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6件
ソナンと空人
著者 沢村凜
名将軍のひとり息子として生を享けながら、退廃した生活に甘んじる青年・ソナン。自らの悪事が発端で死に瀕するが、朱く長い髪をもつ神・空鬼(そらんき)のたった一度の気まぐれで、名も知らぬ異国へと落とされる。しかし、その地・弓貴(ゆんたか)では古来からの統治者が反逆者に追いつめられ、全員で討ち死にしようとしていた――。終わったはずの人生から物語が動き出す。執筆4年、1800枚の傑作ファンタジー。
朱く照る丘―ソナンと空人4―(新潮文庫)
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朱く照る丘
2020/11/23 07:07
人の生き方
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あゆ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ファンタジー小説かと思いきや、現実社会の問題点を改めて考えさせられる小説。国や領地の支配者は、独裁的な方が良いのか。国民に寄り添った支配者の方が良いのか。一人の男性・ソナンの人生は、両方の立場から問題点を見つめていく。無理矢理、難しい社会問題を突きつけられる訳でもなく、ソナンの物語を追う過程で、気付けば考えている自分に気付いた。分かり易いソナンの冒険が、様々な困難を乗り越えて行く過程で、人として成長し、人は変われるのかという大きなテーマを抱えながら物語が進む。それぞれの登場人物の性格を細かく書いてあるので、全ての登場人物に対して優しさや本人のこだわりを共感を覚える。重すぎず、軽すぎず、自然と手応えを感じる小説。
運命の逆流
2020/11/23 01:13
元の人生に戻ったソナン
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あゆ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ソナンとして生まれ育った国で見聞きした知識を、空人として生かし、村を束ね、産業振興に尽力し、結婚もして、人との繋がりを深めていく。人は変われるものなのだと思える。希望が持てる物語!しかし 空人として生きる国の事情で外交政策に当たった先は、未来だと思っていた生まれ育った国。その国に帰る事になり、ソナンという人間としての人生に戻る。人から尊敬され、その信頼に答える人格となったソナンが、最低な人であった頃の生活に戻る。周囲の冷たさ、自分の中の葛藤が丁寧に書かれていて、ズンズン引き込まれていく。その冷え冷えした元の人生で、熱い心を隠し持つソナンが行動を抑え、村を恋慕し、父への複雑な愛情も自覚しながら静かに生きる姿には感嘆する。ラストに死んだはずの母親と遭遇もする。作者は次の刊で、ソナンと空人の人生をどうつなぎ合わせ、どんな人生として書き終えるのか、とても楽しみです
鬼絹の姫
2020/11/23 00:58
第2の人生って
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あゆ - この投稿者のレビュー一覧を見る
王都のソナンは人を馬鹿にし、遊びに耽り、時には喧嘩で人を痛めつけた。そして、友の妹を助けようと動いたときには人からの信頼も無く、命を失った。その最低な人生が神によって、命を救われ、第2の人生が始まる。空人という名前の別国での人生が始まる。こんなに信頼関係を紡ぐ事の出来る人間に変われるのかと思うほど、人情厚い、行動的な空人の姿が丁寧に書かれていく。もしかしたら、私も、意識の持ち方で、別人のように人生を変えることが出来るのかも、と思えるほど。その変化を物語は急ぐ事なく一つ一つの出来事を追いながら書き進めていくので、読者も納得する。もう止まらない。督という村長になった空人は、今後 貧しい村をどうしていくのか次に続く