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9件
科挙 中国の試験地獄
著者 著:宮崎市定
かつて中国では、官吏登用のことを選挙といい、その試験科目による選挙を「科挙」と呼んだ。官吏登用を夢みて、全国各地から秀才たちが続々と大試験場に集まってきた。浪人を続けている老人も少なくない。なかには、七十余万字にもおよぶ四書五経の注釈を筆写したカンニング襦袢をひそかに着こんだ者もいる。完備しきった制度の裏の悲しみと喜びを描きながら、試験地獄を生み出す社会の本質を、科挙制度研究の権威が解き明かす。
科挙 中国の試験地獄
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科挙 中国の試験地獄
2010/08/14 19:57
カンニング下着
23人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の見どころは口絵写真として挿入された「科挙受験者が作成したカンニング下着」の実物写真だろう。科挙は受験生が特別に建設されたタコ部屋みたいな試験会場に一週間こもって実施される。監視が緩いのをいいことに、下着にびっしりと四書五経の要点を抜き書きしてカンニングに使おうとした受験生がいたことを示す動かぬ証拠というやつである。これは迫力がある。鬼気迫るとはまさにこのことだ。ところが不思議なことが起こった。中央公論社がある版から、すっぽりこのカンニング下着の写真を落としてしまったのだ。もしかして自分の気に入らない過去はすべて消し去ろうとする傲慢な某国からの不当な圧力があって、中央公論社がそれに屈したのかもしれない。もしそうなら、そんなことはあってはならない。幸いにして私の手元にある昭和57年第35版にはこの写真はしっかりと写っている。私はこの写真を子どもたちに見せては「な、シナ人は昔からこうやって不正行為を働く汚い奴らだったんだよ」と教えている。
科挙 中国の試験地獄
2021/11/15 01:08
1300年間の受験史を振り返る
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず冒頭に掲げられた、試験不正用の
肌着の写真に圧倒されます。その表面から、
科挙受験生の執念が気体と化して
立ち昇ってくるような錯覚におそわれました。
試験の結果という、一応公平な基準に基づいて
官吏を登用するというのは、世界に先駆けた
画期的な試みだったそうです。よもや二十世紀
初頭まで続こうとは、制度を作った人達も
想像だにしなかったでしょうが。
2020/11/16 11:46
半世紀前も今もほとんど変わらない日本社会
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
浅田次郎の「蒼穹の昴」前半部分のネタ本ということで読んでみた。
半世紀以上前に出版された本であるにもかかわらず、今読んでも全く古さを感じることがない。
著者が最初に述べているように「事実を客観的に世間に紹介する」という姿勢を保っているためだと思われる。更に言い回しも中国史研究家らしくない平易な言葉使いで今読んでも違和感がない。
この点で著者に敬意を表したい。
客観的視点を外した後序の部分が特に面白かった。半世紀前も今もほとんど変わらない日本社会 そして 似た儒教社会をより一層濃く持つ隣国韓国の
ことを考えた。