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20件
満州国演義
著者 船戸与一
霊南坂の名家に生を受けた敷島四兄弟は、異なる道を歩んだ。奉天総領事館に勤務する外交官、太郎。満州で馬賊を率いる、次郎。関東軍の策謀に関わる陸軍少尉、三郎。左翼思想に共鳴する早大生、四郎。昭和三年六月、奉天近郊で張作霖が謀殺された。そして時代の激流は彼ら四人を呑みこんでゆく。「王道楽土」満州国を主舞台に、日本と戦争を描き切る、著者畢生(ひっせい)の大河オデッセイ。(解説・馳星周)
残夢の骸―満州国演義九―(新潮文庫)
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残夢の骸
2021/11/17 21:39
予想を上回る悲劇的結末に意気消沈。
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
予想を上回る悲劇的結末に意気消沈。敷島四兄弟のなかで生き残ったのは最も軟弱に見えた四郎のみ。どんな状況に陥ろうとしぶとく生き残ると思われた間垣徳蔵まで死んでしまうのだから容赦ないですね。日本人だけでなく世界中の人間が理不尽な運命に翻弄された時代。何があっても不思議ではない時代の一個人の運命なんて実に儚いものでした。さて本作の価値は、小説としての面白さもあるが、その歴史的価値の方に私は着目した。敷島四兄弟と間垣徳蔵はその歴史の案内人的存在でしかなく、主役は歴史の壮大な流れである。私しも常に一連の流れの中で、日本は何処で間違った道に入り込んだのかを見つけようとしてたが、混沌とした世界情勢の中での複雑怪奇な流れに困惑するばかりであった。結局、私の視点も1941年~1945年の太平洋戦争だけを切り離して見ようとしてしまうのだが、その象徴的事態は、1930年頃から始まった満州を軸にした実質的戦争状態から、1941年の太平洋戦争に至る長い時間をかけて醸成された結果だったと改めて思い知らされた。そしてその長い年月の中で、軍部や政府の暴走もあるが、それを多くの国民がむしろ支持・支援して戦争拡大の方向を目指したと思えてならない。未だに世界中で戦争の絶えない今こそ多くの人に読んでほしい作品ですね。
南冥の雫
2021/04/28 23:35
完結目前にして、東条英機暗殺計画まで有ったという衝撃の事実に愕然。
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
完結目前にして、東条英機暗殺計画まで有ったという衝撃の事実に愕然。前7巻目であとは戦史は大体は判ってるなどと楽観論を記したことを後悔。戦史に関しても太平洋のガダルカナル戦など一つで完結するような判りやすいものに関してはそれなりに知ってはいたが、余りにも規模の大きすぎるインパール作戦などに関しては知識が断片かつ希薄過ぎたことに反省。物語は既に冷静に物事を分析する勢力と、東条英機に代表される精神論者勢力との不協和音に移行。興味の対象は終戦に向けて私の知らないどんな事実があったのかに移ってしまった。集団狂乱の時期と私的には思っていたが、それはむしろ一般大衆であって、上層部内には冷めた人間が多数存在したらしいことに少し安堵。著者がガンで余命宣告を受けてもなお書き続け、遂に完結までに至った本作。著者の思いが凝縮されるであろう完結巻が楽しみ。
アッ、敷島4兄弟に関しては、何と、次郎がインパールでアメーバ赤痢に罹患して死亡。柳条のような生き様が魅力的だっただけに実に残念。
雷の波濤
2021/02/27 12:42
満州国からスタートした本作も遂に太平洋戦争という巨大な戦争に突入です。
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
満州国からスタートした本作も遂に太平洋戦争という巨大な戦争に突入です。その分、満州国という視点が希薄になったのは残念だが、舞台は東アジアへと大きく広がり、戦記的色彩が強くなった分流れは追いやすくなった。太平洋戦争の経過は結構頭に入っていることも有り、個人的には読み易くなったと感じる。あとは歴史の流れに沿って敗戦へと向かうだけなのだが、逆に敷島4兄弟がどう関わっていくのか、間垣徳蔵の意図はと最後の謎に興味が移った感じ。
<蛇足> 地図が中国全土から東アジア(インド東半分を含む)に拡大した。