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2件
肉体の悪魔(新潮文庫)
第一次大戦のさなか、戦争のため放縦と無力におちいった少年と人妻との恋愛悲劇を、ダイヤモンドのように硬質で陰翳深い文体によって描く。ほかに、ラディゲ独特のエスプリが遺憾なく発揮された戯曲『ペリカン家の人々』、コント『ドニーズ』を収める。
肉体の悪魔(新潮文庫)
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肉体の悪魔
2019/10/22 05:00
天才的な才能の光る作品
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
三島由紀夫や大岡昇平に影響を与えた天才小説家レイモン・ラディゲが10代の頃に執筆した小説。第一次世界大戦の最中、出征兵士を夫にもつ人妻マルトとの恋愛小説。高校生の頃になんだかわからぬままに惹かれ続けて今でも時々読む。光文社の訳より新潮社のほうが個人的には好み。
肉体の悪魔
2021/02/27 00:06
「僕はやはり子供っぽく振舞ったに違いない」
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:休暇旅行 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ほかに小戯曲と短編が一つずつ含まれているが、メインはやはり表題作だろう。
世に流れる紹介やあらすじを聞くと勘違いしがちな点(というか私が読む前に勘違いしていた点)を2点。
1点目、恋愛の相手が「人妻」だと聞かされるので、主人公の少年と大人の女性の恋愛を描いたものだと勘違いしがち。実際には相手の女性も、一応主人公より年上ではあるものの似たような年齢で、親同士が友人という関係で結婚以前に主人公と出会う。社会経験のなさも同様で、要するに距離感は、学生同士の友人をイメージしたほうが分かりよい。もっとも、作中における相手はあくまで少年による一人称の語りを通して表現されたものに過ぎず、実際には相手が少年の理解を超える成熟した面をもっていた可能性も否定はできないが。
2点目、やたらに早熟・老成という評を聞かされる作家だが、少なくともこれを作中の行動者としての主人公への評価と混同すべきではないだろう。1点目で述べたこととも通ずるが、主人公たちはむしろ基本的には(小説冒頭で自身認めているように)「子供っぽく振舞っ」ている。例外として、たとえば小説を閉じる独白については大変皮肉な感覚が表れているなと思うが。
個人的には、普通に面白い小説だとは思うものの、上記の誤解から期待とはややずれた印象となった。「肉体の悪魔」という題名もあまり適切に思えない(副題「魔に憑かれて」の方ならまだしもかもしれないが、まあどうだろうか)。
なんのかのいって、戦時下の特殊状況において乱脈を強いられた若者の話として読むべきなのかもしれない。私にその素養がなかったことは残念である。