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批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義
著者 著:廣野由美子
批評理論についての書物は数多くあるが、読み方の実例をとおして、小説とは何かという問題に迫ったものは少ない。本書ではまず、「小説技法篇」で、小説はいかなるテクニックを使って書かれるのかを明示する。続いて「批評理論篇」では、有力な作品分析の方法論を平易に解説した。技法と理論の双方に通じることによって、作品理解はさらに深まるだろう。多様な問題を含んだ小説『フランケンシュタイン』に議論を絞った。
批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義
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批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義
2008/10/19 05:45
この内容でこの値段なら,本棚に置いておくだけでもお買い得であります
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
メアリー・シェリーの「フランケンシュタイン〜あるいは現代のプロメテウス」をちゃんと読んだのは20代後半のことである。もちろんその主人公の一人である「フランケンシュタインの怪物」のことは知っていて(最初の「フランケンシュタイン」体験は藤子不二雄Aの「怪物くん」だ。あれでは怪物そのものが「フランケン」と呼ばれていたが),この有名な話の原典を読んでないのは恥ずかしいのではないか,と思ったのだ。
考えてみればオレ,齢47を迎えた現在になっても例えば「カラマーゾフの兄弟」であるとか「嵐が丘」「失われた時を求めて」みたいな,なんつか「文学研究における基本的テキスト」みたいに扱われている作品の多くを読んでいないわけで(白状すると読もうと思ったこともない。あ,「フィネガンズ・ウェイク」はこないだ買った),そんな男が「フランケンシュタイン」を読んでいなくて恥ずかしいもないようなもんなんだが,まぁそんときはそう思ったのですよ。
で,まぁ面白くなくはなかったんだが(19世紀初めの小説だってこともあってちょっと白人臭さがハナについたけどな),今日までその読書体験が人生において何かの役に立つとかいうことはなかった,と。そこに出現したのがこの本である。「批評理論入門」,副題に「『フランケンシュタイン』解剖講義」とあるように,これは世に数多ある文学批評理論について,それら全てをメアリー・シェリーの「フランケンシュタイン〜あるいは現代のプロメテウス」だけをサカナにして解説しようというマコトにありがたい本なのである。
え,何がありがたいか分からんって? ならば解説しよう。文学批評理論に関する本はたくさんあるが,多くはそのうちの一理論の解説(つうか,その理論こそ真に文学を解明する鍵であり他の理論はなんの役にも立たないクソである,という主張)であり,それらを網羅的に分かりやすく紹介してる本というのはあんまりないのだ。
しかもそんなかで面白く読める本というと,オレの管見の範囲内では筒井康隆「文学部唯野教授」だけなのである。でもこの「文学部唯野教授」というのはそれ自体が小説なので,理論のあらましは紹介してもそれを具体的な作品に適用して「例えばこうやるのがなんとか批評だよ」とまではやってない。だからオレのように少々知恵の足らない読者は小説としては面白く読めても,そこで解説された批評理論については「わかったような気がする」だけなんだよね(筒井先生すいません)。
しかも前述のごとく,この本は批評理論適用対象をただ一編「フランケンシュタイン」だけに限っている。つまりこの本に書かれていることを理解するのに他のたくさんの(そしてまたたいがいはえらい大冊なんだ)テキストを読む必要がないのである。類書を読んだことがある人なら分ってもらえると思うが,これは涙が出るほどありがたい。だって例えば○○という小説をサカナに脱構築批評を説明され,次の章で★★という小説を題材に精神分析批評を解説されたって,ほんぢゃ★★を脱構築批評したときどうなるかって分んないんだもん(オレだけ?)。
とにかくそういうわけなので,文学や文学研究を志すヒト,昔それらを志したけど挫折したヒト,既に「フランケンシュタイン」を読んだヒト,上のいずれにも該当しないけどたまには難しげな本を読んで賢くなったような気分に浸りたいヒトにはこの本をオススメしたい。いや実際,この内容でこの値段なら,本棚に置いておくだけでもお買い得であります。
批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義
2020/05/30 02:15
大学の教材
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Chii - この投稿者のレビュー一覧を見る
学生の頃、教材としてよみました。
本書を読んでからのレポートの書き方ががらんとかわりました。いわゆる、本を読むときの視点が増えたと言っていいと思います。今まで考えたこともないような視点から読めるので、一層深く読めるようになりましたし、なにより
読書が好きになりました。
批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義
2018/05/19 20:34
ワクワクしながら読んだ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドングリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
こういった類の本を読んだのは初めてでしたが、とても楽しかったです。小説には様々な見方があるということを実例を通してよくわかりました。ぜひ続編も出して欲しいです。