【期間限定価格】アッコちゃんの時代
著者 林真理子 (著)
金と力のある男の欲望を受け止めてやるのは、若く美しい女の義務なのだ。私はそれに忠実だっただけ――。「地上げの帝王」と呼ばれた不動産会社社長の愛人を経て、女優を妻に持つ有名レストランの御曹司を虜にし、狂乱のバブル期の伝説となった女性、アッコ。彼女は本当に「魔性の女」だったのか。時代を大胆に謳歌し、また時代に翻弄された女性を描く、煌びやかで蠱惑的な恋愛長編。
アッコちゃんの時代
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アッコちゃんの時代
2008/12/08 23:11
ワイドショーの向こう側
11人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:楊耽 - この投稿者のレビュー一覧を見る
バブル景気(1986/11~1991/2)の時期に、地上げ王、音楽プロデューサーの愛人として生きた女性の物語です。
バブル景気を内側から描写した小説としては、同じ著者の「ロストワールド」(角川文庫2002/6/25)に続いての第二弾という事になりますが、「ロストワールド」が主に華やかなバブル期を知った女性のその後の歩みを描いているのに対し、本作「アッコちゃんの時代」は、ずばり、
「いかにして、六本木デビューをしたか。」
「いかにして、地上げ王の愛人になったか。」
「いかにして、音楽プロデューサーと知り合ったか。」
など、具体的に彼女の華やかな道のりを語ります。
主人公「アッコちゃん」には、モデルとなった女性がいるそうですが、僕はこの小説をフィクションとして読みました。ワイドショーの話題になるような人の典型例を、実在の人物に代表させて描いたフィクションとして読みました。
そして、アッコちゃんと友達になったような親しさで、彼女の人となりに触れられたような気分が味わえ、大変愉快に読みました。
妻子がいる大金持ちの愛人になる人は「魔性の女」と言われます。彼女は、テレビのワイドショーや僕が通勤電車の車内吊り広告で見かける女性週刊誌で「悪役」として取材記事が載ります。
これらの取材記事には、ときより、心理学者の分析や、関係者の証言が付け加えられますが、それらは番組や雑誌の取材方針に沿って、彼女らを特殊な人間として、解説を加えているだけのように感じられます。魔性の女と言われるからには、魅力的な人物なのだろうと僕は思うのですが、テレビや雑誌は、そんな彼女の魅力を語ってくれません。「本当はどんな人なのだろう。」僕の好奇心を満足させません。
テレビや雑誌のお客様は、視聴者、読者であり、これらは「お客様の望む事を見せる」のがお客様サービス(CS)だ、と僕は理解しています。だから、僕のように、具体的に「彼女の人柄を知りたい。」と欲する人の欲求を満足させてくれないのでしょう。また、実在の人物を取材し、事実を報道することを建前としているこれらの記事には、プライバシーの問題もあり、限界があるように感じられます。
この点において、本作「アッコちゃんの時代」は、小説の特性を最大限に生かし、その可能性を広げた側面があるように思います。
エンディングでは、アッコちゃん自身の感慨として結論的なものが語られます。ここまで読んで僕が思ったのは、
まずは、「僕も彼女のように楽しく生きたい。」でした。
テレビの前に座って、テレビに文句を言いながら生きるのでは無く、自分が楽しい事をして生きたいです。
次に、僕みたいな平凡なサラリーマンでも「林真理子に、主人公として描いてもらったらどんなだろう?」でした。
人は、人に理解されることを「よろこび」として感じるそうですが、僕は、この小説に描かれているアッコちゃんは林真理子に理解され、この小説を読んだ読者にも理解され、幸せな人だと思いました。