電子書籍
エトロフ発緊急電(新潮文庫)
著者 佐々木譲
1941年12月8日、日本海軍機動部隊は真珠湾を奇襲。この攻撃の情報をルーズベルトは事前に入手していたか!? 海軍機動部隊が極秘裡に集結する択捉島に潜入したアメリカ合衆国の日系人スパイ、ケニー・サイトウ。義勇兵として戦ったスペイン戦争で革命に幻滅し、殺し屋となっていた彼が、激烈な諜報戦が繰り広げられる北海の小島に見たものは何だったのか。山本賞受賞の冒険巨篇。
エトロフ発緊急電(新潮文庫)
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紙の本エトロフ発緊急電 改版
2021/09/22 17:58
戦中の情報戦を描く
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは佐々木の初期の作品群のうちの1冊である。初期の作品群には戦時中のストーリーが数多い。『ベルリン飛行指令』、『ワシントン封印工作』、『昭南島に蘭ありや』、『ストックホルムの密使』などである。いずれも名作で名高い。いずれも外国の地が舞台となっているが、本書は中でも現在、戦争以来ロシアに不法占拠されている千島列島の択捉島が舞台となっている。また、登場人物が別の巻に顔を出すことも多い。
択捉島、国後島、歯舞島、色丹島の北方四島は根室の先にある寒冷の地である。漁場としても有意な島々である。現在はロシア人約三千名が居住している。もう少し詳しく言えば、舞台となっているのは択捉島の単冠湾(ひとかっぷわん)である。単冠湾と聞いてすぐに反応する人は、おそらく年輩者であろう。
米国情報部は日系人スパイを送り込み、本当にこの北の果ての単冠湾に連合艦隊の主力部隊が集結し、ハワイの真珠湾攻撃を敢行してくるのか否かを確かめたかった。この日系人スパイが主人公の斎藤賢一郎である。
当初は択捉島がなかなか登場せず、タイトルは択捉島ではなかったのかと疑問も持ったのだが、択捉島が最終目的地と言えよう。真珠湾攻撃に絡むストーリーなのであるが、わざわざ日系人を登場させるところに無理があったという印象を持ったが、ストーリーとしては必要であったのかも知れない。
寒冷の地の択捉島までの追跡劇はなかなか迫力もあるし、荒涼とした気候がその雰囲気を盛り上げていく。本書もドラマ化されたようだが、上記の佐々木譲の関連の各小説は、戦中秘話として興味深い。