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8件
ポプラの秋(新潮文庫)
著者 湯本香樹実
父が急死した夏、母は幼い私を連れて知らない町をあてもなく歩いた。やがて大きなポプラの木のあるアパートを見つけ、引っ越すことにした。こわそうな大家のおばあさんと少しずつ親しくなると、おばあさんは私に不思議な秘密を話してくれた──。大人になった私の胸に、約束を守ってくれたおばあさんや隣人たちとの歳月が鮮やかに蘇る。『夏の庭』の著者による、あたたかな再生の物語。
ポプラの秋(新潮文庫)
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ポプラの秋 改版
2016/01/22 04:08
おばあさんとおんなのことてがみのはなし
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
あたしが死んだら運んであげるから手紙書きな。とそれとなく声をかけ続けたポプラ荘のおばあさん。引っ越してきた千秋は、それを聞いて猛然と死んだ父に手紙を書き始める。千秋は毎日手紙を書いた。どんな手紙でもおばあさんは静かに受け取り、箪笥の引き出しにしまう。引き出しがいっぱいになるとおばあさんは死んでしまうと思い込んでいる千秋が、途中手紙を書くペースをおとすのがまたいじらしい。最初は苦手なおばあさんだったのにね。おばあさんの生き様から大切なことを知らず知らず学んでいた千秋。ポプラ荘に育てられた千秋は、幸せ者だね。
西岡さんとオサムくんの静かな夕食の風景。おかあさんに「とてもよかったんだ。幸せそうだったんだ」と説明するのに、「キャンプみたいだった」としか形容できない千秋。でもその言葉が千秋の中では最上の褒め言葉。7歳の女の子の語彙力を的確に表現しているなあと思った。湯本さんにまた惚れ直した瞬間でした。
2018/09/11 02:05
心温まる一冊です
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:summer - この投稿者のレビュー一覧を見る
色んな困難を抱えながらも、愛のある大人たちに見守られながら成長していく主人公が時々自分に重なったりして、優しく包まれる気持ちになるような一冊でした
2024/09/05 16:45
心が洗われる
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なお - この投稿者のレビュー一覧を見る
試し読みをしてから紙の本で購入。
まだ小学生になったばかりの千秋の、あまりにも健気でつらい毎日を覗き見るようで涙を誘われる。
突然父を失くした幼い娘が、母のことを案じてこんなにも必死で頑張っているのに…と思うと、心ここにあらずの母親に怒りさえ覚えてしまうのだが、母親の真情も父親の死の真相とともに終盤で明らかになり、そのことが、大人になって大きな問題をかかえている現在の千秋を救う。
母親との軋轢が長く続いたことは不幸なことではあったが、そこには母親の、娘への全力の愛情があったと思う。
おばあさんは、千秋が幼いからといって子供扱いせず、だがさりげなく大切なことを教えて行く。
周りの人たちも、過剰に関わり過ぎず、ほどよい距離感で千秋を見守る。
こんな子供時代を過ごした千秋が大人になってかかえている問題、そして父親の死の真相は衝撃的だが、終盤に一気に解決してしまうあたりは少し簡単すぎるようにも感じた。
そう遠くない将来にオサムくんとの再会がありそうで最後はホッとした。
心が洗われるような物語だった。