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7件
ラテン語の世界 - ローマが残した無限の遺産
著者 小林標 (著)
かつてローマ文明を支えたラテン語の生命力は、二千年経った現在でも衰えていない。ラテン語は、生物学などの学問やキリスト教に使われるとともに、イタリア語やフランス語、スペイン語などをも生み出した。さらに、その言語構造が持つ普遍性ゆえに、英語や日本語にも影響を与えている。身近な言葉や箴言、いまも残る碑文などの豊富な例をひきながら、ラテン語の特徴やその変遷、ラテン文学のエッセンスを楽しく語る。
ラテン語の世界 - ローマが残した無限の遺産
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ラテン語の世界 ローマが残した無限の遺産
2008/04/27 17:01
知的興奮を味わうことが出来た入門書
12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白かった。2年も前に出たときにどうして手にしておかなかったのかと悔やむほど面白く感じる本でした。おそらく今まで手が出なかったのは、ラテン語=死語という単純な図式にとらわれていて、そうした言語に手を出すことに<無駄>の二文字を感じていたからでしょう。
もちろん私はラテン語の読み書きが出きるようになりたいと考えているわけではありません。今後カエサルやキケロの書を手にすることがあっても、それはおそらく日本語に翻訳されたものを手にする確率が高いと思います。それでも本書を手にしたのは、英語やスペイン語を学ぶ者として、基層となる言語ラテン語の世界に触れることは決して<無駄>ではないということをようやく感じられるようになってきたからです。
本書は私のようなラテン語知らずにとってうってつけの入門書です。ラテン語の文法項目そのものにも多少なりとは頁が割かれていますが、それは決してラテン語学習者に向けた書き方ではないので、必要以上に小難しくはありません。
むしろとても興味をひかれたのは、ラテン語とはどういう歴史をもった言語なのか、文化的のみならず政治・経済・宗教史的視点から丹念にたどっているところです。私たちが日常的に触れているアルファベットもローマ字というくらいですから、ラテン語抜きにはその成立過程は語れません。そしてフェニキア→ギリシア→エトルリア→ローマという道筋をたどることでアルファベットが変遷してきたという実に壮大な歴史物語は大変楽しく読むことが出来ました。
ラテン語の歴史をたどるうちに、古代ローマからゲルマン民族の大移動、そしてフランク王国の成立まで、ヨーロッパ史を概観することができたことも、私にとっては大いに有益なことでした。
ラテン語の世界 ローマが残した無限の遺産
2010/10/03 09:58
ラテン語を学ぶための本ではない。ラテン語を知るための本である。
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ラテン語を学ぼうと思ってこの本を読んだわけではない。この本自体がラテン語の学習書ではない。ラテン語を読み書きしたり、ラテン語で詩を作ったりした人がいても、現代ではラテン語を母語として話す人はいない死語である。それにもかかわらず、未だに自然科学の分野を含めあらゆる分野でラテン語は陰に陽に使われている。それはいかなる理由によるものか、それを知りたいと思ったのである。そしてそれがラテン語の持つ合理性によるものであることがこの本を読んで解った。ローマが滅んだ後の中世ヨーロッパでキリスト教会での共通語として使用されていたからという理由ではないのである。ラテン語自体の持つ合理的論理的な言語構造によるものなのである。言語構成の規則にしたがっていれば中世に作られた新しい単語でも、本来のローマ人がその意味とその単語が派生してきた関連が理解できる、そのように厳密な構造になっているのである。ラテン語の初歩ぐらいは知っておくといろいろな学問分野での理解力が増すように思われる。
この本の内容は、ラテン語の現代への影響、言語系統のなかのラテン語の位置、初歩的なラテン語文法概要、ラテン語の代表的文学、ラテン語の語彙、ラテン語の変化や中世のラテン語、日本人とラテン語の接点、などである。
ラテン語の世界 ローマが残した無限の遺産
2011/01/12 23:04
古代ローマから現代まで。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
古代ローマ人の言語なので死語となった今でも「生き続けている」ある言語の物語である。
あまり日本人にはなじみがない古代ローマの歴史書や文学書から始まって、カトリック教会で使用される言語となり、現代の英語の表現に使われるラテン語系の単語に至る過程が、実に読みやすく書かれている。
「カルミナ・ブラーナ」について描かれた箇所でカール・オルフの同題の曲についても描かれているが、第三帝国時代のドイツではラテン語のテキストを使われている事は好意的に見られていなかった、と「第三帝国と音楽家たち」に出て来る。著者が個人的に「カルミナ・ブラーナ」が好きなのかもしれない。
以前、「カルミナ・ブラーナ」の全訳が筑摩書房から刊行されていたが、オルフが使ったテキストだけでいいから、原文と対訳にした本があったらいい、と思う。
日本人がラテン語に接したのは結構古くて、キリシタンの時代にセミナリオで学ばれた言語だ。ルイス・デ・グラナダの著作は俗語であるスペイン語やポルトガル語で書かれていたから、誰かがそこから訳したのだろうが、「キリストにならいて」はラテン語で読まれたのだろうか。「霊的な読書」に使われるテキストで古代ローマ人も出て来るが、当時の日本人キリシタンにとっては、どんな存在だったのだろう。