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1件
ぐれる!(新潮新書)
著者 中島義道 (著)
欺瞞に満ちた、この善良な市民社会がイヤだ。といって犯罪に走ることも、自殺することも、絶望することもできない──。そういう人は、「ぐれる」しかない。人生の理不尽さを噛み締めて、ぐれて生きていくしかないのだ! 悩める現代人のための新しい哲学の書。
ぐれる!(新潮新書)
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ぐれる!
2003/06/11 15:51
途方にくれる
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2SO4 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ほぼ,全編にわたり「ぐれる」ことの奨励と正しいぐれ方の評釈(それにしても引用が多すぎない?)が書き連ねてあるのだけれども,「それがどうしたんですか」という感じ.
たしかに,人はそれぞれ外見,生育環境,社会的地位などなどさまざまな違いをもって生き,そして何らかの形で必ず死ぬ.予定されている死までの間,いろいろな価値観の中で劣位に自分があると自覚している人はぐれて生きてはどうですか,と著者は呼びかけるが,ぐれる人は(それが著者の審美眼に適ったものかは別として)とっくにぐれているだろうし,ぐれない人はこの本を読んでも,あるいはこの本を手にすることなく,世間と折り合いをつけて生きているはず.
世間の押し付けがましい倫理とか美徳,風潮に沿った生き方に憧れつつ反発し,世間を撃つことで俗な人々の立ち位置を動揺させることの快感を味わう.でも,そういう生き方は,ものを書くことで生計を立てうる作家だとか,まさに著者のような職業でなければできないことなのでは? しかも,著者のぐれることへの目覚めが,それまで「いい子」で通したのに東大で法学部から哲学に転向したことを「人生の転落」と受け止めて,ていうのも何だか権威主義に満ちていて,あまり共感しない.
容姿はもともとパッとしない上,日々髪の毛が薄くなり,腹の肉がベルトに乗るようになってますます醜くなっていく.三流大学出で,ドいなかに住み,周りの有形無形の同調圧力を感じながら,勤め人としてメシを食っていかざるを得ない人(私のことなのだが)は「ぐれましょう」なんて言われなくたってもうすでにぐれています(世に訴えないだけ).ていうか,ぐれてばっかりじゃ生きていけない環境にあることが苦しいわけで,そこに「人生の理不尽を味わい尽くしなさい」みたいなこと言われても「もう飽きてます」としか思えません.
たぶん,中島さんがくだらないことと斬り捨てるであろう「ぐれることの効用」を示さなかったことで,読者は「一体,何が言いたいわけ?」と,俗世への同調と反発の往還を繰り返し,煩悶することでしょう.もしかして,それが狙い?