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中東政治入門
著者 末近浩太
シリア内戦、「イスラーム国」、「アラブの春」、石油依存経済、パレスチナ問題……中東では今も多くの問題が起こっている。しかし報道や時事解説を通してこうした事実を「知る」ことはできても、「なぜ」起こったのか、その原因を「理解する」ことはなかなか難しい。本書は、中東政治学のエッセンスを紹介しながら、国家、独裁、紛争、石油、宗教という五つのテーマをめぐり、その「なぜ」を読み解いていく。中東という大きな課題に向きあっていくために必読の一冊。
中東政治入門
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中東政治入門
2024/05/16 22:25
固有性と 共通性の バランスを
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投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
まず本書で取り扱う「中東」は、p.10-11にあるように、東はイラン、西はアフリカ大陸のモロッコまでである。日本や西欧諸国(筆者は進んでいるとは思わないが、本書p.308「『進んでいる我ら』」に該当)の視点だと、中東諸国は「『遅れている彼ら』」(p.308)のように見えてしまう。それでは正確に中東をとらえることはできない。そこで「固有性」(p.310)を重視する「地域研究」(同。別の表現では「『中東政治』を『学』ぶ。p.312)と、「共通性」(p.310)を重視する「社会科学」(同。別の表現では「『中東』を『政治学』する」。p.312)のバランスを取って中東を見るべきである。そうしないと中東諸国を「『遅れている彼ら』」という差別的なニュアンスでとらえてしまう危険性がある。このような問題意識の下、中東の国家、独裁、紛争、石油、宗教について分析する。
2.評価
1.で書いたことは、本文の他の部分でも同様のニュアンスで言及されており、読者は1.で書いたような視点で中東をとらえることができる、そんな本であった。中東で起こったことは状況が似れば日本や西欧諸国でも起こること、中東とひとくくりにされる国にも違いがあること(一例:p.243.表5-1)がわかり、有益であった。もちろん、中東のニュースを知る上での知識や、バハレーンやアル=カーイダのような、おそらく現地の読みに近い表記があり、それも興味深い。
以上の通りであるから、5点。