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10件
白い巨塔
著者 山崎豊子 (著)
国立大学の医学部第一外科助教授・財前五郎。華麗なるメスさばきでマスコミでも脚光を浴びる彼は、当然、次期教授に納まるものと自他ともに認めていた。しかし現教授の東は、財前の傲慢な性格を嫌悪し、他大学からの招聘を画策。産婦人科医院を営み医師会の役員でもある岳父の財力とOB会の後押しを受けた財前は、あらゆる術策をもって熾烈な教授選に勝ち抜こうとするが…。教授選挙に絡む利権をめぐり蠢く人間模様を描いた医療サスペンスの傑作!
白い巨塔(五)
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白い巨塔 新装版 2
2004/02/04 18:41
人であると言う者、医者であろうとする者
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浅基 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1巻を読んだ方でドラマがきっかけだったと言う方は、僅かな違和感を覚えたと思います。ですが、2巻ではもっと違和感を覚えるのではないでしょうか。原作は原作、ドラマはドラマとは言っても、やはり比べてしまうのですよね。
2巻では人の醜さが一層目立っています。あまりにも自分勝手な行動に、呆れてしまいそうになることもしばしば。ただ、里見が好きな方は喜んでください。里見が表舞台に出始めます。
全5巻の中、2巻がどこに位置するのかを簡単に書くと、教授選考会で教授会へ推薦する候補者の選定するところから財前が国際外科学会へと旅立つ日までです。
教授となり我が世の春を謳歌する財前には、怖いものも遮るものも何もない。たくさんの人間と事実が彼を助長させ、彼の万能感を肥大させていく。本当に彼を大事に思うもののつぶやきを無視し、未来を信じて上り続けようとする財前に、嫌な感じを受けました。それと同時に、ひたひたと近づいてくる影にやりきれないものも感じる。その声に耳を傾けていれば、彼には影など存在せず、いずれ望む姿を手に入れられただろうにと…。
財前が教授になってからは里見も強く現れだします。常に医者としてのあるべき姿を追い続ける里見と、医者も所詮は人であるという財前。この先に待ち受ける事実が2人をどう翻弄するのか、楽しみでなりません。
2019/01/06 12:02
財前と里見の対比がよく現れている第二巻です。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:御室 みやじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
教授選を巡る票の行方はもちろん、人生の考え方なども含めて、根本的に財前と里見は対比していきますよね?
そんな中で、里見は、教授選などの雑音に耳を貸さず、一心不乱に研究に打ち込んでいます。教授選の決選投票で財前が圧勝し、金沢大学の菊川教授が落選した時も、残念だった様子ですね。
財前が教授になってからの第一外科医局の雰囲気もがらりと変わり、中でも、第一内科の里見から回ってきた患者の診察以降、彼の尊大さがむき出しになってきます。
教授になってからも、患者さんと向き合う姿勢は変わらないはずなのに・・・
また、柳原という医者が断層撮影を申し出ても、却下。一言でいえば、財前はプライドが高いのです。
ドイツの国際外科学科界へ出発前も、里見からの申し出を無視する態度なども含めて、財前は思い上がった主人公なんだなと第二巻を読みながら感じました。
白い巨塔 新装版 1
2003/11/25 02:07
今もって新鮮に読まれる理由
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぱんだ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んでいて、一番、驚いたのはこの本が昭和40年、
いまから40年近くも前に書かれた
ものであること。
もう、30近くになる私が生まれる10年も前に書かれたということ。
なのに、なぜ、今もって新鮮に読まれるのはなぜだろう。
昨年ごろから「ブラックジャックによろしく」などの医療漫画が
医療の内部事情を語るものとして話題を呼んでいる。
私も何冊か読んでみたが、確かにびっくりした。あまりにもずさんな
診断、治療。所詮金が優先される医療事情。なんじゃこりゃと病院
を信じきってた自分が、情けなくなったと同時に医者に行くのが
怖くなったりした。この漫画家は偉い、告発して、と思った。
でも、山崎氏は40年も前に同じことをやってのけてたのだ。
この本を読んでみてびっくりした。
フィクションという名を借りて、でも内部事情をつぶさに「告発」している。
患者より自分の名誉を優先する医学部連中、医療ミスの隠ぺい工作、
正義感をもって医療に望む町医者を「冷や飯食らい」を呼ぶ…。
これってまったく「ブラックジャックによろしく」と同じじゃない!!
いや、それより、きつい。フィクションだから? オーバーじゃないの??
所詮ドラマなのか??
いや、事実なのかもしれない…。
当時のことだ。どのように取材できたんだろう? 顔写真をみると、
一見柔和そうな(うちのばあちゃんに似てる)顔がうつっている。
この人はこんなことして、医療機関の裏ボスから何かされなかった
のだろうか??
心配でならない。だって、当時今のように言論は自由ではなかっただろう。
ましてや女性である。当時どのようなセンセーションを巻き起こしたのか。
想像を絶する。
それよりも、びっくりするのは、この本がベストセラーとなり
(うちの実家にもあった)何人の人に読まれ、テレビドラマにも
なっていたことである。
つまり、誰もが医療機関の内部事情を知ったのだ。どう思ったのか?
所詮ドラマ? 大げさ作り事? と解釈されたのだろうか??
この医療の実態をよいものに変えようと思ったのだろうか?
答えはノーだろう。きっと単なる噂話でなにも改良されていない。
40年たった今、「ブラックジャックによろしく」が新鮮なものと受け止められている。
また、医療ミスのニュースは、毎晩のように報道されている。
日本人には、いや、日本医療界に、山崎氏のメッセージはほとんど
浸透していなかった。
情けない、かつ、不思議でならない。
再びテレビドラマ化された今、単なるドラマとして観るか(読むか)
山崎氏のメッセージを受け、行動するか…。答えは明らかだ。
40年後の若者たちに失望されないために、また、そのとき、すっかり老いて、病院漬け
になっている私自身を救うために…。