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秘伝の声 完結
著者 池波正太郎 (著)
新宿角筈村に剣術道場を構える老剣客・日影一念は、臨終の床で、なぜか二人の内弟子、白根岩蔵と成子雪丸に、自分の遺体と共に秘伝の書を土中に埋めよと言い残す。だが、剣の極意を極めたい一心の岩蔵は、遺言にそむき、秘伝書を奪って出奔する。村人たちに頼まれて道場を継ぐことになった雪丸は、岩蔵の行方を探りつつ道場を守り立て、角筈村になくてはならない人物となるが……。
秘伝の声(上)
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紙の本秘伝の声 改版 上
2009/12/20 12:50
数々の山場と読み切れない展開がスリルとサスペンスを呼ぶ人間のドラマを描いた剣客小説
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
<あらすじ>
角筈村に道場を構える日陰一念の元に、二人の弟子・白根岩蔵と成子雪丸がいた。
岩蔵は師の剣を極めたい一身で、『秘伝の書を自分の遺体と共に埋めよ』という遺言を破り、秘伝の書を盗み出奔してしまった。
岩蔵の行方は知れず、後に残った雪丸は周囲の勧めもあって、一念の道場を引き継ぐことになった。
雪丸が道場で門人達に稽古をつけつつ、岩蔵の行方を捜していたある日、秘伝の書を返したいとの文が届いた。
<感想>
いわゆる剣客ものの物語なのだが、剣闘シーンなどのアクションが売りではなく、白根岩蔵と成子雪丸を中心とした人間のドラマが濃密に描かれている。
そして多くの縁と好意に抱かれた登場人物達の世界は暖かく、スリルとサスペンスに満ちた展開は読む物を引きつける。
良い意味で読者の期待を裏切る展開にも引きつけられる。
例えば、読み始めてしばらくすると、白根岩蔵は剣の道を極めたいがために、師の遺言を破り、秘伝の書を盗んで出奔してしまう。
当然、その岩蔵には悪人としての印象を抱くのだが、読み進めて行くにしたがってその期待は裏切られ、先の読めない展開にますます物語に引きずり込まれてしまう。
解説によると、この作品は新聞に掲載された小説とのことで、一回一回ヤマをつくったとある。
そして解説に池波氏の言葉が一部掲載されている。
『初めっから全部作っちゃうと、それに沿って書かなくちゃいけなくなるから、読者に先を読まれちゃうのね。ぼくの場合は、明日のこともわからずに書いてんだから、読者にも、先がわかるはずがないんだよ。昔っから全部そうなんですよ』
こういう訳だから、読むごとに先の展開が気になってしようがなくなるし、期待を裏切らない結果がその都度待っているから、何の不安も不満も起こらない作品に仕上がっている。