を見る
一人の人物に、二人の魂
この設定に違和感を感じるかどうかで評価は分かれると思います。
しかし、決して著者の作風から大きく外れているわけでは無いと思います。収録してあるどの物語も、「横山さんらしい」展開ですし、ファンなら恐れず買ってもいいです。
泥棒を主人公にしたものがもっと読みたいなと思わせるほどよく出来ていると思います。
2019/12/02 14:44
ユニークな発想!
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆうと - この投稿者のレビュー一覧を見る
横山さんの話は、暗そうなんだけれど最後まで読むと、あったかくなるんだよね。
この小説もそこに期待して読みました。
期待通り!双子の兄弟の会話も、なかなか面白いし、かなり冷たい感じの主人公が人情に流されて泥棒を重ねていくところが、微笑ましい。
法律が必ずしも正ではない、そんな風に感じた一冊でした。読んでよかった!
影踏み 推理小説
2007/05/23 08:27
読者を楽しませる工夫が随所に
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
窃盗犯の中でも忍び込みと呼ばれる盗犯を専門とする主人公。忍び込みとは家人が就寝中に在宅であっても住宅に侵入して、金品を窃取するという罪種である。本書はこの人物を主人公とする6編の連作小説である。
これまで横山秀夫の小説を読んできたが、横山は様々な工夫と一般には知られていない警察内部の有様を小説として描いてきたという認識がある。その切り口と情報の新鮮さで読者の注目を浴びたわけである。本書でも知られていない情報や新鮮さという点では現役の盗犯を主人公にするところにそれらしさが出ているのかも知れない。
単に忍び込んで金品を盗むだけでなく、スパイ大作戦さながらに、金品以外の証明書などの重要書類を盗んだり、子供のクリスマス・プレゼントを気付かれずに置いてきたり、希少な話題には事欠かないし、主人公は単なる盗犯ではなく、そのテクニックを生かした仕事をやってのける。大変面白く読めた。
私は暴力沙汰を描写したり、暴力団の内部を描いたりすることにはまったく興味がない。その点で趣味に合わないところが多かったのも本書の特徴だといえる。特徴と言えば、主人公はつねに単独犯ではあるが、母親が無理心中を図って死んだ双子の弟が常に傍らにいて、主人公に語りかける。時にはアドバイスだったり、ときにはけしかけたりと様々で、一心同体なのである。
行動をとる以前、以後に弟と語り合って、行動について評論、評価している。一見リアルに見えるこの物語なのだが、こういうところでは突然読み手の調子が乱れてしまう。誰と話をしているのかが理解できないのだ。違和感がある。
趣味に合わなくとも、違和感があっても、小説としての独創性と工夫には敬意を表したい。読者の意識を考えて、退屈しないような工夫を随所に施している。材料の新鮮さも大事なのだが、その料理の仕方も丁寧で読者に伝わってくるようだ。タイトルの付け方、構成、盛り上げ方にそれがよく出ていると思う。
そういう目で次回以降の作品を多角的に眺めてみるのも一興で、この種の作品を書ける作家も現実にはそう多くはないのである。